7話
「貴方にはお売りできません。」
メレクはふわふわな椅子に座りながら貴族を前に商売を断っていた。
「何故だ!?なぜエドワード様には売って、私には売らない!!」
「貴方は奴隷を大事にされないからだ。」
メレクが冷たく言い切ると貴族は半歩下がる。
その様子をニュートラルは見てなんとも言えない気持ちと、メレクの強さを痛感していた。
「ろくでもない貴族だったな。」
「はい。売る価値がございません。」
前を歩くファーストとメレク。
その後ろにはファースト13号と呼ばれる奴隷とニュートラルが歩く。
なぜ13号がいるかと言うと最近メレクの周りは少し物騒であった。
最初、夜道を歩いていたメレクが襲撃された事から始まる。
それ以来定期的に襲撃されていた。
どうやらメレク様はもう襲撃させている相手がわかっているらしいが、報復に出ようとしなかった。
「ニュートラル。サードとは話せたのか?」
突然名前を呼ばれ、慌てる。
「いえ。サード様とは1回しかお話出来ておりません。」
「………そうか。せいぜい頑張れ。」
今のメレク様からは何の感情も伝わってこない。
「ニュートラル。よく考えなさい。」
ファーストが助言とも言えない言葉を少しだけ話す。
その意味がまだニュートラルにはわからなかった。
「メレク様。宿の周りに虫が多くいます。念の為退避を。」
暗闇からサードの声が聞こえる。
今回はいつもの様な小規模では無いようだ。
メレクはすぐに支度をする。
「フォース。近くへ。」
「はい。」
リーダー奴隷の中で唯一フォースだけが戦闘技術を持たない。
しかし、ここでフォースを失うと多大な損失となるためメレク自身が守る必要があった。
「では片付けてきます。」
サードはそれだけ言うと宿の屋根に登る。
「2号、3号は私と共に殲滅を。4号、5号は万が一の為にメレク様を守れ。」
サードの周りにいる奴隷は頷くとそれぞれの場所へと散開する。
サードは頷くと一瞬で暗殺者の懐へ入り込み、首を掻き切る。
一切声などを出させないように声帯を切り裂き、あえてトドメを刺さずに次へと向かう。
それを繰り返し、やがて簡単に殲滅した。
まだ息がある敵がいるが、それも計算のうちだった。
2号に指示をすると1人だけ抱えてどこかへと消える。
「サード様。どうやら1人取り逃したようです。」
「追え!!」
サードの顔に焦りが見える。
取り逃した1人は恐らくメレクの元へと行っているのだろう。
メレクがそれを認知した場合、恐ろしい事になる。
「メレク様。誰かに見られております。」
フォースがメレクへと忠告すると意識をそちらへと向ける。
どうやら1人だけサードが取り逃した様だ。
今はファーストもセカンドもいない。
戦えるのはメレクだけだ。
「………そういう事か。」
敵を見て察知した。
これはすぐに手を打たないとマズイと。
「だが大人しく死んでやる事は無い。」
敵は黒のマスクを被っており、顔がわからない。
だが相当な戦闘能力を持っている事はわかる。
敵は何も言わずに剣を抜き、メレクへ詰め寄る。
それに応戦するようにメレクも剣で迎え撃った。
夜中に金属音が鳴り響く。
これはサードが来るまでメレクが生き延びる戦いだった。