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悪役令嬢と思って転生したら魔獣じゃない!

悪役令嬢と思って転生したら魔獣じゃない!

作者: 比呂真

おもしろかったら、下の星マークも忘れずにつけてね

誤字脱字を教えてくださった皆さま、ありがとうございます


※ 12/4 14:15頃 一部、話の流れに唐突感があったので内容を追加しました

 女子高生 山由 花子(やまよし はなこ)

 死神に名前を間違えられ死亡する。何よこれ!?


 いつもの学校の帰り道、神社の前を通りかかった時のことだ。

 背後に何か予感めいたものを感じた。

 ん?

 振り向いた時にはトラックのフロントガラスが視界いっぱいに広がっていた。

 あっ!

 ガンッという今まで受けたことが無い強い衝撃を頭に受けた。痛いとかは感じない。

 ただ、ただ、大きな音と視界が大きく揺れる、その感覚。それだけだった。


 あぁ、そうだ。フロントガラスの向こうは無人だったな。


 ――――


 はっ!


 ここは? 見渡す限りの青い空。

 いやー遠くまで見えるな。あれは、富士山かな、一度は登ってみたかったんだよなぁ。

 うん、きっと明日もいい天気だよ。


 ……はぁ、ごまかせないよ。何で街中から富士山が見えるのさ。何で地面から10メートルほど浮いてるのさ。

 あぁあ、足元みたら見えちゃったよ。横倒しになったトラック。


「嫌だな、見に行きたくないしな。これから、どうしよう。何か天使のような人が迎えに来てくれるのかな?」


「はい。天使でなく死神のような者ですが」


「そうなのですねー、じゃぁ待って……え! えぇっと、どちら様で?」


 急に後ろから声が聞こえて、びっくりして振り向くと、黒服の普通の青年が立っていましたよ。

 ん、ん? さっき変なことを言ったような?


「初めまして、わたくし死神をしておりまして。名前はありませんので悪しからず」


「は、はぁー」


「では、早速ですが、身元を確認させていただきますね。まずお名前ですが、山田花子さんで間違いないですか?」


「いえ、違いますが」


「…………」


「へ? いやいや。変な勧誘とか売りつけたりしませよ? あなたさまは既に死んでいらっしゃいます。今更名前を偽っても仕方がないのです。だから、本名は山田花子さんですよね?」


「だから、違いますって。私は山由やまよし 花子はなこです」


「……はい? で、では生年月日ですが……90歳? ですか??」


「ちょっと! 喧嘩売っているの!? 何で私が90歳よ。高校一年生で15歳よ! って言うか、あんた、何を見ながら言っているのよ。ちょっと見せなさい!!」


「あ、あ、ちょ、ちょっと、取らないでくださいよ。乱暴だなー」


「…………あ、あんた。まさか、これ見ながら言っているの?」


「はい、そうですよ。亡くなる予定の方が記載されている指示書です。わたくしたち死神は、この指示書に従って、毎日、亡くなる方を決めているのです」


 胸を張って答える黒服の男。

 ど、どうしよう。たぶんこの人、馬鹿だわ。

 でも話出来る人は、この人しか居ないし、私が頑張るしか無い!


「えぇっと死神さん、ここに書いているのは例文です。良いですか? 名前欄の『山田 花子』というのはあくまでも、このように名前を書きましょうねっていう、あくまでも例です。生年月日もです。住所は、えっと、たぶん、そこの神社の住所ですね。要するに、これは書き方の例です」


「霊?」


「ちっがう! 『たとえ』の方の例だ! それで、あなたは、これが正しい指示書と思って名前も生年月日も違う私を死なせてしまったの?」


「え? えぇぇ!! 違うんですか! 山田さん!!」


「だから、山田じゃあ無いって! 山に由と書いて、やまよしだって。漢字は似ているけど、読み方は全然違うでしょうが! そんなの事よりも、私は生き返れるのよね!」


「えぇぇ!! いっやー。あれーー、おっかしいな??」


 あぁぁ。何だか回答を聞く前に分かってしまった気がしてきたよ。だって横倒しになったトラックの下にいるのよ私。これで蘇ったらゾンビもびっくりだよね。

 あぁーあ。もう警察まで来ちゃってるよ。今から甦るのって無理がありそうなんだけど。


「コラ!! 貴様は何をチンタラやっているんだ! とっとと魂を回収してこんかい! 悪霊になったら、どうすんじゃ!」


 うぉっと。ヒョウ柄のワンピを着た。ちょっと怖い系のお姉さまがいらっしゃいましたが……


「あ、あ、そ、そ……」


 あぁぁ、黒服の死神さん、こりゃ駄目だわ、完全にテンパっているよ。

 しかし、私もこのままでは困る。ちゃんと生き返れないか確認しないと。


「あ、あのすみません。私、山由やまよし 花子はなこといいます。それで、おそらくですが、この黒服の方、その例文の指示書を見て、似たような漢字の私を間違えて死なせたようなのですが、私って甦れますか?」


「あ? 死神! どれ、見せてみろ! あぁん!! 貴様は馬鹿か! これは書式の記載例だろうが! 一枚目は例で二枚目以降が本当の指示書だって教えただろうが!」


 怒鳴り散らしながらも黒服の男を蹴付けていらっしゃいますが、えっと、それより私は?


「はぁはぁはぁ。ったく! で、すまんな。やまよしさんだっけ……えぇっとだな」


 ペラペラめくる紙の音、しかし、そんなに枚数は無いですよ。いや、もう一度初めから見直していますが、見直す程の枚数は無いですって。

 はい。わかりましたよ。無いんですよね。私の名前。


「と、とにかく此処では駄目だ。一旦、霊界に一緒に行ってもらって、そこで話そう。な」


「え? うん、まぁ良いけど」


 なんで此処では駄目なのか気にはなったが、焦っているようだから、とりあえず従うことにした。普段なら危ないから、簡単には付いていかないけどさ。この状態だから素直に従うしかないよね。


 私は、お姉さんに手をつながれて、空高く昇って行った。

 お、目の前に雲がある。大きな雲だなって思っていると、その雲目掛けて飛んでいるようだ。ちょっと怖いけど大丈夫なんだよね?


 お姉さんに連れられて雲の中に入ると、スポって感じで雲を突き抜け、建物が立ち並ぶ空中都市のような場所に出た。龍の巣だったのかな? なんか、アニメで見たことがあるような気もするが、霊界って言っていたから違うんだね。手の長いロボットも歩いて居ないよね。


 お姉さんに連れていかれるがまま、建物の中に入ると、何やらごちゃごちゃした研究室のような部屋に入った。何かを研究しているのか、実験をしているのか分からないが、目の前には機材が山のように積まれていた。その中でも異彩を放っているのがピンクの液体が入った大きなガラス管だ。まさか、人が入っていないよね??


 私がキョロキョロとあたりを見渡していると、お姉さんと黒服が、見事にシンクロしてジャンピング土下座をしてみせた。


「すみませんでした。完全にこちらのミスです。謝って済む問題では無いが、最早、謝ることぐらいしかできないんだ」


「やっぱり、生き返らせることは出来ないんですね」


「あぁ、もう肉体は使えない状態になっていて、魂を返しても駄目だなんだ」


「そうかなって思いましたけど、で、これから私はどうなるんですか?」


「い、意外とあっさりしているな? いや、泣いて喚かれるより助かるが」


「だって、もう、どうしようもないんでしょう。私もなんとなく分かっていましたよ」


「そうだな、本当にすまない。今回の件はちゃんと上に報告して今後このようなことが無いように改善するようにする。そして、こいつと私はちゃんと処罰を受ける」


「まぁ、私にとっては関係が無いですけどね。その黒服の死神さんがクビになっても、私にとって何かあるわけでも無いですから」


「そ、そうだよな。うん。そうだ。私とこいつのエネルギーを全力で、あなたにつぎ込んで、あなたに新しい体と人生を用意しよう!」


 エ、エネルギーって何? まさか生命力みたいな物じゃないよね?? いや、この人たち死神で生きていないから生命力は無いか! まぁ細かいことは良いや。


「新しい体と人生? うーーん。私このまま他の亡くなった方と同じでも良いけど? また、あの受験戦争をするのかって思うとゲンナリするんだよ」


「いや、非常に言いにくいことなんだが、あなたの死亡はイレギュラーなんだ。だから輪廻転生の枠が空いてなくってな。だから他の死者と同じ扱いは出来ないんだ。しかし、あなたの居た世界に残っていると悪霊化してしまうし、この霊界でも進行が遅いだけで同じだ。それはあまりにも忍びない。そこで転生と言う形で生まれ変わってもらいたいのだ」


 あーなるほど。だから、あの場所ではなく、霊界に連れてこられたのか。


「へぇー転生ね。それはアニメで流行っているよ。私も見たことがある! でも、異世界転生ものだったけどね」


「ああ、まさにそれだ。元居た世界とは異なる世界に生まれ変わってもらう。元居た世界だと都合が悪くってな。今更戻ると生者の数が合わなくなるんだ。だから数の管理があいまいな異世界ってことになる」


「ふんふん、なるほど、そんな理由があるんだね。異世界か……ちょっと楽しそうね。ねえ、そしたら特典も付けてよ!」


「得点? 何をつけるんだ?」


「そうね。悪役令嬢が流行っているから、私が見たことがある悪役令嬢が良いね。それなら話の展開も知っているから、フラグ回避も楽勝よ。で、その主人公は意外なすっごい力を持っていて、なんでも出来ちゃうって奴が良いね!」


「ん、んん??? そ、その悪役霊獣ってのはなんだ?」


「うーん。私も良く分かっていないんだけど、なんせ、ぶっ飛んでいる感じかな」


「うーーん、跳んでいるのかぁ、そうかぁ。何とか考えよう」


「そのぐらいで、大丈夫か?」


「あ、そうだ。転生者の定番で収納って魔法を付けてね。私、結構、物を溜めこんじゃうタイプだから収納があると良いな。あれよマジックボックスって奴でなんでも入れておけるの。あ、後、転生するんだから、今度は簡単に死なないようにしておいてよ!」


「うーーん。何とか作ってみるよ。じゃあ、そろそろ転生しないと本当に悪霊になってしまう。それでは、こっちに来てくれ」


 良し! とりあえず詰め込みたいものは、全部詰め込んだはずだ。

 先ほどから自己主張の強いピンクのガラス管の横に立たされた。まぁ立たされたと言っても地面に足が付いていないから、ガラス管の横に浮かんでいるだけだね。頭の上を見るとシャワーヘッドのようなものがある。ちょっとショボい感じがするけど大丈夫だよね?


 はぁ、私は生まれた時から独りぼっちだった。物心ついた時には、既に両親は居なかった。

 私の両親は自動車事故で亡くなったそうだ。私は当時、母のお腹の中にいて事故発生後、緊急の帝王切開により娩出されて助かったが、母と父は、そのまま亡くなってしまった。

 その後、身寄りの居ない私はずっと養護施設で暮らしてきた。

 結局、最後も道端で一人で亡くなってしまった。今度は違うと良いな。


 先ほど話していたお姉さんが何かタッチパネルのような物を操作している。


 なんだか、体が暖かくなってきた。寒い冬に暖かい布団で寝るときのように、全身をふわっと包み込んで行く。


「あ、あと、可愛くしてね!」



 ――――



「おい、死神。彼女が言っていたこと、お前はちゃんと理解できたか? 正直に言うと私は一部分かっていないぞ」


「わたくしも一発で理解できなさそうだったので、ちゃんとメモっていましたよ! ほら、これですよ」


「うん。良くやった。しかしよく分からん要望だったな。どれ、メモを見せてみろ」


 ・得点を付けてほしい。

 ・見たことがある悪役霊獣が良い

 ・すごい力を持っていて、なんでもできる感じ

 ・跳ぶことができる

 ・収納という魔法が使えてなんでも入れることが出来る

 ・簡単には死なない

 ・かわいい


 うむ。確かに彼女が言っていた内容だが色々と分からん。


「なあ、得点とは何の点だ?」


「うーん、彼女はアニメと言っていたので、たぶん能力値ってことですかね。それを多めに付けて欲しいのでは? おそらく『すごい力』というのも関連があるのでしょうね」


 ふむふむ。


「悪役霊獣は、私も想像がつくが変わったものが人たちに流行っているんだな。要するに魔獣って事だよな」


「そうですね。人間が悪役って言うぐらいですから、反対に位置する魔の物ってことですね。それで、彼女が見たことがあるってことは、こっちの世界に似たような姿の生き物が居て、跳べるとなると」


 そうだな、思い当たるモノは複数居るが、そのうちどれを選べば良いんだ?


「あ、そういえば最後に可愛くしてくれって言ってましたね。魔獣で可愛くか、本当に変わってますね」


「そうだなー、あのぐらいの年の女の子が可愛いと思える姿の魔獣で、こっちの世界でも存在している生物に似ていて、跳べると言えば……分かったぞ!!」


「あとは収納という魔法は作れば良いから可能だし、簡単には死なないって部分も不老不死じゃないなら何とかなりますね」


「ああ、そうだな。誤って命を奪ってしまった以上、何としても叶えなければならない」


 私たちは全身全霊を使って、彼女の新たな体を作り上げ、そして魂と融合させて異世界へと転生させた。

 ほんの気持ち程度のおまけ機能も付けてな。


 エネルギを使い切った死神の奴は、ほとんど消えかかり、私も形は残ったが天使としての力は無くしてしまった。

 それでも全力で精一杯の償いは出来たと思っている。


 さぁて、二人で神に怒られに行くか。



 ――――



 はっ!

 私は、何をしていたのでしょうか?

 満天の星空が見えます。何故、こんなところで寝ていたのでしょうか?

 あぁ、草木と土の香りがします。


 ふぅぅん。大きく背伸びをしてみま……見ました? なんですか、これ?

 あ、あれ? 私の手が毛むくじゃらに。そして何故ピンク??


 い、いや、周りが暗いから見間違えたのでしょうか? あぁ、そんなわけ無いですね! 暗いはずだけど周りの様子がしっかりと見ていますよ! 月明り? 空を見渡すが月は出ていません。星明りだけでは、見えないと思いますが……い、いや、それどころでは無かったです。この手は何でしょう? あ、足もです! っと思ったら体も??

 これは何かの動物のようですが!?


 何がどうなって、こうなったのでしょう?? あぁぁ、そうだ!! 思い出しましたよ! 私は山由花子でした。似たような漢字の山田花子に間違えられて、死なされてしまったのでした。


 それで、私は転生することになりましたが、向こうのミスだからと色々と特典を付けてもらったはずですが?? 何がどうなって、こうなったのでしょう??


 えぇっと、私の要望を思い出してみます。


 ・何か特典を付けてほしい

 ・アニメで見たことがある悪役令嬢が良い

 ・すごい力を持っていて、なんでもできる感じ

 ・収納という魔法が使えてなんでも入れることが出来る

 ・転生して早々死なない

 ・可愛くしてほしい


 こんな感じの事を言ったつもりでしたが、なぜ体がモフモフなのでしょう? そ、そうだ収納は? そこに何か入ってないでしょうか? あ、収納って思うだけで中に入っている物が、頭の中に映像として分かるのですね? え、映像??

 いや、それはともかく……

 あ、これはメモ用紙ですか!? どれどれ……あぁ!! 何ですかこれ!


 頭の中に「チー―ン」という音が鳴り響いた気がしました。


 あ、あの人たちは! 黒服は勘違い馬鹿だと思いましたが、あのお姉さんも同類だったようです!


 と、とにかく、嘆いていても仕方がありません。このメモを基に私が何者で何が出来るのか調べないといけません。たぶんこの世界は危険がいっぱいです!!


 えっと、まずは、最初の『得点』ってのは何でしょうか? 特典を得点って聞き間違えたのは百歩譲って良いとしても、得点で何を連想して、何を付けたのでしょう?? 得点、点数、数値、値。値ね……まさか、「ステータスオープン」なーんてね。


 うぁ! 何か、何か出ましたよ。アニメですか?? ここはアニメの世界なのでしょうか?? あ、まさか、彼らと話したときに異世界転生はアニメで流行っているって言った気がします。それで、それっぽい機能をつけたとか? でも、まぁこれは、これで助かるかもしれませんが、よし、数値を見て行きましょう。

 えっと、生命力ね。うん。9がいっぱい並んでいますね。

 次、力ね。うん。9がいっぱいですね。

 ……全部のステータスが桁数いっぱいまで全て9で埋め尽くされていますが??

 あぁ、『すごい力を持っていて』ってこれですか??


 もし、この世界にドラゴンが居たとしても、私は勝てそうな気がしてきましたよ。あの人たちは、極端なのでしょうか? 「限度」とか「ほどほど」って単語を知らないのですね。


 つ、次に行きましょう。『見たことがある悪役霊獣』ってこれが悪役令嬢のことだとは想像できますが、問題は、悪い霊獣って何のことでしょう? 悪霊獣、悪獣! って、魔獣ですか、これ! 魔獣だとすると私は何の魔獣?


 まず、四つ足歩行ですね。一応二本足で立ち上がれますが、不安定だから四つ足で活動するのが基本のようですよ。暗がりでも見える目と、良く聞こえる耳……ん? 耳が少し長いようです。はぁーもうなんとなく分かったような気がしましたよ。

 それに、あの人たちのメモに、『跳ぶことができる』って書いてありましたね。


 はい。私、ウサギですね。


 ウサギ、もちろん前世で見たことありますよ。見たことがある魔獣でウサギになったのですか? いや、いや! ちょっと待ってください! ウサギって私の印象では弱い生き物のような気がしますよ。この世界が危険なら、すぐに捕まって食べられてしまうのでは?


 あれ、でも変です。さっきのメモ……『簡単には死なない』って書いていましたよ。さっきのステータスの数値で簡単に死ななくなっているのか、それとも、この世界のウサギは強いのでしょうか??


 思わず、頭を抱えると、さらに気が付いたことが……頭に小さな角がありました。


 もう、角なんてどうでも良いです!!

 はぁぁ。もう、これから、どうしましょう?

 これでは、ぜったいに人間社会に適合できませんよね? せめて、人間であれば良かったのに、とんでも無く強いウサギの魔獣って! 私が期待していた可愛い令嬢は何処に行ったのですか?

 高貴な令嬢になって、華麗に困難や課題を解決して、どこかの国の王子様と結ばれるって、期待しちゃっていましたよ私!!


 葛藤すること小一時間……


 うん、良し。よーく分かりました。私はこの世界で最も強くて可愛いピンクのウサちゃんですね。

 よぉーーし。気にしないで、強く生きていきましょう!


 ん? なんとなく、私自身も人間だったころに比べて性格が変わったような気がしますが……

 まぁ、それも含めて気にしないで生きていきましょう!





 ふっふふん。うっさぎ、うっさぎ。

 この体は意外と良い感じに馴染みましたよ。体も軽くってぴょんぴょんスキップ出来るし、食事も草しか食べられないのかと思いましたが、意外と何でも大丈夫そうだから安心です。


 実は先日、イノシシのような魔物に襲われましたが、蹴り飛ばしたら一発で倒せましたよ。えぇ、やっぱり、あのステータスは半端ないようです。あ、それで、そのイノシシを食べられないかと、ちょっと齧ってみたのですが、意外や意外、食べれたのです。ウサギは草食の生き物だし、そのうえ生肉は無理かと思いましたが、いやー、齧ってみるものです! 彼らが、何でも齧る意味が分かった気がしましたよ。


 それで、今何をしているのかと言いますと、実は当てもなく道を進んでいます。

 初めのうちは森の中とかで生活しようかなって思いましたが、ちょっと、この世界には、どういった人たちや生き物が、どのように生活しているのか見てみたくなりましてね。とにかく道を進んでいけば、どこかに繋がっているだろうって思ったのです。


 時々、食事休憩を入れて、収納から取り出したイノシシの肉を齧って、その辺の草も少し齧る。うーーん。美味しいです! 人間だったら食べない雑草が、今の私には美味しく感じます。辺り一面、食料だらけですから生活は楽ですね。勉強も無いし、働く必要も無い。


 ここ数日ですが、ぶらぶらと旅を続けながら、収納について色々と調べてみましたよ。まず収納したイノシシの肉は腐らないし草も枯れない。わずか数日の検証ですが、これは大きいですね。って言うか、これだけで私の食生活は守られたとも言えます。イノシシは大きいです。私だと一体、何か月分の食事になるのか分からないぐらいです。草も、そこら一面にあります。むしろ草しか無いぐらいです。これを収納しておけば冬だろうが安心です。


 それで、今度は反対に生き物を入れると、どうなるかって思いますよね。だって腐らないってことはバクテリアとか細菌が死んでいるからだと思います。そうすると生き物を入れたら、その生き物は死んでしまうのではと思ったのですよ。


 さっそく実験です! その辺を歩いている虫に触れて『収納』!! 暫くして、出してみる。……生きていますよ?? あれ、予想と違います。生き物が収納の中で生きていると、腐らない理由が分かりませんね。それとも、この虫が特別なのでしょうか? 良し。次は、もっと大きな動物にしてみよう。



 色々実験して分かりましたよ。この収納は、生き物も入れることができるが、収納の中では単純に時間が止まっているようです。動物を入れて1週間ほど水も食べ物も与えなかったのに、収納から出してみると、何事も無かったかのように元気でした。もちろん、収納されている他の食べ物を食べたってことも無いようです。

 どうやら、私が生きている限り、SFの世界に出て来るコールドスリープのようなことも簡単にできてしまいますね。


 そのように、色々な発見をしながら道を歩いていると、前方に人影が見えました


 お、いよいよ第一村人発見でしょうか!?


 ……えっと、何やら雰囲気が良くない感じですね。


 見て分かる人数だけで言うと二対四って感じですが、地面には他にも何人分かのバラバラ死体があります。生き残っている二人も、だいぶんマズイ感じですよ。というか本当に生きているのでしょうか? どうやら一人は女性のようですが四肢が切り落とされて動けないようだし、もう一人は小学生ぐらいの男の子ですかね? こちらも両腕を切り落とされて大ピンチのようです。


 一方、四人組の方は余裕そうです。一人の若い男が剣を抜いていているので、おそらく彼が皆を斬ったのでしょうね。他の三人のうち、一人は腕を突き出して、何かブツブツ言っているようです。何を言っているのか、さっぱりわかりませんが、呪文のようなものですかね?? 残った二人は、槍を持っていますが構えることも無く、ニヤニヤ笑って剣を持っている若い男に話しかけています。



 ……あ、これは! 私、この人たちの言葉が分からないようです!!



 いや、そっちかい! って思ったかも知れませんが、私にとっては重要なことですよ。まぁ人間社会に入れるとは思っていませんが、言葉が通じれば何等かの交渉が出来るかもしれないじゃないですか。


 ん? 剣を持った男が、小学生ぐらいの子供に向かって剣を振りかざした!!


 ドゲッッシ!!


 おや、おや。すみませんね。事情は知りませんが、大人が四人で寄ってたかって、いたいけな子供を斬りつけるとは、気に入りませんね。思わず、剣の男を蹴り飛ばしてしまいましたよ。


 ん? 少し体の動きが重い気がしますが、このブツブツ言っている男が影響しているのですかね? 

 うっとうしいので、これも蹴り飛ばしておきましょう。


 ズドーン!!


 よぉーーし! 楽になりましたよ。


 あ、槍のお二人も来ますか? あ、そうですか。それでは、よいしょっと!


 うーーん。マズイですかね!? 人間と絡むのは初めてだったのですが、皆さん、死んじゃってますよね?? イノシシよりも加減したのですが……難しいです。まぁ、私は魔物だし、この人達も強盗ですかね? 何か悪そうな人だったから良いですかね。


 残念ですが、斬られてしまった人たちは駄目ですかね? この世界の医療は分からないけど、バラバラの死体はともかく、女性と子供は、私が収納すれば死にはしませんけど……女性は両手両足切り落とされているし、少年も両腕を切り落とされているから、やはり助からないですかね。


 うーーん? お、何やら少年が切り落とされた腕の横に寝転がりましたね。


 何をしているのでしょう? こうして、顔をじっくり見てみると西洋画に出て来そうな美少年ですが、うーーん、諦めて、ここで死ぬつもりなのでしょうか? 私が治療魔法でも使えれば良かったんだけど、そんなものはありませんから、かわいそうですが助けられないのですよ


 ……えぇ!! 腕が、腕がくっ付きましたけど? あ、魔法か何かですかね?


 片手が付いたら、さらに、もう一つの手も簡単にくっ付けてしまいましたよ。お、次は女性の四肢を拾い集めて、次々と付けていきます。なんと、この世界の人たちはちょっと気持ち悪いですが、そんなに簡単にくっ付くのですかね。四肢が別れ別れになっていた女性も普通に動けるようになりましたよ。これも魔法ですかね??


 ん? 今気が付きましたが、この人たち血が出ていませんよ。


 何だか気味が悪いですね。何でしょうか?

 あっ! なんてことでしょう。完全にバラバラになっていた人たちが、蒸発する時のように消えて

 いきましたよ。ん? 消えたと思ったら小さいけど綺麗な石が残っていましたね。この人たちは死ぬと消えて石が残るのでしょうか!?


 こ、この人たちは悪魔とかでしょうか? ひょっとして、私は手助けする方を間違いましたか? おそらく、私が蹴り飛ばしてしまった方は人間ですね。ちゃんと血を流していますから。これは、あまり深入りしない方が良さそうです。そうですね。もう行きましょう。


 ん、何ですか? 少年が私に話しかけて来ています。うーーん。すみません。私は言葉がわかないのですよ。とにかく何か挨拶ぐらいはした方が良いのでしょうか?


「プイ!」


 あ、これが私の声だったのですね。初めて知りましたよ。


 お、手足がバラバラだった女性が、何やら手に持っています。何かいい匂いがしますが、それはなんですか?


 女性が手に持っている物に気を取られているうちに、少年に抱きかかえられてしまいました。うーーん。まぁ、私が本気で暴れたら、簡単に抜け出せるので問題ありませんが、それよりも、その細長い物……あ、それはジャーキーですね!


 人間だったころに食べたことがありますよ。干し肉のようなもので、独特の味があって噛んでいると旨味が出てくる物ですよね。


 え、くれるのですか? 本当に良いのですね? では、いただきまーす。


 うん。美味しいです。これはイノシシの肉などとは比べ物になりません。

 ポリポリ、もぐもぐ。ポリポリ、もぐもぐ。


 ずっと食べていられますね。




 ――――――――――――――――――――――――――――


 魔王軍幹部 リンベル将軍視点


 ――――――――――――――――――――――――――――


 我ら魔王国は、はるか昔から人間との戦いに明け暮れていた。

 魔王国の周辺は、剣国、槍国、聖国、弓国という人間どもの国によって囲まれている。


 今から5年前、大戦いがあった。その時、槍国の勇者を倒すことに成功したのだ。しかし、その代償は大きく、先代魔王様と幹部たち、多くのベテラン兵を失ってしまった。


 勇者と言うのは厄介な仕組みで、現勇者が死ぬと新たな勇者がその国で誕生する。そうだ、いつまでも勇者は居なくならない。勇者が期間が我々の安寧の時なのだ。


 倒した槍国の勇者は、既に誕生しているはずだが、まだ、頭角を現していない。


 現在存在が認められている勇者は、剣国の剣の勇者と聖国の聖魔法の勇者、弓国の弓の勇者だけだ。しかし奴らは、まだ育成中との情報があった。そこで油断していたのかも知れない。


 先日、弓国との国境にある魔王軍の砦、アズガバンに弓国の軍勢が攻め入って来たのだ。弓国の軍勢は意外と強く、砦は瞬く間に包囲され籠城を余儀なくされてしまった。


 そして、時を同じくして剣国側からも魔王軍の砦、カザマスタにも軍勢が攻め入って来たのだ。これが連携してのことか、偶然なのか分からないが、カザマスタも同じく籠城を余儀なくされてしまった。


 もちろん、王城から援軍を出してこれらの包囲網を蹴散らしたいが、全く兵が居ないのだ。魔人の出生率は低く、魔人は人間の約百分の一程度の人数しか居ないのだ。魔人の戦闘能力は人間に比べると一騎当千だがそれでも数の問題はどうにもできないのだ。


 もちろん魔王様を守る近衛兵はいるが、これも5年前の戦いの後に非戦闘員の奴らを急遽集めて育成を始めた者たちなのだ。はぁぁ、この者たちは留守番の方が良さそうだな。


「まぁしょうがないよ。俺とリンベルの二人で、まずはカザマスタの包囲網を蹴散らそう。俺たちが背後から強襲して、混乱したところを砦の連中と連携して挟撃してしまおう」


「魔王様、お手数をかけてしまい。すみません。他にも兵士を二、三名連れていきます」


「うん。人間の一般兵相手なら、そうそう遅れは取らないだろう。良いよ連れて行こう」


 このぐらい軽い気持ちで魔王様と私、そして兵士を三名を入れてカザマスタ砦に向かっていたのだ。



 その道中に出会ったのが、よりにもよって剣の勇者だった。


「お、運がいいね! 雑魚はともかく、きっとこいつは幹部だ。魔力が高そうだな、きっと良い魔石が手に入るぞ。お前ら良かったな、良い小遣い稼ぎができるぞ」


「はっはは。ありがたいですね。勇者様が一緒だし、今日は重力魔術の使い手までいる。これは楽勝だ!」


「そうともよ。良し念のためだ。ゾラス、重力魔術で動けなくしてしまえ」


 な、なんだと! 勇者だと言うのか? こいつの装備……剣だ。

 よりによって、勇者の中では最高の戦闘力を持つ剣の勇者だ。

 ここに居るのが魔王様だとバレるわけにはいかない。


「お前たち、エリオスを連れて先に……あっ!!」


「バーーッカ。誰も逃がすわけないじゃん。ゾラスの重力魔術だ。動けないだろう? こいつの得意技だ。さぁって切り刻んでやるかな」


 しまった。兵士たちに魔王様を連れて逃げるように指示しようとしたが奴らの方が一歩早かった。剣の勇者と名乗る者が、ゆっくりと鞘から剣を抜く。その姿を見ながらも、私や兵士だけでは無く、圧倒的な魔力を持ち、魔力耐性も持っている魔王様までもが動けなくなっている。


 がぁーー動け!! 魔王様だけでも逃がさないと!!


 駄目だ。指一本動かせない。こんな一方的な状態になるとは全く想定していなかった。魔人は手や足を切り落とされた程度ではすぐには消滅しない。何なら繋ぎ合わせれば、くっ付けることも可能だ。だが人間の血が流れ死ぬように我々も斬り口から魔素が流れ出る。魔素を失うと消滅してしまうのだ。

 特に首は駄目だ。一気に魔素が流れ出るため、くっつける暇もなく消滅が始まってしまう。


 あぁ、兵士たち三名が無抵抗まま、なすすべもなく斬られていく……


「はっはは。簡単に切れるな。この剣は、さすがに勇者の剣だけあるよ」


「ちょっ、ちょっと勇者様、あまり切り刻むと魔石が小さくなってしまいますよ」


「おっと、そうだった。じゃあこいつは首だけ切り落とせば良いっか。ん? お前は幹部級だろう? そしてこのチビの親か? しっかし親子そろって魔力は高そうだな。良い魔石が取れそうで嬉しいよ! そうだ!! お前にはこのチビが消滅するところを見物させてやるよ。」


 このクソ勇者は、そう言うと私の手足を切り落として生かしたままにした。

 あぁ、駄目なのか! まさか、こんなところで魔王様を失ってしまうとは魔王国は終わりだ……


 申し訳ございません。魔王様。私が至らないばかりに。


 剣の勇者が魔王様の両腕を切り落として、さらに首を目掛けて剣を振りかざした!! クソ、これまでか!


 ドゲッッシ!!


 は? はぁぁ? な、何があった?

 突然、剣の勇者が吹っ飛んだぞ。


 はっ! なんだこのピンクの物体は?? 体が動かないから良く見えないが、いつの間に居たんだ?


 ズドーン!!


「ガッハァ!! 動けた!」


 あれ? ゾラスとかいう魔術師が居ないぞ。あ、ひょっとして岩にこびりついているあの赤い塊がそれか?


 そ、そうだ。ピンクの物体はなんだ? あ、魔王様の近くにいる。危険だ。あいつは凄まじい魔力を持っている。間違いなく魔王様さえも超えているぞ。あーークソ。私も手足を付けないと!!


「ま、魔王様!! 危険です離れて……っん? ……つ、角ウサギか?」


 姿形は角ウサギの幼体に見える、いや、ピンクだけど??

 って言うか、何で角ウサギが、こんなに凄まじい魔力を持っているのだ?


 そもそも、ピンクの角ウサギなど見たことも聞いたことも無い。これは変異個体なのか??

 あ、いや、それは後回しだ。まずは魔王様だ。


 あぁ、本当にすみません。魔王様を助けるどころか、私の手足を持って来てもらって助けてもらってしまった。とにかく、私も手足をくっつけないと……


「なあ、お前は何者だ? とんでもない魔力だし、勇者を蹴り飛ばしたときのスピード、あれは俺の目でも追えなかったぞ。なあ、お前、俺たちと一緒に来ないか?」


 ま、魔王様。角ウサギには言葉は通じないと思いますが?


「プイ!」


 えぇぇ! 通じたのですか?


「お、良いのか! リンベル、こいつに何かあげる物は持っていないか?」


「はぁ、取り合えず、携帯食のこれしかありませんが」


 と言って私はジャーキーを取り出した。ん? この角ウサギ。これに興味があるのか? 魔王様が角ウサギを抱き上げて、ジャーキーを見せてあげた。あれ? 魔王様、私の知識だと角ウサギは草食だったはずですが……あ、食べた。





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 ウサギの花子視点


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 うーーん。どうもこの人達、悪魔かもしれませんが、別に悪い人たちでは無い気がします。いや、食べ物をくれたからではありませんよ。バラバラにされた仲間が消えた後に残った石を持って、きちんと弔っているように見えます。その弔い方から荒っぽさや雑さは見えません。きっと心から弔っているのでしょうね。


 まぁ私には関係ないことですね。では、私はこの辺で……えっと、失礼しようかと思っているのですが、この子供、私の事を大事そうに抱きかかえてまして、下手に暴れると殺してしまいそうで怖いから……うーーん動けませんよ。


 仲間の石と、仲間を切り刻んだ剣は女性が持って行くようです。この人は、この子供の母親なのでしょうか? そうなると先ほど石になってしまった仲間は父とか兄弟とかでしょうか? うーーん、なんだか不憫に感じますよ。仕方がありません。私も当てがあったわけでは無いのでこの親子に付き合ってあげましょう。


 先ほどのように物騒な奴に絡まれたら、可哀想なので私が護衛してあげますね。で、その代わりジャーキーをくださいって言っておかないとです!


「プイ、プ、プイイ」


 あ、二人して首をかしげています。やっぱり通じませんか?


 …………


 はっ、いつの間にか寝てしまっていました。

 子供に抱っこされて、運ばれていたのですが、楽なのと、ちょうどいい揺れと暖かさに眠気がやってきてしまいました。


 太陽の傾きから、私はずいぶんと長い間寝ていたようですね。すみません。抱っこしっぱなしで疲れませんでしたか? 顔を見ると平気そうです。子供なのに意外とタフなのですね。


 えっと、ここは何処でしょうか? 何やらお城のような物が見えますけど? ん? よく見るとお城の周りにたくさんの人がいますね。市場って訳では無いですよね。何か嫌な予感がしますよ。


 あの人たちは武器を持っていて、お城を攻撃しているようです。確か投石機というものだったと思いますがお城に向かって石を投げつけているようです。そして、最も目を引くのが、お城と下に居る人々の間を飛び交う火の玉です。これ、きっと魔法ですよね! 凄いです。ちょっと綺麗です。


 この親子も、これを見に来たのですかね? いや、何か困った顔をしているので違いそうです。ひょっとして、お城に入りたかったのでしょうか?


 ん? 親子で何やら相談を始めたようです。まぁそうですよね。この状態ではお城に入れなさそうですよ。お城の周りにいるのは人間ですね。そしてお城の中に居るのは誰なんでしょうか?この人たちのように悪魔? 魔人? あれ、そもそも、この人たちは何者なんでしょうね?人間ではないことだけは確かなのですが、悪魔と魔人をくっ付けて、仮に悪魔人にしましょうか?

 あくまでも仮ですよ。あくまでもね。


 そんなくだらないことは良いのですが、どうするのでしょうか? この親子の住んでいるのはあのお城なのかもしれませんが、完全に人間に囲まれていて、あまり良い状況ではなさそうです。


 わかりました。ここは私が手伝ってあげましょう。親子はお城の中に行きたいのですね。私が収納して運んであげれば済むことです。


「プイ! ププイ?」


 ってやはり通じませんよね。連れて行った方が早いですよね。


 では、行きますか! 二人の手を取って、『収納』!

 ふう。これで、良しです。後は人間たちを突破すれば良いのですね。簡単です。


 敵意が無いアピールで気軽に近づいてみます。おっと、やはり駄目ですね。私が魔獣だからなのか、いきなり斬りかかってきましたよ。別に戦う意思は無かったのですが、仕方が無いですね。作戦変更です。強行突破です!


 全速力です! あ、危ないですよ? 少しでもぶつかるだけで吹っ飛んでいきますからね。まぁそりゃそうですかね。きっと前世の世界だとジェット機にはねられるような勢いでしょうからね。まぁジェット機にはねられた人は居ないかもですが。


 お城の壁が近づいたところでジャンプ!! おぉ。これは凄いですね。軽々とお城を通り越して、お城の反対側に着いてしまいました。いやー飛びすぎました。あぁ、すみません。着地地点に居た人たちを巻き込んでしまいました。うん。失敗失敗。では気を取り直して再びジャーンプ!


 あ、駄目です。また行きすぎそうです。何とか空中で短い手足をパタパタさせて軌道修正しましたが、うーーん駄目でした。また城外です。


 ちょっと、ジャンプは力加減を練習しないと駄目そうですね。



 お! 何度目かのトライで、ようやく成功です。今度はちゃんと城内に着地しましたよ。やれやれです。あ、城内でも悪魔人の皆さんに囲まれましたが、たぶん親子を出せば大丈夫でしょう。さぁて二人ともどうぞ!!


 お、二人で何やら喋ったと思ったらキョロキョロしていますね。突然、城内に居るのでびっくりしましたか? お城の人も話に加わって何かお話しています。どうやら、お仲間のようです。良かった。もし私の勘違いで敵同士でしたら、すぐに収納して脱出するつもりでしたので良かったです。


 おや、また私を抱っこですか? ふふふ。この子は私の事を気に入ったのですね。

 はいはい。おとなしく抱っこされておきましょう。

 へー、お城の塀ってこんな風に階段が付いているんですね。城の中から塀の上に登れるようになっていました。日本のお城は塀の上に登って戦うってあるのかな? さすが西洋風のお城ですね。


 おやおや。ちょっとマズかったですかね? 私がムキになって、城を挟んで行ったり来たりのジャンプ練習をしたばっかりに、城下の人間たちは酷い有様になっていました。あぁこれは、完全に人間社会に適合できませんよね? 適合どころか敵対ですよね??

 ど、どうしましょう??




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 魔王軍幹部 リンベル将軍視点


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 私たちを助けてくれた角ウサギ? にジャーキーをあげながら、魔王様と一緒に兵士たちの遺品を土に埋めて、簡単ではあるが弔うことにした。まだ、若かっただけに残念だ。

 私は彼らの残した魔石をポシェットに入れて持ち帰ってことにした。軍人はこんなものと言えば、こんなものなんだが呆気ないよな。ちゃんと魔王国に連れて帰ってやろう。


 あとは、一応、勇者が持ていた剣も持って行くことにした。私には鑑定ができないが、我々の動きを重力魔術で封じていたと言っても、あの切れ味だ。おそらく良い剣なのだろう。


「プイ、プ、プイイ」


 何だか、角ウサギが話しかけて来ているような気がするが……うん。何を言っているのか分からん。しかしこの角ウサギは何者なんだ? 確かに不意打ちではあるが、剣の勇者を一撃で倒すなどありえんだろう!? それに、魔王様の言葉を理解しているのか? 大人しく付いて行く、というか大人しく抱っこされ運ばれているぞ。


 私は常に剣を使える状態にしておかないといけないので、手に何かを持つことは出来ないが、なぜか魔王様は角ウサギを抱っこして歩いている。んーー余程気に入られたのかな?


 こうして角ウサギを抱っこして歩く魔王様は、何て言うか年相応に見えるな。絶対に本人には言えないが、魔王様は見た目は子供だが、どこか凛々しく美しい姿をしている。そんな美しい子供がピンクの角ウサギの子供を抱っこしているんだぞ。うん。これは絵になる。城に戻ったら皆に話してやろう。


「リンベル」


「は、はい。大丈夫です。話しません!」


「ん? 何の話だ? まぁ良いそれより、この角ウサギ何者だと思う? のんきに俺の手の中で寝ているぞ。確かに、この角ウサギは強いが俺もそこそこ強いはずだ。それなのに警戒することもなく爆睡している。俺なんて全く気にならないほどの強さなのか、それとも、ただ神経が図太いのか」


「あ、いえ、何でもありません。そ、それで角ウサギですね。そもそもピンクの角ウサギは見たことがありませんから、突然変異した個体でしょうね。その関係なのか本来、食べるはずのないジャーキーなど肉類も食べていましたからね。強さは、失礼ながら魔王様よりも上のようです。あのゾラスとかいう魔術師の重力魔術を撥ね退けましたからね。そのことから、我々を全く脅威とは見ていないのでは。」


「うん。やはりそうだな。この角ウサギは本当に俺たちに付いて来てくれるだろうか? うーーん。この角ウサギは可愛いな。このまま付いて来てくれると良いのだが」


「ふふふ。そうですね。そればっかりは分かりませんが、嫌だったらすでに逃げていたでしょう。このまま、一緒に居てくれたらいいですね」


 やはり、魔王様は気に入ってしまったようだ。ますます眼福だ。

 げふん、げふん。

 いや、それは良いが。まもなく砦だ。気を引き締めないと。



 砦が見えて来たが、やはり状況は悪いようだ。人間どもが完全に包囲して火魔術が飛び交っている。これでは、救援物資の補給など出来る状態では無いな。そうなると予定通り我々で奴らの後方をかく乱して、砦の連中と連携しながら挟撃体制を作り出すしかないか。


「リンベル、やはり予定通りで行くしかないな。うーーん角ウサギをどうしようかな?」


「そうですね。作戦はそのまま続行で。角ウサギですよね。持ったままでは厳しいので、置いていくしか無いと思いますね」


「うむ。仕方がない。ここに置いていくか」


「プイ! ププイ?」


「お、何だ? 置いて行かれるのは嫌なのか?」


 ま、魔王様、さすがにそこまで理解はしていないと思いますが……


 ん? 角ウサギが我々の手を取るような……あ!




 はっ! 何があったんだ? 魔王様も何か様子が変だ。おそらく同じ感覚なのだろう。何か、何かが変なのだ。空気が違うというか……あれ? ここは何処だ? さっきまで我々は砦が見える位置に居たはずだが、いつの間にか目の前に石の壁が広がっているぞ?


「あ、あのーーリンベル様と魔王様で??」


「うぉ! な、なんだお前たちは? いつの間に??」


「いや、それは私たちのセリフですよ。ピンクの角ウサギが、周囲の人間どもを蹴散らしたと思ったら、今度はこっちに降りて来たから、びっくりしていたところ、突然お二人が現れたんですよ!?」


「んな! ま、魔王様は何か分かりますか? 我々の身に一体何があったのでしょう?」


「いや、分からない。しかし、魔人族の気配が濃厚だから、ここが砦の中だってことはわかる。よし、ちょっと、砦の外の様子を見てみよう! そこから登れるよな?」


 魔王様は本当にピンクの角ウサギが気に入ったのですね。また抱っこしている。

 おっと、見とれている場合ではない。私も外の様子を確認しないと!


「あぁ? 何だこれは、包囲網が総崩れを起こしているじゃないか。さらには、あちらこちらにクレータのようなものが出来ているぞ??」


「いや、何だって言われましても、その魔王様が抱いているピンクの角ウサギですよ。それがあっちこっちと砦の周りをジャンプして回って、敵を踏みつぶし、衝撃波でなぎ倒していったんですよ。我々は上から見えるけど、下にいる人間どもには何が起きているのか分からず混乱したと思いますよ。ちなみにクレータは、その角ウサギが着地して一段階目が作られて、次にジャンプした時には、さらに深くなってましたよ」


 はっはは。そんな馬鹿なって思うが、この兵士の話と目の前に広がる光景を合わせると、もはや疑う余地も無いなぁ。あ、横で魔王様が口を開けて固まっている。うん。そーっと、魔王様の口を閉じて差し上げた……

 そのまま、後ろを見ると確かに我々の居た場所だけが窪んでいたことが分かった。おそらく先ほど兵士が言った通り、角ウサギが着地した跡なんだろうな。


「まぁ俺たちは上から見てれば、その角ウサギが、どこに落下するか分かるから、それを避けて、混乱している奴らを次々と襲撃したんですよ」


 そ、そうか。それは良かった。何が起きたは理解出来たが、何故そのことを私や魔王様は覚えていないのか、そこはさっぱり分からん。しかし、角ウサギのおかけで人間どもを混乱させることが出来たようなので、我々の目的は達成したようだ。私と魔王様が来た意味が無いとかは考えないでおこう!



 結局、砦の兵士だけでも蹴散らせそうな状況になってしまったが、せっかく我々も来たので軽く運動がてら手伝うことにした。混乱して逃げようとする奴らを追撃してダメージを追加するだけの簡単な仕事だ。それに、魔王様には角ウサギが付いている。

 付いているというのは物理的にだ。何故そうなったか分からんが魔王様の頭の上に角ウサギが乗っかっているのだ。いや、我が王の頭上に座っているという構図に問題はあると思うが、魔王様自身が気に入ってるようだから、文句も言えない。

 むむむ。

 臣下として本当に良いのだろうか??

 まぁ、あのウサギの強さは分かっているし、どうやら我々に危害を加える気は無いようだから魔王様の護衛をしてもらっているという事実だけを見て、それ以外は見ないで行くことにしよう! あぁそれが良い!!


 おお! あの角ウサギ、たまに魔王様の背後を目掛けて飛んで来る魔術を片手ではじき返しているぞ!? と言うか、魔術ってはじき返せるものなのか? そんなことをする奴なんて初めて見たぞ。あぁあ、魔術を打った奴。慌てるよなぁ。まさか自分の魔術がそのまま返ってくるとは思わんよなぁ。


 ……あ、私はすることがあまりないかも知れん。魔王様の護衛をする必要も無いので、ほんと適当に人間どもを蹴散らすだけの簡単なお仕事になってしまった。まぁ魔王様を観察して、後で城の連中に話してあげる係は健在だが……あっ私、将軍だったな!?




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 ウサギの花子視点


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 はい。諦めました!!

 そもそも、私って魔獣ですから!


 はぁーー。そうなのです。私は魔獣なんだから、そもそも人間社会に適合出来るわけがないのかも知れませんね。だからって、積極的に敵対するつもりも無かったのですが、このお城の塀から見る限り無理ですね。私が跳び回った所為でお城を囲んでいた人たちが何人も動かなくなっているようです。


 着地してすぐに跳んでいたので、周りの被害と言うものを見ていませんでしたが、こうして改めて見ると駄目ですね。ジャンプした時か着陸したときに周りの石などを吹き飛ばして散弾銃の弾のようにあたり一面にまき散らしたのですかね? 放射線状に石と人間らしきモノが飛び散っていることが分かりますよ。


 うん。仕方がない! 私もこの親子に肩入れしてしまっているので、この親子の敵は私の敵ですね。あ! 今更だけど。親子は、お城の人たちと話していたから、お城の人たちが仲間で、下にいる人間たちは敵であっていますよね???



 ああ、良かった。やはり人間たちは敵だったようです。親子たちは人間を蹴散らしに行くようです。ふーーむ。要するに人間に取り囲まれたお城の仲間を助けるんですね! 分かりましたよ。改めて、私もお手伝いしましょう。


 などと思っていましたが、なぜかお子様が離してくれません。うーん。懐かれすぎましたかね。まぁこの少年は可愛いので良いでしょう。それに、わざわざ人間を倒したいわけではありませんからね。

 しかし、抱っこでは危険です。何かあっても対応できませんよ。

 うーん。仕方がありませんね。

 ちょっと失礼して、よいしょっと。

 よし、ここなら大丈夫です。


 落ちないようにバランスを取る必要がありますが、この子供の動きに合わせて、私もバランスを取れば良いだけで、そんなに難しくは無いですね。


 おっと、後ろから魔法ですかね。そんなものを人様に向けて放ってはいけませんよ。こんなものは「プイ!」です。


 それにしても、この子供も少しは戦えるのですね。道で出会ったときは、気持ちの悪い魔法を使う人間の所為で動けなかっただけなのかも知れません。少しは安心しました。まぁ、それでも子供ですからね。母親もチラチラと子供の様子を見ていますね。ふふふ。大丈夫ですよ。私がちゃんと守っておきますよ。



 暫く、人間たちを蹴らせていると、人間たちの方から空に向かって花火のような物が上がりました。うーーん。日本の花火のような感じではないので、何かの合図でしょうか??


 あ、人間たちが、武器も何も捨てて慌てて帰っていきます。どうやら撤収の合図だったようですね。うんうん。これで安心です。


 って、思ったら、何やら嫌な予感が!!


 おおっっ! すっごい大きな花火……じゃなかった火の玉がこっちに向かってきます。

 もう、こんなの子供に当たったら危ないじゃないですか!


 よいしょっと。子供の頭から降りて、ゆっくりと加速しながら子供の傍から離れて行く。

 ここまで離れたら大丈夫かな。それじゃ本気の……おっと? お母さんも向かっていたのですね。

 でも大丈夫ですよ。あの程度なら簡単ですから、お先に行ってきますねー。

 それじゃ改めて、本気加速ーーーー!! からのぉーーー蹴り!!


 うん。これですね。子供の近くは危ないですから、ちゃんと離れてから加速するのが安全で良さそうです。もちろん、火の玉はちゃんと送り主に返しておきましたよ!


 さぁって、これで戦いは終わりですかね? お返しした火の玉が大爆発しているので、もうこちらには来ないと思いますよ。まぁ、それでも私はいそいそと子供の頭に登って警戒は怠りませんけどね!


 お、親子も同じく敵の攻撃は無いと判断したようですね。私を乗せてお城に入っていくようです。ちょっとお城の中が楽しみです。ふっふふーん。なーにがあるのかな?


 ガーーン。 な、何も無さそうですよ。美味しい食べ物があると思っていたのに、ジャーキーさえも無いようです。これは、どういう事なのですかね!! プンプンですよ!

 あ、お母さん。ジャーキー持っていたのですか? それなら少し許しましょう。いっただきまーす!


 ポリポリ。もぐもぐ。ポリポリ。もぐもぐ。


 ん? 何でしょうか? お城の人たちが集まってきましたよ。

 はいはい。何ですか?子供が話しかけてくるのですが……うーーん。やっぱりわかりませんよ?

 おお、ジェスチャーゲームですか? ほうほう。何々。

 えっと、消す! 親子? 私?? あ、分かりましたよ。収納の事が気になったんですね。そりゃそうですよね。私も収納されたことは無いですが、突然場所が変わっていたんですからびっくりしましたよね。

 えっと、それを見せてほしいと言う事ですか? このコップを使って? はい。良いですよ。


 チョン! 『収納』!


 ほら、私が触っただけで消えたでしょう。これが収納ですよー。で、ちょっと離れた場所に、ほいっと。ほら出て来たでしょう。さっきのコップですよ、お、面白いですか!? おお、何やら大盛況です。そ、そんなにウケますか!? 手品と勘違いしているのですかね?


 ん、ん? また子供が話しかけてきます。今度はずいぶんと興奮しているようですが、やはり子供はこういうのが好きなのですね。ふふふ。楽しんで貰えてよかったです。あれ、もうお出かけするのですか? このお城でゆっくりしないのですか……ってそうか。何も無いですから、ゆっくりしても仕方が無いですね。美味しい物も無さそうですし。分かりました。出かけましょう。



 また、私は子供の頭の上に載せられました。一応、今回は私が乗ったのではなく、子供の方から乗せてくれたのですよ。ふっふふーーん。抱っこも良いですけど、これも良いですね!


 …………


 うーーん。草原の中に通った道をひたすら歩いていますね。ちょっと退屈ですが、乗せてもらっている身ですから文句は言えません。ただ、そろそろお腹が空いて来たので、少し休憩しませんか?


 お、うまく通じたようで休憩してくれるようです。それでは、ちょっと食料を出しますかね。よいしょっと! うん。やはりイノシシは傷んでいないようです。あ、そうだお母さんはこのイノシシでジャーキーを作れないですかね? あれ? 急にイノシシを出したからびっくりしてしまいましたか? 大丈夫ですよ。死んでいるので襲ってきたりはしませんよ。


 なんだ。二人ともお腹が空いていたのですね。それなら言ってくれれば良いのに。言葉分かりませんけどね。私がイノシシのお肉を手ごろな大きさに切り分けて渡してあげたら、なんとお母さんが火で焼いてステーキのような物を作ってくれましたよ! おお、生より美味しいです! うん。私は断然、焼いた方ですね。えっとレアではなくウェルダンの方です。まぁ日本で実際に食べたことは無いですけどね。はい。テレビでの知識ですよ。


 そういえばお母さんは火の魔法が使えるのですね。普段とは違うような言葉を言っていたので詠唱ってものですかね? うーーん。私は話すことも出来ないので、使えなさそうですね。


 とりあえず、三人で腹ごしらえが出来たので。再び出発です。今度は抱っこのようです。おや、おや。速度が上がってきましたよ。歩くから走るに変わって、さらにスピードアップです。なんだ、こんなに早く移動できたのですね。これは、お腹が空いて力が出なかったのでしょうか? 早くイノシシを出してあげれば良かったですね。


 そもそも、私がこっちの世界の言葉を覚えたら良いのですけどね。まだ、さっぱりですよ。まずは人間の赤ちゃんが言葉を覚えるときのように、人や物などの名前からですかね。そういう名詞と動詞さえあれば最低限の片言会話が出来るかも知れませんね。

 あ、私って発音できるのでしょうか?

 たしかに聞き取ることは出来るようになりそうですけど、ウサギの声帯で人と同じように言葉を出すことが出来るのか分かりませんね。「プイ」だけでも意思表現は出来ると思うので、それで頑張ってみますかね。よし。まずは、この親子の会話から単語を覚えるように頑張ってみますかね。


 お、もうすぐ日が暮れるのではと思った頃に街が見えてきましたよ。おお、ここなら何か美味しい物があるかもしれませんね。今度こそ期待が出来ます。

 あ、あ、あれ? 二人とも、おいしそうな屋台が出ていますよ。寄らないのですか??


 あぁぁ。なんてことでしょうか。おいしそうな匂いのする街中を抜けて、またお城に来てしまいました。お城も良いですけど街の方が食べ物がありそうでしたけど……あ、入るんですね。おお。こんどのお城は昼間見たものよりはるかに大きいですね。こうして見ると、こっちがお城って感じで、昼間見たのは違うのかも知れません。なるほど、だからあっちには何も無かったのですね。


 おお、こっちのも人が沢山いますね。んー。昼のお城っぽい建物の時も思いましたが、この親子は、それなりの権力者のようですね。色んな人がペコペコして言うことを聞いているようです。ふむふむ。まぁ私は、美味しいものが食べれるなら、何でも構いませんけどね。


 おおお!! 何やら食べ物が運ばれてきましたよ! これはテンションが上がります! ……あれ? これ料理されていませんが? ま、まさか私が生のイノシシ肉を齧った姿を見せたから料理などしないで食べる野生動物と同じだと思われたのでしょうか?? ちょ、ちょっと、これはいけません。誤解を解かないと沢山食べ物があるのに台無しです。確かにお腹いっぱいにはなりますが、料理した方がおいしいですよ! 私はウサギだからできませんが!!


 ん? どうやらこれは私が食べるために用意しているわけでは無いようですね? さすがに木箱に入ったまま蓋も開けずに持ってくることはしないでしょう? と言う事は……分かりました。昼間のお城っぽい所に居た人たちに持って行ってあげるんですね!! あぁ、確かにあそこには何も無かったから、おすそ分けしてあげるのですね。


 よし、分かりました。それなら私が手伝ってあげましょう! あっ、そうか! 向こうで収納を見せたときに大盛況だったのは、私なら物資が運べると思ったのですね。はっはは。ちょっと誤解していましたが、理由はともかく、喜んでいたのは事実ですね。


 よしよし。全部収納してあげましょう! ほい。ほい。ほいっと。


 ふっふふーーん。全部収納しましたよ。収納が終わったと思ったら、なんと子供が果物を持って来てくれましたよ。ジェスチャーと果物の量からみて、運ぶものでは無く、私が食べても良い物のようです。ご褒美ですね! おおお! 美味しいです。生まれて初めてです! いや、前世も含めて! こんな美味しい物があるんですね。ジャーキーより美味しいです。


 よし、ご褒美も貰ったので、頑張りますよ!!

 早速ですが、このまま昼間の建物に戻れば良いのですね。

 じゃあ、行きますよ。二人の手に触れて『収納』!


 では、いってきまーす。

 おそらく二人がお城に言っておいてくれたのか、お城の人たちも特に不審に思うことも無く、私に手を振ってくれています。いやー皆さん優しいですね。食料の無い人たちにおすそ分けしてあげるなんて、仲間思いなのですね。


 お城を出て、街の外まで出ると、後は手加減は不要ですね。思いっきりジャーーンプ。


 ふふふ。さすがにジャンプは早いですね。ちょっと森林破壊してしまっていますが、あたり一面、森林だから良いですよね? さて、建物に直接行ってしまうと、何かと壊してしまいそうなので手前の森に直地して、そこからは走って行きます。まぁ手加減していないので、自分でもびっくりのとんでもない速度ですが、はい。到着です。とりあえず、二人を出してあげてっと。


 ふふふ。また、驚いていますよ。一度経験したのにね。さぁさぁ。食べ物を持って行ってあげましょう。私は子供に抱っこされながら建物に連れて行ってもらいました。

 他の人たちも親子に続いて建物内を移動していきます。なんだかアリの行列のようになっていますが、皆さんと一緒に大きな部屋に入りました。うーーん。何も置いていない、だだっ広い部屋ですよ。ん? 子供が何か言っています…うん。分かりません。分かりませんが、分かりましたよ。ここに食料を出してほしいのですね。はいはい。どうぞーー!!


 親子も、ここの人たちも嬉しそうで大はしゃぎしています。皆さん、良かったですね。お腹が空くのは辛いですからね!




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 魔王軍幹部 リンベル将軍視点


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 んな!! 巨大な火炎魔術と思える火の玉がこっちに向かってくるのが見えた。

 マズイ。あの規模の魔術が直撃すると、間違いなく砦の者たちに多くの死傷者が出る。

 本来であれば、私が魔術で相殺するところであるが、勇者に斬られたことで大量に魔素を失ってしまったのだ。

 それは魔王様も同じだ。今の時点では、二人ともあの規模の魔術を相殺出来るほどの魔術を放つことが出来ない。


 どうする。砦を守っている連中ではあの魔術を凌げない者も多く居る。

 ……私がやるしかないか!

 魔力は、それほど残って居ない。魔術は無理だ。そうなると、この体で止めるしかない。

 魔王様、後はよろしくお願いします!


 私は、砦を飛び出し、向かってくる巨大な魔術に向かって走り出した。


 ほぅ!? 私の後ろからピンクの物体が追い抜いていく。

 ぅが!! それが、私や砦から少し離れたと思ったら更に加速を開始した!


 私を追い抜いた程度は、まだ全然加減している状態なのだと分かる加速っぷりだ。

 早いなんてものでは無い。弓矢から放たれた矢にも簡単に追いつくことが出来るのだろうな。


 私も、いつの間にか走ることをやめて、ピンクの高速物体を眺めてしまっていた。

 し、しかし大丈夫なのか? あの角ウサギが強いとは分かっているが、生身であれを止めるのはさすがに厳しいぞ

 受け流して、砦の被害……と言うか魔王様に当たるのを阻止しているだけなのかもしれないが、とにかく軌道を逸らすのかもしれないな。


 はっはは。私は、もう本当にあの角ウサギの事を信用しているんだな。絶対に魔王様のことを守ってくれると思ってしまっている。


 その角ウサギは、とてつもない速度で火炎魔術に向かっていったと思ったら……


「あっがぁーー!?」


 あ、あの角ウサギ。巨大な火炎魔術を蹴り返したぞ!? そんな馬鹿な! 何をどうやったら、あの規模の魔術を蹴り返せるんだ?

 少なくとも、あの魔術は一人の魔術師ではなく複数人で施した魔術だろうけど、それを一匹のしかも角ウサギが蹴り返すなどありえない。


 もう、あの角ウサギは何でもアリだな。




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 ウサギの花子視点


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 いやー。食べましたよ!私の体は小さいので、それほど多くは食べれませんが、もうお腹いっぱいです。今日はどうやら、こちらの建物で泊まるようですね。もうね、なんとなく分かって来ましたよ。おそらく両方とも自分の家なのですね。たぶん、この子は王子様とかでは無いでしょか? そして母親が女王様とかですかね。とにかく、この二人は偉い人達なんだと思いますね。


 そしてこっちの小さいお城は何て言うのか支店みたいな感じ? で、本店が先ほど居た大きなお城です。うん、私の名推理は当たっていると思います。


 ご飯も食べてまったりしていると、誰かが呼びに来たようです。うん? メイドさんのような人たちが何やら用意をし始めましたよ。何をしているのでしょうね?


 お! お風呂ですか。こっちの世界にもお風呂文化があったのですね。それは嬉しいです。昔の西洋では、お風呂に入る習慣はなく、水浴びとか体を拭くだけって聞いたことがあるけど、ここは大丈夫のようです。私も子供の頭の上にのせられて、連れていかれます。ほほう! 地下にあるのですね。


 おーー、ここはローマですか!? 大きな大浴場がありますよ。

 ほうほう。この世界ではちゃんと男女別になっているのか入り口が二つに分かれているようです。


 ん? どうやら私は子供と一緒に入るようですね。

 まぁ私はウサギだし、一緒に入るのは男の子といっても小さな子供です。

 問題ないでしょう。


 お、脱衣所に鏡がありましたよ。

 おお、初めて自分の姿を見ました。たしかにピンクで可愛いことは可愛いです。ただ、やはり魔獣ですね。そして思ったよりも私は子供のウサギのような気がします。前世の記憶からの想像ですが、これは子ウサギってところですね。角ありますけど。


 あ、子供も服を脱ぎ終わったようで抱っこして浴室に連れて行ってくれます。はい。大丈夫ですよ。ちゃんとデリカシーも弁えていますから、あまり色々な所は見ないようにしますね。


 ふふふ。石鹸で泡をたくさん作ってくれて体を洗ってくれます。きっとワンコとかも人に体を洗ってもらうとこんな感じなのですかね。少しゾワゾワしますよ。


 うーーん。シャワーですか。これも何だかゾワゾワしますが我慢です!


 お、子供も自分の体を洗い終えましたね。ではいよいよお風呂に浸かれますね。

 子供に抱っこしてもらって、いざ入浴です!!


 ふーー。気持ちいです。ウサギ人生は始まったばかりでしたが、なかなか濃厚な一日でしたねぇ。


 ん、ん?? なんだか、すっごくゾワゾワ、ゾワゾワします!!


 っあ!!!




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 魔王軍幹部 リンベル将軍視点


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 今日は、とんでもなく疲れた。

 魔王様も明らかに疲労の色が、お顔に出ていた。とにかくお風呂に浸かって体の疲れを取らないとな。メイドたちの準備が終わったようなので、お風呂に移動する。……するのは良いですが、魔王様? 角ウサギも連れて行くのですか? さすがに魔獣がお風呂に入ることは無いと思いますよ。


 あ、角ウサギ、お前も躊躇なく一緒に行くのか? 角ウサギが風呂好きとは思わなかったな。これは新しい発見だろうけど。あぁ分かっているさ。このピンクの角ウサギは特別なんだろうな。肉は食べるし、めちゃくちゃ強いし、不可思議な魔術で物を運べるし、いや、物だけではなく私たちまで運べるからすごいな。これを戦略に使ったら大変なことになるな。ある日突然、背後に大軍勢が発生するなんて敵からしたら悪夢としか言いようがないな。


 それに、ずいぶんと賢いよな。言葉が通じているか怪しいが、身振り手振りで意思疎通は出来そうだ。おそらく今から風呂に行くと言う事も理解していそうだな。あ、余計なことを考えているうちの風呂の入口を通過してしまった。あぁ、魔王様に角ウサギを洗わせることになってしまうが良いのか? まぁ今更か!


 あぁぁ、いい湯だ。ちょっと熱いぐらいだが、疲れた体にしみるよ。


「どわぁぁ! リンベル! リンベル!! ちょっ、大変だ!!」


「プイ、ッププウプー!!」


 何だ! 浴室は男女で仕切りがあるが、天井付近は湯気がたまりすぎないように隙間が空いているのだが、そこから男湯に居る魔王様の声、いや叫び声が聞こえて来た。さらに角ウサギも叫んでいる。これはただ事ではない。!!


 天井付近の隙間はとても通れる大きさではないため、私は浴室を飛び出し、タオルを体に巻き付け、剣を取ると、そのまま男湯へと踏み込んだ。


「んな!? だ、誰だ。お前は!! 魔王様無事ですか?」


 何と、男湯に居たのは魔王様と見知らぬ獣人の女だった。


 ん? 角ウサギは何処に? 勝手に期待しているが、魔王様に何かあれば角ウサギが守ってくれそうな気がしていたのだが……居ない?? あの角ウサギが、魔王様を放っておいて逃げるとは思えないし……ま、まさか!? この獣人、耳が少し長いな!


「ま、魔王様。まさか、この獣人は角ウサギですか?」


「リンベル。俺はこの獣人の体を洗って混浴までしてしまったぞ。おまけに色々と見てしまったが!?」


「まぁ、それは不可抗力でしょうが……まさか、角ウサギが獣人化するとは思いませんでした」


「プウ、プイプイ!!」


 あ、何か怒っているな。言葉は分からんが、わかるぞ、傍に合ったタオルを角ウサギに渡して上げる。


「あー、魔王様。とにかく抱っこしたままでは、まずいのではないでしょうか?」


「うぉお!! そうだった。す、すまん。角ウサギよ。あまりにびっくりしたから、つい抱きしめてしまった」


「プ、プイイプ」


「そうか、分かってくれるか」


「ところで、お前に名前は無いのか? いつも角ウサギでは呼びにくいのだ。え、好きに付けろって?  うーん、そうだな、ピンク色だからピンキーで良いか? そうか、それではピンキーにしよう」


「あ、あの魔王様、だから、その姿は何かとマズいような気がしますから、一旦離れてですね。って言うか言葉が通じているんですか? そ、そのピンキーと?」


「おお、いつの間にか何を言っているのか理解できるようになったぞ。あ、そうだった。とにかく俺は背を向けておくので、ピンキーはリンベルと共に女湯に移動してくれ。リンベル後は頼むぞ」


 魔王様は、そう言うと私たちに背を向けた。と、とりあえずピンキーを連れていくしかないな。


「ピンキー、それでは、付いて来てくれるか? 女湯に移動しよう」


 脱衣所に連れて行くと、角ウサギの体を拭くために用意しておいたタオルをピンキーの体に巻き付けて女湯へと連れて行った。



 はぁ、今日は、とんでもなく疲れた。

 魔王様も明らかに疲労の色が、お顔に出ている。お風呂に入ったら、疲れが取れるどころか、なぜか余計に疲れた。とにかく、ピンキーを連れて女湯に戻ると、ピンキーは獣人姿で、脱衣所にある鏡を興味深そうに眺めていた。さすがに鏡は知らないのかもな。


 結局、私とピンキーの間は会話が成り立たないが、見た目はピンキーは魔王様と同じぐらいの年齢に見える。そのお陰で私が世話をしなくても自分で体を拭いたりできるようだ。で、何故角ウサギが獣人化するるのだ? ワーウルフならわかるぞ。奴らは獣人化出来る種族なのだ。しかし、角ウサギが獣人化できるなど聞いたことも無い。


 いや、もう良いか。このピンキーはやはり特別なのだろう。普通の角ウサギとは全く別の生き物と思った方が良さそうだ。


「はぁ??」


 自分の服を着て後ろを振り向くと、またピンクの角ウサギが居た。

 ま、まさか、ピンキーは、お湯に触れると獣人化するのか?


 自分の服が濡れることも忘れて、再びピンキーをお湯に入れてみる。

 お、おお!! なるほど獣人化の条件が分かったぞ。いや、分かったが、理由は分からん。

 もう、疲れた。


「プ、プイーププイイプ!!」


 あぁー何やらピンキーに怒られた。いや、そりゃせっかく体拭いたのに、またお湯に入れられたら怒るか!?


「プーイップイプ?」


「ああ。そうだ。お前はお湯につかると獣人化するようだぞ。どの程度浸かれば獣人化するかは調べないと分からんがな」


 うーん。通じていないと思うけど、まぁ良いか。


 魔王様に獣人化の条件をお伝えすると、また大騒ぎになってしまった。


 魔王様が言うには、ある程度自由に獣人化出来るんのであれば、それは獣人や魔人と変わらない。

 はぁ、そうなりますかね。


 魔王様が言うには、未婚女性の全裸を見て抱きしめてしまった以上、責任を取らないと行けない。

 まぁ、それは少し大げさな気もしますが、魔王と言う立場では示しがつかないですね。


 だから、ピンキーと結婚すると!! はぁぁ??


 いやいや。魔王と言う立場の人が、いきなりそんなことを決めていいのかとも思ったが。考えようによっては、意外とちょうど良いのかも知れない。と言うのも生き残っている魔人族は少なく、ましてや魔王様の歳に近い女性となると、さらに少ないのが現実なのだ。

 実際、幹部も女性は私しかいない。もちろん、私では年齢差がありすぎて釣り合わないと言うのは理解しているぞ。


 魔王様の近くに、ちょうど良い相手が居ないからと言って、じゃあ街の中から探すとしてもだ。魔王様は忙しいのに、町娘たちと片っ端から会って頂くわけにもいかないのだ。ましてや、よからぬ奴が紛れ込んでいては困るしな。

 じゃあ、魔人族は諦めて獣人族から探すといっても、これもまた、難しい。獣人族は種族を重んじる者が多いから、たとえ相手が魔王様だと言っても、色よい返事はもらえないと思った方が良いのだ。

 まさか、婚約を命令で強要するわけにもいかないからな。


 そう考えると、ピンキーはちょうど良いのかも知れないな。魔獣か獣人か微妙なところではあるが、魔の者であることは間違いない。獣人化したときに分かったが、年齢も魔王様と釣り合いそうだから、これも問題ない。おそらく、ピンキーは種族を気にしないのではとも思う。本当に角ウサギなのか、少し怪しいけどな。

 ピンク色だし。


 それでは、と言うことで、肝心のピンキーの気持ちを聞いてもらうと、ピンキーも問題無いそうだ。ピンキーは自分の年齢を勘違いしていたそうだが、獣人化した自分の姿から、魔王様と同じ歳ぐらいと理解したらしい。って魔王様、そんなに複雑な内容が、あの「プイ」で分かるのですか??

 私には魔王様も分からない存在になってきましたが!


 来月、剣の勇者を倒したことを公表し、合わせて魔王様の婚約を発表する! と決定された。


 ほんと、剣の勇者の事を忘れるぐらい濃厚な一日だったな。

 あ、アズガバン砦の事を忘れていた。あぁぁ、あっちも助けに行かないとなー。

 でも今日は、もう駄目だ。

 明日は行こう。


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 ピンキー視点


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 ったく! あの人たち、余計な機能を付けてから!! そんな機能がついているなら、付いているってメモに書いといてくださいよ。すっごい焦りましたよ。お風呂に浸かってゾワゾワするなって思ったら、急に人の姿に近い獣人とやらになるのですから、そりゃ驚きますよね。


 でも、まぁ獣人化することで私の年齢が、あの少年と同じぐらいだと分かりましたよ。ずっと、あの少年の事を子供だと思っていましたが、どうやら私も彼と同じ歳ぐらいだったのですね。


 そうそう。名前を聞かれましたが、本名を名乗るのはやめました。なんだか、山由花子は人間でしたが、今の私はウサギなんだから、いつまでも山由花子ではないような気がしたのです。


 だからと言って、何か自分で考えても良かったのですが、こっちの世界に合わない名前では、使いにくいだろうし、後々、自分で付けた名前が、こっちの世界の言葉的に変な意味があったら、嫌じゃないですか。例えば日本で「愚か者」とは「馬鹿」とかって名前は付けないですよね。

 私が適当に付けた名前がたまたま、こっちの世界では、その手の悪い意味を持った意味を持っているかもしれないから、迂闊にはつけれないのです。


 だから、この少年に付けてもらうことにしました。私が聞き取りにくい名前で無ければ大丈夫でしょう。まぁウサギだから聞き取れるとは思いますけどね。


 それで付けてもらった名前は「ピンキー」のようです。ほうほう。ピンク色から取ったのですね。

はい。私って分かりやすいので、それで良いですよ。


 そんなことを話していたら、今度はいきなり、婚約しようと言われてしまいました。

まぁ私も、心の中では人間に近い存在に感じているので、本当の魔獣と結婚できるのか言わると、違う感じがするのですよね。それに魔獣とも言葉が通じ無さそうな気がしましね。

 だから結婚するなら、人間に近い姿した人が良いと思いました。それに少年は顔も姿も整っていますし、交際はわずか一日ですが、私がピンクのウサギでも構わないと言ってくれるのなら、それも良いかなって思ったのです。そんなことを考えたら、その場でOKしてしまっていましたね。

 私も思いっきりが良くなったのですかね?


 ふふふ。死んだとおもったら、ウサギになって、今度は婚約ですか。


 ほんと、人生は何があるか分からないモノですね。あ、人生ではなくウサギ生??


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 このお話はこれだけでも異世界転生チートを楽しめるハイ・ファンタジー短編だと思ったのですが、続きも予定されているのですね。恋愛物とのことですが、ドーンとクレーターを作ったり、敵を吹き飛ばしたり、攻撃魔…
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