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第2話 エレメンツとギア

「メタロイドだ!」

「うわあー!」

「きゃー!」

「逃げろー、逃げろー!」


瞬く間に、アウトレットモールは混乱の渦へと変わった。

突然現れたメタロイドたちは、次々と人を襲っていく。

あちこちで叫び声が響き渡り、人々が逃げ惑う。


「ちょちょちょ……ちょまっ……」


優斗は、目の前で起きていることを認識するのに精一杯であった。

メタロイドの攻撃は、人間をまるで豆腐やバターかの様に切り裂いていた。

戦闘用の機械から見れば、人間など紙クズ同然だろう。

そして無惨に引き裂かれた身体が、地面に転がり散らばっていく。


——マジかよ、これマジかよ⁉︎


何かを深く考える余裕などなかった。

もたもたしていたら、自分も八つ裂きにされるのは明白だった。


——に、逃げなきゃ。とにかく、ここから逃げなきゃ!


優斗は恐怖ですくむ身体を何とか動かし、走り出す。

ただ、この場から安全に逃げることだけを考えていた。


——ヤバいヤバいヤバい! 


鼓動は高鳴り、耳の奥で大きな音を立てている。

そして優斗は、映画館のある建物の方へと走った。


——とにかく、身を隠せる場所を探すんだ!


それから急いで中に駆け込むと、隠れられそうな場所を探した。

建物内にメタロイドがいる気配はまだなかった。

呼吸は荒くなり、心拍数は高まっていた。


「落ち着け、落ち着け……」


パニックにならない様に、自分に言い聞かせる。

呼吸を整えようと努めていた。

建物には映画館の他にも、ゲームセンターやUFOキャッチャーなどの娯楽施設も入っていた。


——ゲームセンターは、比較的に照明が暗い。それに沢山のゲーム機も並んでいるから物陰も多いな。


身を隠すのには都合が良さそうであった。


「よし」


優斗は走りながら、ゲームセンターに入って行った。

そして、アーケードゲームの機械の物陰に身を潜めた。


——ここに隠れて、救助を待つんだ。


◇◇◇


管制室に警報音が鳴り響いた。


「メタロイド発生確認。メタロイド発生確認」


無数のモニターが光に照らされ、オペレーターたちは次々と状況報告を行なっていく。


「メタロイドが多数出現との報告あり。被害状況不明」

「施設内監視カメラの映像、および通信衛星の映像から解析。出現したのは中型のアサルトメタロイドだと思われます」


管制室の巨大なメインスクリーンには、アウトレットモールの映像が映し出された。

その画面上では、空間転移により湧き出てきた機械生命体が、次々と人を襲っていた。

すると、指揮官の声が響く。


「エレメンツ出撃準備。警察に機動隊による応援と、該当エリア周辺道路の封鎖を要請しろ」


指揮官は状況を見て、素早く指示を出していった。


「メタロイドの掃討を目標とする。被害拡大を阻止せよ」


オペレーターたちは迅速に指示に従い、情報を処理して伝達していった。




『待機しているエレメンツは準備を整えて、至急ドックに集まってください』


保管室の壁に設置されたディスプレイには、音声と共に出撃命令が表示されていた。


「はいはい、了解しましたよと」


そう言いながら彼女は、その長い髪を束ねる。

身体にはボディラインにピッタリと沿ったスーツを着ていた。


それから彼女は、保管室に備え付けられたID認証装置の前に立つ。

装置は光沢のある黒いパネルでできており、そこには青白い光のラインが縦に走っている。

そのラインは彼女の接近を感知し、微かに脈打つように光を放った。


そして彼女は、手をパネルにかざした。

パネルは手のひらの形を正確に読み取り、瞬時に認証プロセスが開始される。

青白い光が手のひらのラインに沿って走り、次第に明るさを増していく。


『認証完了。エレメンツ正規隊員、天羽光希。ギアへのアクセスを許可します』


制御システムの声が響くと同時に、装置が動き出して扉が開く。

そして、中から彼女のギアが姿を現す。

光希はギアを手に取ると、自身の身体へと装着した。


ギアそれ自体は、小型軽量でシンプルなつくりである。

丁度ベスト型のサポーターの様な形状で、所々に淡く光るラインや点がある。

これを胴体に着ければ、自動的に着用者の体型にフィットして固定されるのだった。




出撃ドックは、高い天井と広々とした空間を持っていた。

何機もの特殊航空機が整然と配置されている。

その周りでは、沢山の作業員たちが忙しなく動き回っていた。


その中で、ギアを装着した光希は悠然と歩みを進める。

すると、管制室からの通信音声が聞こえてくる。

送受信を行なっているのは、頭部に装着された無線機である。


「メタロイドの発生場所は、駅と直結した大型の商業施設エリアだ。すでにかなりの犠牲者が出ている。速やかに敵を排除しろ」

「了解」


そして明里は、ギアを起動させた。

身体と機械が同調し、共鳴する感覚が広がる。

すると、淡く光を放ちながら、ギアが急速に変形を始めていく。

ギアは装着した者の個性や能力に応じて、独自の形態へと変化を遂げる。

優れたナノテクノロジーによって、装備が分子レベルで再構成され、最適な形状へと素早く変わるのだ。

そしてギアを使うことが出来るのは、特殊な力に目覚めた者たち「エレメンツ」だけであった。


程なくして、光希の身体には変形を完了したギアが装備されていた。

各部には装甲としてのプロテクター、背中には飛行ユニット、手には特殊な形状のランスが握られている。


「さて、じゃ行きますか」


◇◇◇


ゲームセンターの中には、カーレースやシューティングなど、様々な種類のアーケードゲームの機械が並んでいた。

プリクラの撮影機も沢山あった。

薄暗い室内には、騒々しいゲームの音がそこら中で鳴り響いている。


ふと気づくと、ゲームセンターに人影が入って来ているのが見えた。

どうやら人影は親子連れで、母親とその小さな娘の様である。


——俺と同じ様に、どこか隠れる場所を探すために来たんだな。


とその時、同時にある光景が目に入った。


「あれは……」


その親子の後方から、メタロイドが迫って来ているのが見えたのであった。

優斗は息をのんだ。

まだ親子はそれに気づいていなかった。

事もあろうに機械の怪物は、獲物を狙う肉食獣の如く、気配を殺しながら静かに近づいて来ているのだった。

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