7話
「さて、その背中の『呪い』を見せて頂きましょうか。」
メレクが微笑みながらルーク侯爵に言うと少し戸惑いながらも上半身裸になった。
「………これは酷いですね…。薬は?」
ルーク侯爵の背中の皮膚は爛れ、火傷の様になっている。
その様は見ているこちらが痛くなってしまうほどに痛々しかった。
「みなこの『呪い』が移ると言うのだ。しかし私は自分では濡れない。」
「………まぁそうでしょうね。」
世界的に『魔術』は存在しても『呪い』は存在しないとされている。
しかし使用用途によっては『魔術』も『呪い』となる。
それもかなり強力なモノに。
その結果がルーク侯爵のこの爛れであった。
よくこの症状で服を着ていれたなと関心するメレクだった。
「なら私共の奴隷がその責務を全うしましょう。もちろん私の販売する奴隷は『呪い』が移るなど、間違った知識は持ち合わせておりません。」
ルーク侯爵は服を着ると椅子に腰かけ、メレクを真っ直ぐ見つめる。
「その奴隷は買わせて頂く。しかし……。」
「ええ、その『呪い』は誰からのものなのか……。それがわからないのでしょう?」
「ああ。私共貴族は多方面から嫌われ、命を狙われている。」
「………その情報を仕入れる事は恐らく可能です。」
「本当か!?」
メレクはゆっくりと頷く。
そして窓から見える大きな教会を少し見ると再びルーク侯爵に目を戻した。
「しかし……時間が少しかかるかもしれません。今、私の情報網は少々忙しいのです。」
「構わないさ。この痛みから逃れられるならば……そんなもの。」
「………そうですか。」
メレクは立ち上がるとファーストに目配せをし、扉の前に立つ。
「ルーク侯爵はその犯人をどうされるので?」
「………わからないさ。その時の私に任せるとする。」
「懸命な判断です。」
扉を開け、兵士にお辞儀をするとメレクは廊下を歩いていった。
「懸命な判断か……間違った判断ではないと信じたい。」
ルーク侯爵は天井を見つめ、目を閉じた。