キミたちはアイドルだ!
もしかして……この娘たち、あんまり怖くない?
正直、首筋に残る爪の痛みにびびっていたが、そんな思いは払拭されてしまったかもしれない。
食堂で満足そうに食事をする獣娘たちの姿は微笑ましいくらいだ。
クレジットの残りが心配ではあるが、この姿を見て損失を取り戻せた気もする。
それにもしかしたら……一郎の頭の中にはある思いが込み上げていた。
「キミたち……歌って踊れるアイドルになろう!」
この子たちは……歴史を変えることになるかもしれない!
異様とも言える獣娘たちを前にどこをどうしたらそうなるのか。
やはり、この男の頭のネジは一本どころか何本も外れているのかもしれない。
「なんだそれは?」
豹娘のリオが疑問を口にする。
一郎の一言に口を動かしながら注目する獣娘たち。
なかには食事に集中して目もくれない者もいたが。
「キミたち、どういう事情か知らないけれど、ご飯に困ってるんだろ!?」
「んあ? ああ、いきなり見知らないとこで、どうしたもんかと思ってたが、そのうち鹿でも猪でも獲れる狩場でも見つけるさ」
「ここ日本の都会だから! そんな場所ないよ!?」
「狩場がない? じゃあ、どうすんだ?」
一郎の言葉を真に受けたのか、思いのほか素直に聞き返すリオ。
「歌さ! 歌でお金を稼いでおいしいご飯をいっぱい買おう!」
「はあ〜!? 俺たちゃ吟遊詩人じゃねぇぞ!?」
今度は長い黒耳のグラマラスな獣娘だ。
見るからに黒うさぎっぽいが、一人称といい乱暴な物言いがイメージとかけ離れている。
「ミャウ! ミャウの歌は切ない青春の想いが溢れるくらい、とても素晴らしかった!
通りで踊っていたキミたち、とても蠱惑的で情熱的だった!
太鼓を叩いていたキミのアクションも素敵だ!
鼻歌のキミも聞き惚れるくらいだよ!
ヨガをしていたキミもしなやかな肢体から目を離せなかった!
戦ってるキミたちの姿、心が奪われるくらい美しかった!
寝ていたキミも……とてもとてもかわいい!
キミたちにはあふれる魅力がある!
きっと世界を虜にするアイドルになれる!
間違いなく逸材なんだ!」
一郎が紅潮した様子で獣娘を見渡して長々と力説する。