女神様の日常編 第四話目
初めまして、私はエミリアといいます。
魔法という技術を専門にして戦う魔法使いで、冒険者としても活動しています。
主な仕事は魔物退治、採取、遺跡やダンジョンの調査などですね。
あとはまぁ一般人が街の外に出るのは危険ですから、護衛とかの仕事もたまにあります。
とはいえ、ここ最近『何故か』平和な日々が続いていますね。
魔物が襲ってくる頻度も減っていますし、最近は依頼もほとんどありません。
レイや他の仲間たちは元々平穏が好きなので、今の状況を好ましいと思っているようですが……。
悪いわけでは無いですが、何かこう、刺激が足りないというか……。
◆
「というわけで、刺激を作ってきました」
「いや、何がというわけなのかさっぱりなんだけど……」
やぁ、レイだよ。
一応この話の主人公だよ、影薄いけど。
1話以降、部屋に籠ってたエミリアが出てきたかと思えばこれだよ。
「で、刺激を作ってきたって何さ」
「はい、Lv3以下の魔物を増殖させる薬品を開発したので、試してみたくて……」
「えぇ……?」
相変わらず発想がぶっ飛び過ぎてるよ。
そもそもその薬って何なんだよ。
っていうかそんな簡単に作れるもんじゃないよね?
「そんなことないですよ。
スライムの核ってあるじゃないですか、あの丸っこい奴」
「ああ、あれか……。
スライムの真ん中あたりにあるプカプカ浮いてる奴だよね」
名前の通り、スライムという魔物を核を成している部位のものだ。
あれ自体が魔物らしくて、汚水に憑りつくとスライムが出来上がるらしい。
「あれの一部を採取して、別の薬と合成したら作れました」
「なんてモンを取ってきてんだよ」
スライムは汚水で出来てるだけあって汚い。
それを採取しようと思う人間なんて稀だろう。目の前にいるけど。
「で、それをどうするの?」
「魔物が少なくなってるっぽいので、ゴブリン辺りにぶっ掛けて増やそうかと」
「いや、誰得だよ!?」
そもそもゴブリンなんて人間とは絶対に共存できない害悪みたいな魔物だよ。村人の目の敵にされてるし、年間で冒険者が狩っている魔物でも最も数が多いって噂もある。
「ですが、このまま魔物が居ないと困りますよ」
「何が困るの?」
「冒険者の収入源が無くなります」
いや、確かにそうかもしれないけど……。
「で、私にアイデアが思い付いたんですよ」
「どんなのさ」
「まず、何処かの洞窟に行って、
残ってるゴブリンに薬品をぶっかけるじゃないですか」
「うん」
「そしたらあいつら繁殖力高いじゃないですか」
「うん」
「自分達で勝手に数増やしますから、
時期を見てゴブリンが繁殖し始めたことをギルドに報告します」
「……うん」
「そして、ギルドが用意した依頼を私達が受けて、1匹残して討伐します」
「……」
「そして、また薬で増やします。
こうすればずっと仕事は無くなりませんし、
私達は報酬も貰えて一石二鳥です!」
「却下だよ!!」
とんでもないマッチポンプだよ。
「というか、ゴブリンが居たら迷惑でしょ!?」
「大丈夫です。こんなこともあろうかと
『ゴブリンにしか効かない洗脳装置』を開発しました」
「そんなもん開発すんな!!」
「これを使えば、ゴブリンは一生住処から出られず、
討伐されるまで生きるだけの悲しい存在に生まれ変わります」
「エミリア天才か!……いや違うよ馬鹿!!!」
この子ヤバ過ぎる。もう何を言ってるか分からないレベルだよ。
「とにかくダメだからね。そんな危険な事、僕が許さないよ」
「えぇー」
「えぇーじゃないよ……」
こうして、僕が事前に止めることで近隣の平和は守られました。
平和を壊しそうなヒロイン