DISCOVERY
レビュー執筆日:2019/6/20
●「攻めた」楽曲を上手く織り込んだ、ある種のコンセプトアルバム。
【収録曲】
1.DISCOVERY
2.光の射す方へ
3.Prism
4.アンダーシャツ
5.ニシエヒガシエ
6.Simple
7.I'll be
8.#2601
9.ラララ
10.終わりなき旅
11.Image
『ニシエヒガシエ』や『光の射す方へ』等、実験的な楽曲をシングルとして出していた時期にリリースされたMr.Childrenのアルバム。(『終わりなき旅』のような分かりやすい楽曲もあるのですが、個人的には前者の二曲の方が当時の印象が強かったです)そんな楽曲が収録されているのだから、平凡な作品になるはずがありません。『光の射す方へ』は生楽器と打ち込みが絡み合うサウンドと予想外な所に予想外な音が差し込まれる構成が非常に面白い楽曲ですし、『ニシエヒガシエ』は全体的に不穏な空気が漂うハードなナンバーとなっています。アルバム曲に関しても、ギターのカッティングに乗せて攻撃的に歌う『アンダーシャツ』や約9分と長い演奏時間の中で次第に盛り上がっていく『I'll be』といったこれまでに無かったようなものが印象に残り、当時バンドとして大ヒットしていながらも「攻め」の姿勢を崩していなかった様子がうかがえます。
ここまで多彩な曲が収録されているとアルバムとしてのまとまりが薄くなってしまうように見えるかもしれません。確かに、それ以前の彼らのアルバムの中にはそうなってしまっているものもありましたが、今作に関して言えば、上手く曲順が工夫されており、そういう点は解消されていると言っていいでしょう。アルバムの前半においては、気怠げな感じが漂う『DISCOVERY』や前述の『アンダーシャツ』、『ニシエヒガシエ』のように負の感情が詰め込まれているような楽曲が多いのですが、後半に行くにつれて次第に明るい曲が多くなっていき、「日常的な風景をフォーキーに歌う『ラララ』」→「転調とストリングスを巧みに用いてドラマチックに綴る『終わりなき旅』に『Image』」という流れで締めるという構成は非常に良くできていると思います。言うなれば、「絶望に包まれていた旅人が旅を続けていくうちに希望を見つけていく(DISCOVERY)様を一枚のアルバムで描く」といった感じでしょうか。そういう意味では、コンセプトアルバムと呼ばれることの多い『深海』よりもアルバムとしてのコンセプトが分かりやすく表現されているのではないでしょうか。(本人達は別に意識していないかもしれませんが)
「シングル曲を作ってからそれに合うようにアルバムを作っていった」のか、「最初からアルバムを想定してシングル曲を作った」のかは分かりませんが、どちらにせよ「曲ごとのインパクト」と「アルバムとしての作品性」を上手く両立させた本作。『終わりなき旅』のような作風を想像して聞くと「攻めた」楽曲群に少し驚くかもしれませんが(まあ、『終わりなき旅』も10回近く転調しており、攻めていると言えなくもないのですが)、そういった「驚き」がこの時期のMr.Childrenのアルバムを聴くうえでの醍醐味と言えるかもしれません。
評価:★★★★★