8話
翌日目を覚ますと窓から教会を見る。
「………。」
空には晴天が広がっているが、清々しい気持ちにはならなかった。
「おはようございます。ご気分はいかがでしょうか?」
「問題ない。サードは?」
「それが……。」
そう、昨日から帰ってきていないのだ。
やはり危険すぎたか……。
しかしポケットに入っている生死探知具である木の札は壊れていない。
それにほっとするのも束の間だった。
「メレク様!馬車に来てください!」
ドアを勢いよく開け、セカンドが叫ぶ。
直ぐに上着を着て外にある馬車へと向かった。
「………これは。」
「………。」
馬車の中にあった生死探知具が10個以上壊れていた。
近くに落ちていた生死探知具を拾い上げ、その番号を見ると『サード13号』と書かれている。
つまりサードの部下がどこかで死んでいた。
生死探知具を握ると立ち上がり、セカンドへ命令を出す。
「馬車を綺麗にしておけ。それとファースト。」
「はい。」
「サードを見つけるぞ。」
「仰せのままに。」
メレクがサードへ出した命令は1つ。
枢機卿の身辺調査だ。
ならばいる可能性が高いのは……。
メレクは教会を睨む。
空は晴天だったが少し遠くから雨雲が近づいていた。
「すみません。ここの所、教会内で問題など起こりましたか?」
「いえ?特に何も無いはずですが……。」
「ああ、そうですか。今日も一日良い日になりますよう。」
メレクは教会の門番へ聞きに行っていたが美味しい収穫は無かった。
「やはりメレク様。」
「ああ。ファーストは得意だったか?」
「いえ、あまり得意ではありません。」
「まぁ……大丈夫だろう。最悪の場合力でねじ伏せるぞ。」
夜になり、ファーストとメレクは黒い服を着て教会の裏にいた。
その腰には何時でも戦える様に剣をぶら下げていた。
「始めるぞ。恐らくサードがいる候補は地下だ。」
「ええ、あのサードが逃げられないとすれば地下しかありません。」
こう言ってもなんだがサードの逃走術は桁外れだ。
だからこそ地上ではない。
地上であれば窓や壁すらも突き破って脱出しているはずだ。
ならばそれが出来ない地下に限られる。
「行くぞ。」
昼間細工をしておいた窓から教会内に侵入する。
こういった建物は構造上四隅近くに階段がある事が多い。
「ここだ。」
少し探し回ると地下への階段があった。
慎重に階段を降りていくと門番である兵士が眠そうにしていた。
ファーストへ指を振ると一瞬で兵士を気絶させる。
物音1つたてずに気絶させる能力は流石の一言だった。
守っていたドアを開けると牢獄が見える。
暗くて牢獄に誰が入ってるのか、何がいるのかさえもわからない。
しばらく歩くと最後の牢獄を見つける。
そこには1人の魔術師とサードがいた。
まだ気が付かれていない様だが、ここよりも近くに行くと探知魔術で気が付かれる可能性がある。
自分の剣を指で叩き、ファーストへ目配せする。
問題は叫ばれずに殺せるかにかかっている。
メレクも剣を抜くとファーストへまた目配せをし、牢獄の金網を叩く。
ファーストは理解したようで頷くと足に力を込めた。
メレクは左手で数字をカウントする。
それがゼロになった瞬間作戦が始まる。
指を折っていき、ゼロになると同時に駆け出し、メレクは容易く金網を切り裂く。
そしてファーストが驚いている魔術師の首に剣を振り切ると叫ばれずに殺すことができた。
「サード。」
頬をペチペチと叩くとサードは薄目を開ける。
「………メレク様?」
「ああ、迎えに来た。なにがあったか後で聞かせろ。」
メレクはサードを担ぐと教会から脱出した。