ランスロット②
「聖剣顕現」
ランスロットが全身鎧に身を包む
白く輝く鎧は彼の精神性の表れで、神々しいとさえ言える
そしてそのまま、続けて
「聖剣開放」
ランスロットの聖剣能力の開放だ。
彼の鎧がさらに薄く輝く
ここでランスロットのその速力は音を超える
ギィルと戦った時に使用できる時間はおよそ10秒程度だった
それが今は三分は使えるようになったのだが
「甘い。あと遅いな」
ズシャァ!
わけもわからずランスロットが吹き飛ばされる
「いいか、まだ速度上昇に体がついてきてないんだ。もっと強化を強くしろ、そうすればもっと速力が上がるはずだ」
悔しそうな表情をしているが、兜でその顔は見えない
「すこしばかり気が散漫だな…あの女のせいか…邪魔だな」
「なっ!邪魔などと」
「いいや、邪魔だ、お前がそんなに悩んでいるのを知るとだな、うん、私がなんとかしてやろう、間をとりもつとかな?」
ランスロットは一瞬背筋が凍ったように寒くなった
そしてその人を止めるだけの力はランスロットにはない
◇
「なるほど、ご苦労だったなマトラ」
アエリアは紅茶のカップをカチャリと置いた
「ほんとにドワーフが協力してくれるとは思いませんでしたよ」
マトラはテーブルに置かれたクッキーを一枚、ぱくりと口に入れた
その横ではマリアが魔力強化に精を出す
両手で掴んだその剣に集中して
「聖剣顕現」
魔法を唱える
マリアの剣は少し大きめの剣だった
それに魔力がまとわりつき、細く、しなやかな剣へと変わる
突きに特化したその剣をひゅんひゅんと音を立てて振り抜く
何度も、何度も
そして集中するー
だが、その力は、パリンと音を立てて魔力は霧散する
「ふむ、まだ強化が足りんな」
「はああ…、顕現まではいける様になりましたけど、開放しようとするとまだ無理みたいです」
マリアはあの日見た聖剣魔法を練習していた
もちろんアエリアに教わりながらである
その習得速度は目を見張るものがあったが、それ以上が居たマトラとラライラの二人だ
元が魔法使いの二人、魔力操作はお手の物だった
それゆえ、強化はわずか3日で終えて今では聖剣顕現は元より開放まで至っている
マトラは杖タイプの聖剣
ラライラはマントだった
特にラライラのマントはレアらしいが、攻撃力に一切加算されない。ただ、空を飛ぶ事だけは凄まじい
マトラはオーソドックスな杖、魔法使い故にそうなるのは必然だった
聖剣顕現時は魔力操作がさらに向上、魔力探知の向上もすごかった
もともと聖剣魔法は知っていたが、使用すると必ず剣になるものしか使えなかったのでさほど興味がなかったのだが、杖だとかマントだとか所持していないものでも顕現するこの魔法の使い勝手は非常に良かった
「魔法による身体強化さえクリアできればこれほど強化される魔法が廃れたというのももったいない話ですよね」
「それはな、普通に魔力さえあれば使える新しい聖剣魔法の方が使い勝手はいいだろう?」
「それはまぁ、そうですけど」
「君ら二人は筋がいいんだ。それに魔力操作に長けていたからすぐに出来たにすぎない、マリアも才能がある方だがそれなりに苦労している。これがすべての兵士でとなるとなかなか難しいのだよ」
とはいえ、400年前は当たり前に使えたものであるが
そうアエリアは思う
マトラ達の働きで少しづつ、アエリアの望む物は手に入りつつある
破軍の腕輪
それは英霊召喚の腕輪である
とはいえ、実在の人間ではない。物語にあるような軍団を呼び出す為の物だ
その数およそ1000人
そして無敵ではない、倒されるとそのまま数を減らしていくのである。回復させるには一度解除し、再び展開させなければならないがそれは戦場では悪手になる
しかしながら普通に聖剣魔法を使える人間よりは強いため、かなりの戦力ではあるのだ
その武器も、ドワーフが鍛えたものを使用することでさらに強くなる
次は情報網か?それとも特化した戦力?
ランスロットクラスが居ればそれだけでどうにかなりそうな世界ではあるがと思案する
マリアをあそこまでもっていくにはあと数年は必要だろうし…と、そこでアエリアの前にぼろ雑巾になったランスロットが転がってきた
「え?ランス兄さん!?何でここに…ていうかボロボロ!?」
そこでマリアはアエリアを見るが、私じゃないと首を振る
「なんでそこで私を見るんだ‥」
「だってランス兄さんがこんな…」
駆け寄ったマリアはランスロットの体をよく見る
傷だらけであり、息も絶え絶えに呼吸している
命に別状はなさそうだがそれにしてもここまでボロボロになっているのはあのギィル戦で見た時以上である
「回復は私は苦手なんだがな…マトラ、ラライラに頼めるか?」
そう言うとアエリアは数歩、ランスロットが飛ばされてきた方向へ歩き出す
その先から一人の女性が歩いてくる
白いスカートを履いた、短い金色の髪の女性だ
「まったく、いい加減諦めなさい。こんな所まできて邪魔しちゃだめじゃない」
「こんな所、とはまたいい表現ですね。とはいえ、ここは私の住む家なのですが」
アエリアと、その女性が会話するーと、そこに混ざってくるマリア
「え・・・あ?お、お母さま!?」
「あら。マリアもここに居たの?あなたたち兄妹で何してるのよ」
「それはこちらのセリフです・・といいますか何故お母さまがここに?お体は大丈夫なんですか?」
「そういえば君らの母上は体が弱いんだったか?しかしあれはどう見ても…」
「元気そう、ですよねぇ…」
すたすたと歩いてきてランスロットの傍までいくと
「ほら、起きなさい!」
ガスっとランスロットが真上に蹴り上げられる
気を失っていたランスロットは、蹴り上げられた瞬間気づいた
そしてそのまま叫ぶ
「聖剣、開放!」
「無茶しすぎ!それじゃ展開までに打ち下ろされるわよ」
いつの間にかランスロットの上にいた
再びその振り上げたままの足で蹴り落とされる
「ぐはっ!」
そして気を失うランスロット
「お、お母さま?」
一体目の前で何が起きているのか理解できないマリアは戸惑いながら言った
「あら、ごめんなさい。ちょっと躾を、ね。自己紹介がまだだったわね、私の名前はナターシャ・トライエルド。そこで転がってるランスロットの母親よ。よろしくね」
そういって、スカートのはしをつまんでお辞儀する
「それは丁寧に。私の名前はアエリア・ル・シャルという…」
アエリアがそう言うと
「そう、貴方がね…」
にやりと、笑うナターシャにやれやれといった感じでアエリアは言った
「相変らずだな、カーネリア」
間に合いませんでしたー!
明日、明日こそは……
ご覧いただきありがとうございます!
ブクマと評価もひたすら感謝の次第でございます!
ではまた明日!…多分!




