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餌付け

猫、猫、猫、そうだ!

一郎は右手に持った唐揚げ串を猫じゃらしのように少女の目の前で揺らす。

「!」

目の前で揺れる唐揚げ串に本能的にじゃれつく少女。


「くんくん。なんにゃ? いい匂い……」

絶世の美少女と言ってもいいほどの少女がよだれをじゅるりと垂らしている。

「食い物にゃ!」

唐揚げ串にパクりと食いつく少女。

なんとも警戒心のない行動だ。


「俺の唐揚げ!?」

串は一郎の手に持たれたままなのにもぐもぐと口を動かしている。


一郎の目の前で少女の頭が揺れている。


「これって……猫耳?」

ぴょこぴょこと大きな獣の耳が忙しく動いていた。

「コスプレ?」

それにしてはよくできてる……髪の生え際と耳の体毛の境目がなく作り物の感じがない。

思わず、そっと耳毛に指をちょんちょんと触れてみる。


「にゃははははは! くすぐったい! なにするにゃ!?」

目にも止まらぬ速さで耳がパタパタと動く。

「本物!?」

「猫の獣人なんだから当たり前にゃ!」

怒った表情の少女のうしろで長いしっぽがぶんぶんと振られていた。

まるで機嫌が悪いときの猫のように。


「うそ……ネットでみた……あれ」

いまさら、自分がどこに足を踏み入れていたのかを自覚する。

「く、食わないで! これ、これもあげるから!」

もう一つ買っておいた焼きタレを差し出す。


「もらえるのに食べちゃダメ?」

指をくわえて焼き鳥を凝視したあと上目遣いで一郎を見る少女。

卒倒もののかわいさだ。

「え!? 俺のこと……食べたりしない?」

「しないにゃ! ゲテモノ食べないし!」


「そ、そっか……」

心底、胸を撫で下ろす思いだった。

ネットでは、建造物の住人は人喰いの化け物、なんて書き込みがあったからだ。

「それ、食べてもいいかにゃ?」

「あ、ああ、もちろん!」

「ありがとう!」

パクパクとあっという間に食べ尽くしてしまった。

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