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第2話 劉備に会う

孫悟空が首輪を壊そうとしていたその瞬間、一群の人々が黄巾賊に引きずられてきた。人々を連れていた黄巾賊の中で特に体格が大きな男が、大きな刀を抜いて人々を脅していた。


「早く動け!逃げようとするやつはいないだろうな?少しでも変な動きをしたら首を斬るぞ!」


男はわざと大きな刀を見せつけながら弄り、捕まった人々は震えながら顔を上げることさえできなかった。


孫悟空は特に気に留めずその人々を見ていたが、群れの中にいる一人の男を見て驚いた。


七尺半ばかりの背丈に肩に届きそうな耳、そして膝まで垂れた腕。


特異な外見でもあったが、孫悟空が驚いたのは別の理由だった。


「三蔵?三蔵がここにいるのか?」


孫悟空は即座に首輪を握りしめ、壊してしまった。


-クラッ!


人々は孫悟空の怪力に驚いて後ずさった。


「怪物猿だ!」


「早く首を斬れ!」


黄巾賊の一人が大きな斧を取り出し、孫悟空の首に向かって振り下ろした。


「ふん!」


孫悟空は避けずにそのまま斧を受けた。


-カーン!


斧を振り下ろした男は、すぐに斧を地面に落とし、手首を押さえて悲鳴を上げた。


「くそっ!まるで岩を叩いたみたいだ!」


孫悟空はにやりと笑った後、大きな耳の男に跳びかかった。孫悟空が人々の群れの中に飛び込むと、皆が金色の猿を呆然と見つめた。


孫悟空は大きな耳の男の顔をじっと見つめながら言った。


「三蔵!俺だ、孫悟空だ。」


孫悟空の言葉に大きな耳の男は飛び上がりながら叫んだ。


「うわっ!喋る猿だ!」


孫悟空が顔をしかめて何か言おうとしたその時、さっき見た大きな刀を持った黄巾賊が怒りながら駆け寄ってきた。


「この妖怪め、ここがどこだと思っているんだ!」


彼は大きな刀を高く持ち上げ、孫悟空に振り下ろそうとした。


孫悟空が赤い目と金色の瞳で睨みつけると、その黄巾賊の体がそのまま硬直した。


「うっ?このっ!」


突然体が硬直した黄巾賊は、歯を食いしばって動こうとしたが、指一本動かすこともできなかった。


「この妖怪が、何の術を…!」


孫悟空はにやりと笑いながら言った。


「大妖怪・斉天大聖が使う定身法という術だ。光栄に思って大人しくしていろ。」


孫悟空は刀を持った男を無視して、大きな耳の男をじっくりと観察しながら首をかしげた。


「ふむ、どう見ても三蔵だけど…江流や伝檀功徳仏も知らないのか?」


大きな耳の男は困惑した様子で言った。


「知、知らん!俺は幽州・涿郡・涿県の劉備玄徳という者だ!」


「なんだって?劉備だと?」


孫悟空は驚いて体を飛ばしてその場を離れた。


『しまった。三蔵に似すぎてよく見てなかった。大きな耳に長い腕…三国志に出てくる描写そのままだ。』


孫悟空はさっき観音菩薩が言った話を思い出した。


『…元の歴史をできるだけ変えないようにって言ってたな。今はとりあえず退避しよう。』


孫悟空は急いで無影術を使って気配を消し、小さな木に変身して状況を見守った。


孫悟空が木に変身すると、定身法が解けた。体が自由になった大柄な黄巾賊は周りを見回しながら孫悟空を探した。


「くそっ!この厄介な猿め、どこへ逃げたんだ?」


怒り狂った男は息を荒らしながら孫悟空を探したが、見つからないとすぐに八つ当たりする相手を探した。


「おい!そこのお前!」


劉備はびっくりして自分を指さした。


「俺か?」


「そうだ、お前だ!さっきの猿と何の関係があるんだ?」


「俺はあの喋る猿とは何の関係もない!」


しかし男は聞く耳を持たず、劉備に近づいて襟首をつかみながら言った。


「嘘をつくな!さっきあの猿がお前に話しかけているのを見たんだぞ、どこでしらばっくれるんだ!」


「うっ!それは…あの猿が人違いしたんだろう…」


「うるさい!生きたければあの汚い猿を俺の前に連れてこい、今すぐだ!」


孫悟空が変身した木の枝が少し揺れた。


『汚い猿だと?黄金色の猿だろうが!』


汚いか黄金色かはともかく、劉備は震えながらどうすればいいのか分からずにいた。孫悟空はその様子を見ながら思った。


『これは倭国で書かれた本の通りのようだな…俺が本で読んだ通りなら、このあたりで張飛が現れて三蔵、いや、劉備を助けてくれるはずだ。』


しかし、いくら待っても張飛は現れなかった。


『ちょっと遅いな…』


その間、怒り狂った黄巾賊は刀を劉備の首に押し付けながら唸るように言った。


「最後にチャンスをやる。三つ数える間にあの猿を連れてこい。さもなくば、お前の首はもう体についていないぞ。」


劉備は驚いて叫んだ。


「そ、それは無理だ!」


「…一つ。」


男は劉備の首から刀を離し、数を数え始めた。


「わ、分かった!今すぐあの猿を連れてくる。少しだけ時間を…」


「二つ。」


男は口元に残酷な笑みを浮かべながら刀を高く持ち上げた。


その姿を見ていた孫悟空も当惑した。


『何だ、張飛はまだか?』


「三つ!」


男は三つを数えると同時に、劉備の首に向かって全力で刀を振り下ろし、劉備は手を前に出しながら悲鳴を上げた。


「うわあ!助けて!」


-カーン!


金属がぶつかる音とともに、劉備の目の前に金髪の男が現れた。


八尺を超える大きな背丈に少しカールがかかった金髪、白い肌、金色の瞳。


彼は両端に金の縁が施された黒金(こっきん、銅に1〜10%の金を混ぜた合金)製の黒い棒を持って黄巾賊の刀を受け止めていた。その棒の一端には「如意金箍棒、13500斤」という文字が刻まれていた。さらに、彼の頭には輝く金の輪が嵌められていた。


金髪の男は安堵のため息をついた。


「ふう、危なかった。」


彼は後ろを振り返って言った。


「三蔵、いや玄徳!大丈夫か?」


劉備は困惑しながらうなずき、金髪の男はにやりと笑って言った。


「まあ、挨拶は後にしよう。」


金髪の男は刀を持った黄巾賊をちらりと見て、黄巾賊は顔をしかめて言った。


「今日は変な奴が多いな。金髪だと?西域から来たのか?」


金髪の男は笑いながら言った。


「ハハッ!西域から来たと言っても間違いではないな。急いで変身術を使ったせいで、見た目がちょっと雑だが。」


黄巾賊は刀を持ち直しながら言った。


「すぐに死ぬ奴が笑わせる。お前は何者だ?」


「うーん、俺の名前は…そうだな、張飛益徳だ。」


‘実は斉天大聖であり、闘戦勝仏の孫悟空だけどな。’


「どこの野良犬だ?」


孫悟空は頭を掻きながら言った。


「うーん、たぶん幽州涿郡から来たと思うけど。」


「…自分の出身もわからないのか。まあいい、お前は運が悪かったな。」


黄巾賊は巨大な刀を振り回しながら言った。


「俺は唐周だ。天公将軍張角の一番弟子で…」


-バキッ!


孫悟空は躊躇なく如意棒で唐周の頭を叩き潰した。


黒い髪と白い頭蓋骨の破片、ピンク色の脳みそと赤い血が四方に飛び散った。


「へっ!生意気な人間め。閻魔大王の前でもそんな態度を取れるか見てみたいものだ。ところで唐周って、どこかで聞いた名前だな…」


孫悟空はしばらく考えてから首を振った。


‘まあいいや。三国志を何度も読んだ俺が覚えてないんだから、ただの雑魚だったんだろう。’


孫悟空は如意棒を振って破片を払い落とし、黄巾賊たちを見回した。


黄巾賊たちは一瞬驚いたが、すぐに怒りの表情を浮かべて孫悟空を睨んだ。


「こいつが唐周様を!」


「くそっ!このままでは全員責任を取られて張角様に殺されるかもしれない!」


「この張飛って奴の首を持っていって事情を説明するしかない!」


黄巾賊たちは皆、刀や槍などの武器を取り出し孫悟空に向かって近づいてきた。


黄巾賊に捕まった人々は皆震え上がったが、孫悟空は口元を歪めて笑みを浮かべるだけだった。


「へっ!この大妖怪斉天大聖様の前で武器を抜くとは、死にたいらしいな…あ、そうだ。」


孫悟空はちらりと劉備を見た。


‘性格まで三蔵と同じだったら困るな…また殺すことなく助けたのに文句を言われたらどうしよう?三蔵なら絶対にそうするだろう。’


少し悩んだ後、孫悟空は黄巾賊たちに言った。


「おい、俺を殺した後、ここに捕まった人たちはどうするつもりだ?」


黄巾賊たちは互いに顔を見合わせてから言った。


「まあ、どうせ物を全部奪って殺すつもりだったんだ。奴隷として売るには船が足りないからな。」


人々は黄巾賊の言葉を聞いて青ざめ、震えた。中には涙を流して泣く者もいた。しかし、すぐに人々の恐怖は怒りに変わった。


「この野郎!俺たちが何をしたって言うんだ!」


「この天下の悪党ども!」


しかし黄巾賊たちは目もくれず、武器を突きつけて言った。


「力もないくせに大口を叩くな。嫌ならかかってこい。」


閃く武器の前に、人々の声はすぐに消えた。その様子を見た孫悟空はにやりと笑って劉備に言った。


「おい、玄徳公。」


「な、なんだ?」


「あの黄巾賊どもをどうする?生かして帰すか、それとも全部殺すか?」


劉備は首をかしげて言った。


「いや、殺せるならなぜ生かして帰す必要がある?」


孫悟空は腰を折りながら笑った。


「ハハッ!いいね、三蔵より百倍はましだ。」


孫悟空は如意棒を握りしめ、黄巾賊たちを見回した。


「よし、死にたい奴からかかってこい。」


黄巾賊は孫悟空に向かって一歩一歩近づいたが、さっきの唐周の死を見ていたため、簡単には攻撃できなかった。すると孫悟空はにやりと笑い、先に黄巾賊の群れに飛び込んでいき、まるで神がかりのように如意棒を振り回した。


-ドカッ!バキッ!


1万斤を超える如意棒は黄巾賊たちの体を豆腐のように粉砕した。如意棒が頭を叩けばピンク色の脳みそが四方に飛び散り、上半身を叩けば肺を含む内臓や背骨がまるで麺のように引き出された。


「えい!」


一人の黄巾賊が孫悟空の頭に槍を突き刺した。


-バキン!


「うぐっ!」


しかし、孫悟空の頭を突いた槍は柄が折れて地面に落ちた。孫悟空はくすくす笑って言った。


「ハハッ!なかなかの腕前だ。しかしこの俺の体は石より硬いのだ。」


孫悟空は黄巾賊たちを見回してにやりと笑った。さっき殺された人たちの血が孫悟空の顔からぽたぽたと落ちていた。


「こ、こいつは化け物だ!」


黄巾賊たちはそんな孫悟空の姿を見て恐怖に青ざめ、武器を捨てて逃げ出した。


孫悟空は微笑んで逃げていく黄巾賊たちの後ろ姿を見守った。


「ふん!俺が仏じゃなければ追いかけて全部殺してやったのに。運が良かったな。」


孫悟空は得意げに微笑みながら劉備に近づいた。


「さて、玄徳公。これで黄巾賊を追い払ったから、家に帰りましょう。」


劉備は驚いて口をぽかんと開けたまま孫悟空の顔を見つめてから首を振って言った。


「その…張飛益徳と言ったな?」


孫悟空はうなずいた。


「まあ、一応な。」


劉備は少し悩んでから言った。


「せっかく助けてくれたのだから、最後までお願いできないだろうか?」


孫悟空は首をかしげて言った。


「どういうことだ?」


劉備は唾を飲み込んで言った。


「実はさっき黄巾賊に刀を奪われたのだが、それを取り戻したい。」


孫悟空は呆れたように言った。


「いや、命がかかっているのにその刀がそんなに大事なのか?」


劉備は真剣な顔で首を振って言った。


「その刀はただの刀ではない。」


孫悟空は目を細めて考えた。


『まさか、妖力が宿った物か?何か重要な宝物かもしれないな…。』


孫悟空は劉備に尋ねた。


「それで、その刀はどんな刀なんだ?どんな強力な力を持っているんだ?」


劉備は真剣な顔で答えた。


「先祖代々受け継がれてきた家宝だ。」


「…何だって?家宝?」


孫悟空は呆れたように言った。


「つまり、ただの普通の刀ってことか?はあ…とにかく、早く行こう。すぐに他の黄巾賊が来るかもしれないんだぞ!」


劉備は断固として首を振った。


「死んでも先祖代々の家宝を置いていくわけにはいかん!」


孫悟空は痛みでズキズキする頭を押さえた。


『やれやれ、やっぱり三蔵と同じタイプか。単に仏教の頑固者が儒教の頑固者に変わっただけじゃないか。』


孫悟空は深くため息をつき、劉備の手首をつかんだ。無理にでも連れて行くつもりだった。


「いいか、その刀一本くらい、俺が宮廷に忍び込んで十本でも盗んでやるよ。だから今はとにかく行こう。」


孫悟空が劉備の手を引っ張ると、劉備は驚いて言った。


「ちょっ!お、おい!何をするんだ!」


劉備は抵抗しようとしたが、力の差があまりにも大きく、無駄だった。


劉備は叫んだ。


「えい!この手を離せ!」


劉備の怒鳴り声が空気を伝わり、孫悟空の頭に巻かれた緊箍児に届いた。


-ウィーン…


「ん?」


孫悟空が戸惑いながら目を見開くと、緊箍児が急速に縮まり、孫悟空の頭を締め付けた。


「うああ!」


孫悟空は久しぶりに感じる痛みに頭を抱え、地面に倒れ込んだ。


劉備は慌てて孫悟空を見つめ、孫悟空は叫んだ。


「わかった!わかったよ!刀を見つけてやるから、もうやめてくれ!」


すると緊箍児が元のサイズに戻った。


「うう、痛い…」


孫悟空はしばらく頭を抱えたまましゃがんでいたが、ちらりと劉備を見た。劉備は何が起きたのか理解できない様子で孫悟空を見つめていた。


「くそ、今度は完全に自動で作動するように改造されてるじゃないか。」


孫悟空は歯を食いしばった。


『どうせ太上老君の仕業だろう。くそったれ、釈迦如来め…はあ。』


劉備はおどおどしながら言った。


「そ、それでは家宝を見つけてくれるのか?」


孫悟空は唇をきつく噛みしめながら答えた。


「そうだ、行くぞ。行くんだよ!くそっ、まったく!」


劉備は嬉しそうに笑顔を見せ、その姿を見た孫悟空は涙が出そうになるほど苛立ちを感じた。


『はあ…今回は何年かかるんだろうな…。』

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