9話
メレクは戦い始めたワーカーの瞳を一瞥するとその場を後にした。
結果など見なくても分かっていた。
「………。」
ワーカーとファースト。
その2人がいればあるいは……と考えるがその思考は無駄だ。
相手は軍隊に匹敵する。
個の力は悲しいかな、集団には勝てないようになっている。
勝てるのならばそれは人間ではない。
その力があるとは思えない。
「メレク様。どこへ行かれるのですか……?」
「………試合はどうした?」
「勝ってまいりました。今は休憩です。」
ワーカーは真っ直ぐにメレクを見る。
その瞳にはメレクしか映っていない。
それが怖かった。
「そうか。棄権しておけ。あれは意味がなかった。」
「分かりました。この後はどうされますか?」
「………ワーカー、お前の力は人間の範疇に収まっていない。危険すぎる。理解しているか?」
「はい。もちろん。」
そういうワーカーは目を逸らさずに真っ直ぐメレクを見つめる。
「そうか……。ファーストを呼べ。この旅の終わらせに行く。そう伝えろ。」
「はい。」
ワーカーは目の前から消えると強風が肌を撫でる。
成功するのか、失敗するのかメレクには解らない。
だが、ここで成功しなければ俺は……。
空には雲ひとつない青空が広がっている。
しかしこんな日の次の日は雨になりやすい。
そればどことなく不満なメレクだった。