表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

メシマズシリーズ

料理上手な夫とメシマズ妻の、ほのぼのご飯。2

 

 

 

 ────パァァァスタァ!

 

 それは、まるで絡み絡まり、一塊になった妖怪のごとく────。

 

「ちゃんと温かいうちにバターで解さなかったからだろ? オリーブオイルでもいいって前に言ったよな?」

「もぉ! 何でそういうツッコミ入れるかなぁ⁉」

  

 夫が予期せぬ残業になるときは、私が夜ご飯を作っている。共働きなのだが、なぜか! 夫がご飯係なのである。

 今日は部下が盛大なミスをしたらしく、夫も連帯責任で居残りしていたらしい。

 

 絡み合う妖怪ことパスタを、フォークからお皿へ、ベチョッと滑り落とした。

 

「ブフッ! 音が酷い!」

 

 夫がお腹を抱えて笑っているが、私は不機嫌の極みだ。

 頑張って作ったのに。

 麺を茹でて、パウチのミートソース温めただけだけど。

 

「何でチンしても解れないのぉ!」

「うんうん。帰宅に合わせて再加熱してくれたんだよね。ありがとうね」

 

 それより、ちょっと気になることが……と夫が言葉を濁しつつ聞いてきた。

 麺が微妙に茶色いのが気になるらしい。

 細かいこと気にするヤツだなぁ。

 

「ちゃんと味付けしたんだから、色付くでしょ」

「あ……じつけ? 麺、に?」

 

 何を驚いているのか分からない。あれか、私が味付けにこだわったりしたから、驚いているのかな?

 

「すみません、そこじゃありません」

「なぜに敬語⁉」

  

 料理した手順を説明しろと言われたので、覚えている限り話した。

 

「確か、お湯を沸かして」

「うんうん」

「塩をひとつまみ入れて」

「うん。まぁ少ないけど……うん」

「お砂糖とお醤油と──」

 

 指を折ながら思い出していたら、夫が手のひらを突き出してきた。

 

「砂糖と醤油入れたの⁉」

「入れたけど?」

「え、なんで『当たり前』的なアレなの⁉」

 

 夫が衝撃を受けたみたいな顔をしている。あいも変わらずオーバーリアクションな人だ。

 

「それでね、みりんはどうしようか悩んだんだけど」

「な、悩んだんだ?」

「みりんって、お酒でしょ?」

「分類的には……そうだね」

「だからね、棚にあった白ワイン入れといた」

「っ──⁉」

 

 夫が慌ててキッチンに走って行き、棚からワインを取り出して、あからさまにホッとしていた。

 

「どしたの?」

「いや、どんだけ使ったのかの確認をね……ちょっと高いやつだったんだよね。良かった、ほとんど減ってなかった」

 

 ボソボソと言っているから、換気扇の音であんまり良く聞こえなかった。

 夫がテーブルに戻って来て、絡み合う妖怪たちを食べ始めた。

 

「ん、なるほど。言われると、ふわりと醤油の風味がするね」

「美味しいでしょ?」

「うん。なぜか深みが生まれててびっくりだよ。美味しかったよ、作ってくれてありがと」


 よしよしと頭を撫でてくれたから、今日の暴言の数々と事情聴取も、まぁ許してやろう。

 あと手の込んだパスタは二度と作らないって決めた。

 

「まって、簡単なパスタも禁止にしたら、もう作れるものが──」

「簡単? 作れるものが?」

「あ……いえ、何でもないです」

「あーあー。今日は頑張ったしぃ、明日は生春巻き食べたいなぁ。海老たっぷりのやつー」

 

 プイッと顔を背けながらそう言うと、夫はクスクスと笑い出す。

 

「はいはい。明日は海老の生春巻きと、生ハムとかの洋風生春巻きもしようか。クリームチーズはあったかなぁーっと」

 

 お皿を洗って明日のご飯の準備。

 明日はきっと、美味しい美味しい生春巻きを、お腹いっぱい食べられるはずだ!

 頑張って料理したかいがあったなぁ。

 

 

 

 ─fin─

 

 

 

閲覧ありがとうございました!

他にも短編とうたくさんありますので、ぜひぜひマイページにぴょんとひとっ飛びしてみてくださいm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうしよう 絶妙にイラってくる 世の中のメシマズさんってほんとにこうなの…? 旦那さんまじでご愁傷さまです。愛ですね…
[一言] チャーハンと餃子と生春巻きのお話をプリ〜ず! 絶対に美味しいや〜つ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ