プロローグ
ハレー彗星。
古来より災いの兆しとも呼ばれる箒星
プラズマとガスと塵の尾を広げ、七十六年ごとに一度だけ地球へと近づく流星。
その神々しい姿に人は畏敬と畏怖と感嘆の思いを抱く。
己が宇宙の一部であり、外には広大な空間が存在するのだ、自分は何と小さい存在なのか、と…。
そうして己の在り方を人々に平等に気づかせ、またその姿に人は変化の兆しを感じ取る。
西暦2061年。
彗星は地球の空に再びその姿を現した。
彗星は地球から僅か1500万キロという異例の近距離を飛び去り、数100万キロに及ぶ尾の中に呑まれた地球は何事も無かったようにそれを見送った。
新たなデータを手にして喜ぶ研究者達、彗星の話題に沸き騒ぐ民草、それは76年にたった一度きり訪れる大祭のようなものであった。
しかし、彗星が置き土産を残していったことに、この時は誰も気付いてはいなかった。
その事実はすぐに誰もが知ることとなる。
人々の中に身体に紋様が浮かび上がる者達が現れだしたのだ。
その部位は手の甲、額、胸や肩、模様や大きさも個々によって様々であった。
そして、これには大きな問題が伴った。
問題――紋様に秘められていた力。
ある者は火を操り、またある者は水を操り、そしてまたある者は雷を操った。
超能力者、魔法使い、いずれでもなく又そのどちらでもあった。
それまであった人の力を上回る能力に全ての人間は驚愕し、戸惑い、恐れた。
初めに紋様を持った者は数少なかったが、それでも、それまでの世の理を覆すには十分過ぎた。
そして、その力を正しく利用しようとする者、悪用する者、あらゆる思いが交錯し、ここから世界は大きくその姿を変えていく。
紋様は紋章と呼ばれ、その紋章を持つ者達を人々はこう呼んだ。
『ハレーズ・チルドレン』
そして、それから66年の時が過ぎる。
これは、そんな時代の物語。




