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1章1話
「ついにこの国にもあの商会がやって来るって噂……聞いたか?」
「あの商会?どの商会だ?」
「そりゃお前、あの『エルセック商会』だよ。」
何気ない2人の会話で酒場が騒がしくなる。
2人が座っている席には人が集まり、その噂を持ってきた男性に注目が注がれていた。
「しかし『エルセック商会』は本当に存在していたんだな。俺はてっきり……。」
「架空の商会かと思っていた……だろ?俺もそうだったさ。でもこの二つの目で見たのさ!」
「見たのか!?あの『エルセック商会』を!?」
「ああ、あの特徴的なエンブレム……双頭の蛇が刻まれた馬車が走っていたんだ!」
2人を中心とした噂話は酒場を騒がしくしていた。
その中1人の男性が酒場をひっそりと出ていた。
「『エルセック商会』ね。有名になったもんだな?なぁファースト。」
「ええ、全くもってその通りです。メレク様。」
気配も無く付き従う白髪混じりの男性と真っ黒な髪の毛に赤い目が特徴的な男性は夜道を歩く。