ギィルと言う男
その昔、150年前の大陸統一戦争で最後まで争っていた国がある
その国の一つはサウセス、そしてもう一つはウェスコーだった
各王国を武力で支配下に置いていくウェスコー公国に対してサウセスは連合と言う形で対抗していく
しかしながら圧倒的な武力により支配を進めていくウェスコーに対して戦力で劣るサウセスは技術で対抗していく。
その中で、休戦になったいくつか禁止された魔法があるがどれもがサウセスで開発されたものだ
特に、地獄の門と呼ばれる魔法は聖石の力を消費してそこを中心地とし、大規模転移を引き起こす
それは僅か2回の使用で禁止となる
転移後に発見された街が、あまりにも無惨であったことがその理由だ
ウェスコーに隣接する海で発見された、その転移させられた街。住民の8割りが即死していたとある
さらに2割は生きていたものの、様々な鉱物、生き物と体が融合しており発見後に全員死亡した
恐ろしい魔法だった
開発したのはサウセスの魔法研究博士のセシリア・ライルと言う女性であった
その魔法の廃棄と引き換えに休戦することになる
終戦後、ライル博士は罪を償うとウェスコーへと渡った……
◇
そこはウェスコーで二番目に大きな都市だった
人口は数万、それだけにここにはスラム街などもある
その一角に大きは樹が生えており、横にはボロ家がひっそりと建っていた
灯りが漏れて、夜になると人が住んでいるとよく分かる
しかし、この家に盗みに入ろうとする者は誰も居ない
ならずものにも触れてはならぬものがある
それがここだ
ボロ家のドアがガタガタと開けられる
「ああ!やはりここに居ましたか、探しましたよ」
その男は神官の様な服を着て、明るい笑顔でテーブルに座り、一人酒を飲む男に話しかけた
「なんだ、セシルの旦那かよ……」
「ええ、どうしたんです?最近姿を見せませんでしたが?さがしましたよ、ハイル君。ようやく例のものが完成したんですよ!」
例のもの、とは何だっただろうか?と頭を捻るが思い出せない
「複製聖石ですよ。ノーチェスの首都を飛ばしてようやく完成しました、これでこれからの戦争は我々の勝利です」
「ああ……そんな事言っていたな」
「ええ、これで意図した場所を選んでアビスゲート、地獄の門を開けることができます。さらに転移先へは聖石の結界を保ったまま行きますので誰も死にませんし、完璧ですよ!」
「そうか、もういいんだよ……そんな事は」
「いえいえ、これで我がライル一族の目指した魔法の完成です。相手を大規模転移による無力化が可能となるのですから……昔のように、禁術とされません。平和な、平和な魔法になるのです……我々の有利な地点へ、とはいえ固定されていますがそこに飛ばすことが可能になります」
一通り言いたい事を言うとセシルは辺りを見回す
そして首を傾げて
「そういえば、ビーツさんはどこに?」
「あんた、研究に夢中過ぎて耳に入って無かったみててぇだな……」
「はい?」
「死んだよ、ギィルの兄貴は……あんたの探してる、ビーツ・ガランドルはな……」
「はあ?何を言ってるんです?あの人が死ぬわけ無いじゃないですか……聖剣魔法だってあの人の発明で…改良さえした魔法を使いこなしていたのに」
ビーツ・ガランドルは、過去の記憶を持っていた
それは150年前の記憶らしい
この国の、150年前の王と同じ名を名乗るその男の過去の記憶。それがあったからこそ、セシルは複製聖石を、地獄の門を開発できた
それと同時に、失われつつあった聖剣魔法をハイルに教え、また他の人間にも教えていた
「アニキの墓なら裏にある……掘り返してもいいが、また埋葬しとけよ。アニキの遺言だからな」
「遺言?」
「俺はあんたの言う通り、ランスロットの妹を人質に取りに俺は動いたんだ。そこで問題が起きちまった。妹の周りに聖剣魔法使える奴が二人もいてな…うちの一人、赤いドレス着ていた女がどうやっても勝てるイメージがわかねぇほど強かった。アニキからの念話でも」
それは、人質を得る前にランスロットが来てしまった事である
さらにランスロットとギィルの交戦だ
「アニキはな、もし万が一ランスロットと戦う事になったら俺に手を出すなと言っていた。負ける事があったら、全てを諦めて白紙にして逃げろとな。そんで俺に、アニキの亡骸は必ず回収しろと言われていたんだ」
そこで酒をぐびりと流し込んでから
「まあ、頭しか回収出来なかったけどな……」
「まさ、か、ランスロットに負けた?現時点でも勝率は9割はあったはず……」
セシルが手に持っていた紙束をバサりと落とす
それは戦略を書きなぐっていた紙だ
「あー、どうやって負けたのか分かんねえよ。確かなのはランスロットが聖剣魔法を使った事だ。そしてそれにアニキは圧倒的な強さを見せてた……だが、よく覚えてないが、あれは普通の聖剣魔法じゃ無かったのかもな。第一解放とか唱えて無かった気がするが…もうどうでもいい、終わったのさ」
「終わった…?ええ、そうですね、ビーツがいないのではもうどの作戦も無理です…彼の魔法ありきで組んだものばかりですからね」
「最後の念話でよ、ここに埋めてくれっつーのが遺言だ。なんでかは知らねぇ。あと、セシル、あんたにも感謝しているだとよ…」
「そうですか…」
「まぁなんにしてもウェスコーが大陸を統一するなんてのはもうしまいだわ。その夢もったアニキがもういねぇんだからよ」
最後の時を思い出すー
(ハイル、もし負けたらよぉ…俺の遺体はなんとしても回収してくれ。そんであそこに埋めてくれ、セシルにもありがとよって伝えといてくれ)
(はぁ?ここまで圧倒してんのに負ける事かんがえてんのかよ?アニキらしくねぇな!)
(なんつうか、悪寒が止まらねぇ。こいつは昔感じたことある圧だ)
(ああ?)
「聖剣開放」
(くそが!思い出したぜ、やっぱりかよ!また、また超えれねぇのか!俺の…聖剣魔法じゃ)
(アニキ!?)
(次ぃ、あると良いなぁ。次こそ超えて…)
◇
あの時、アニキが言ってた次ってのはきっと、再び次の人生があると思っている
その次ってのがあるのかはハイルには分からないが、きっとアニキには何かあるのだろうなとハイル悲しみも程々に酒を飲み続けるのだった
セシル・ライルはその後姿を消した
ウェスコーでは、第一王子であるビーツが行方不明になり、作戦が全て出来なくなる
幸いなことにその作戦は漏れることが無かった為に、どの国からも責められる事は無かった
王位は第三王子が継いだという
ご覧いただきありがとうございます
2日ほどおやすみしてしまいました……
ちと身内が怪我してまして、13日あたりにはフォローが落ち着く予定です。
それまではちょっとだけ不定期になるかも?と言ってもそんな日数ではないですが
あと感想いただきありがとうございます!
ですね、大陸発見みたいな事です。ネオアトラスとか好きなんですよね
それでは次回はランスロット&アエリアのお話になる予定です




