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11.残り物には福と面倒がある

年単位で間が開いてしまいましたが、まだ覚えててくださる方がいるでしょうか?

 即位して以来、女王(わたし)が王都を出るなんて、初めての事。

 国の公文書に残る、正式な女王の行幸よ。

 今回の行幸で、シャガールとシルヴァードがお付き兼護衛として同行したの。王宮は、急遽呼び戻したロートレックに留守を押し付け――いや、任せてね。

 なんせ二人とも文官でありながら軍務経験ありの猛者。国軍と領軍の違いはあるにせよ、実戦経験者だもの、こういう時には役に立つ。

 もちろん至近距離に控えてる女騎士もいるけど、なんせ数が少ないから、どうしても腕が二人よりは落ちるのよ。

「この度の視察は、我が国の正式な記録として、後世まで残る事になります」

 と、シャガールに言われた。

 自分がたくらんだ事ながら、思ったより大きな話になっちゃったなぁ。

 更には、この土地のことを調べまくって新たに知ってしまった事実がね、こっちは、たとえ女王であってもどうにもこうにもなりゃしないって言うか、下手に手を出すわけにもいかないと言うか…。

 正直不本意だけど、この際仕方ない。

 要は男爵家の若夫婦を何とかできりゃいいのよ、その後は後の事よ。 

 開き直ったわたしは、とにかく余計なことは考えず、海縁の領地へとへと向かったの。

 本来なら旅行準備を含めて一月はかかるところを、早さ重視の馬車を仕立てて駆け抜け、一週間で強行。

 あはは、侍女や侍従たちが死にそうになってたわね。

 荷造りに数週間もかけてられますかっての。日頃、いざという時のため用意してある旅装をそのまま荷車に放り込んで出発した。

 これって、もしも敵襲とかがあって王族がいきなり避難しなきゃならなくなった時のためのものなんだけどね。でも、しょうがないじゃない。一刻を争う状況だったんだから。



 船ってのは怖いわ。乗っている限り、手も足も出ない。逃げることすら無理。

 わたしにできたのは、隙を見て閉じ込められてた船室から脱出した後、船内中で暴れまくって自由と船員たちからの敬意(?)を勝ち取ったことよ。

「おい、ルー。いい加減そのモップを振り回すのをやめてくれ、お前にぶっ飛ばされた奴らがビビッて仕事がはかどらねぇんだよ」

 水夫長が必死で叫ぶんだけど、知ったこっちゃないわ。

「なら、わたしにも湾曲短刀(カトラス)を頂戴。ついでに使い方も教えてよ」

「…うちの水夫どもを殺さねぇってんなら、考えるがな。なんでお姫様育ちが槍術や棒術をマスターしてんだよ」

「あら、剣術も体術も得意よ。我が国の軍教官直伝、これも貴婦人の嗜みってものなんですからね」

「ぜってぇ違うだろ、それ」

 答える代わりに、水夫長の鼻先にピタリとモップを突き付けた。

 呆れられてしまったのはわかるわ。まぁ確かに刺繍や楽器演奏とは違うかもしれない。

 でもね、締め上げたコルセット、重っ苦しいドレス、邪魔くさいアクセサリー、止めは足を圧迫するかかとの高い靴。これらを装着しての立ち姿やら歩き方やら、ダンスにお辞儀に不埒な男たちから身をかわす術まで、淑女の動作と戦闘の体捌きに、どれほどの違いがあるって言うんだか。

 女の戦闘態勢を甘く見たら、痛い目にあうんだからね。


 襲撃だの出産だのが終わって、翌日。

 昨日とは違って実に穏やかな凪の晩、わたしは船長のオルガスに、話があると言われて夕食を共にすることになった。

 ラッキー、これでゆっくり食べられる。と思ったのもつかの間で、彼は実に答えにくい質問を次々に放ってきた。

「なぁ、ルー。今更聞くのもなんだが、お前さんなんであんなに慌てて海へやって来たんだ?」

 と、ワインを飲みつつオルガスに訊ねられて、わたしはなんて答えるべきなのか、本気で悩んだ。

 だって、本当のことなんてとても言えない。

 ましてや、アンタがいずれ辿るだろう運命を知ってるかも、なんて言った日には、笑い飛ばされるか狂人扱いだわ。

「――あー、それはつまり…国際情勢を(かんが)みて、このままじゃ我が国はどんどん置いていかれそうだなーって危機感がね」

 自分で言ってて嘘っぽいなぁ。

「お前ならそんなことで海に目を付けるとは思えんが」

「いや、これでも一国の女王よ。先を見据えてこれから伸びそうな分野を推量するのは、当然じゃない」

 どこの投資家の言い草よ。

「そうか、まぁそういうことにしておくか」

 これは絶対不審に思われてるわね。

 でも、しょうがない。これ以上は口に出来ないんだから。

「それで、港を作りに来た奴が、どうして現地の若夫婦を取り持って騒ぎを大きくするんだ?」

 それはね、それこそが目的だったからよ。

「…成り行きよ」

「ほう、あの二人の事情を知ってやらかしたのか?」

 知るわけないじゃない。

 くっそ、夢にしか出てこないアイツが、もうちょっと詳しく状況を説明してたら、あんなことには…いや、なってたかもしれないわね、どっちしても。

「事情って、あのイカレた一大ロマンスのこと?」

「一大ロマンスかどうかは正直悩む所だがな。まぁあのまま行ってたら、あの男爵領は滅茶苦茶になってただろうから、お前のちょっかいは正しかったんだろうさ」

「不幸な人たちを増やすべきじゃないって思ったのは確かよ。それに、アレはわたしが責任を取らなきゃならない案件でもあったし…」

 そこに嘘はない。

「だが、お前が悪い訳じゃないだろう。やらかしたのは、親父さんだ」

「王の責任、ましてや不始末を放棄する訳にはいかないわ、たとえそれが前任者のものであってもね」

 だからこその後継者なんだもの。

 どんなに理不尽であっても、そこが国主の辛いところよ。



 急かした挙句の、怒涛の旅路で現地入りしたわたしを待っていたのは、思った以上にこじらせた事情を抱えた人々だったの。

 地理的な問題で、直轄領より先に男爵領にたどり着いた女王一行を迎えたのは、なんとも生ぬるい視線と態度の領民たち。

 見かけは歓迎・内実不歓迎。”何しにきやがった”ってのがにじみ出てたものね。

 後ろで控えてたシャガールやシルヴァードの殺気がすごかったのなんのって。

 でも事情を知れば、納得できた。

 男爵家の人たちも領民も、王家には物申したいことが多々あった訳で。でも、声を大にして言えるようなことじゃなかったのよ。

 事の起こりは十年以上前の、先代の男爵ととある伯爵夫人の駆け落ち。

 伯爵夫人っていうのは、男爵領の隣にある直轄領代官の娘で、実は若かりし頃に出会って恋愛関係になってたらしい。

 でも出世を狙ってた父親は、身分が低い上に貧しい領地の男に娘を嫁がせる気なんてサラサラ無くて、彼女は泣く泣く遠い領地の伯爵と結婚した。そして、子供を儲けて、まずまずの幸せを手に入れてたらしい。

 男爵は、令嬢に遅れることしばしで、自分も結婚して子供もいた。

 ところがだ。

 志虚しく、父代官が亡くなって葬儀が行われた際、里帰りして参列した娘と隣領で家督を継いで男爵になっていた男は、再会して焼け木杭に火がついちゃった。

 それぞれの家庭を投げ捨てて、二人は共に逃げてしまった。

 こんなの許されるものじゃない。

 そのままなら、二人の行く末は暗澹たるものだったろう。いずれどこかで野垂れ死んでいても不思議じゃなかった。

 ところが、さらにところがだ。

 なんと、この理不尽を体現した不倫カップルに、手を差し伸べた不届き者がいたのだ。

 誰あろう、この国の王、その人だ。

 先代の国王、真っ先に貴族の不逞を処断するはずの彼が、ゲロ甘なお慈悲とやらを発揮して、二人が無事にくっつけるように、アレコレ手やら口やらをお出し下さりやがったのだ。

 クソ親父ぃい!

 先代国王――わたしの今世での父親は、はっきり言ってバカだった。一人の男としては、善良で愛されるべき存在だったけど、国を任される存在とそしては色々と足りない奴だったの。

 一国の王(おなじたちば)になってみて、奴のバカさ加減がよくわかる。トップとしてやっちゃいけないことを、ペロッとやらかすんだから。

 それをうまく収拾させる技量や人徳があったなら、稀にみる賢君にもなれたんでしょうけど、アイツにあったのは、ただただ甘ったるいだけの理想。

 それならそれで、自分の無能さを自覚して、有能な家臣の邪魔にならないような処世ができればまだ良かったのに。ただもう生来のお人好しでいろんな事をやらかして、その度に国が震撼するほどの騒動を起こしてた。

 男爵の駆け落ち騒ぎもその一つ。

 在位が短かったのが幸いとまで言われたものねぇ。

 でもね、シワ寄せを全部おっ被せられた方は溜まったもんじゃないわ、せめて跡継ぎになる弟の一人でも作ってから…。

 今更言ってもしょうがないけど。

 で、だ。

 よくよく聞けば、遠方に嫁いだ伯爵夫人とやらは、傍から見れば幸せな貴族女性だったけど、その内実は結構シビアだったらしい。

 なんでも姑の先代夫人とやらが大分キツイ女で、夫である息子は完全に母親をリスペクトするマザコン野郎だったらしい。

 跡継ぎを含めて子供を二人産んだのにもかかわらず、田舎育ちのできない嫁扱いされっぱなしで、かなり鬱屈していたとか。

 ロクに里帰りもできない内に父親がポックリと行ってしまい、完全に心折れてしまったところで、優しかった昔の恋人が現れて、後先考えず縋りついてしまった。

 なんなの、その陳腐。良くある話っちゃ話だけど、どいつもこいつも甘すぎだっての。

 かたや男爵の方は、王都育ちの高位貴族令嬢と結婚してたそうで。

 その嫁とやらは、どうやら王宮でやらかして、社交界から爪弾きにされた女性だったそうよ。

 持参金だけはたっぷり持たされて、男爵家に嫁に来たと言うより、追い出すために押しつけられたって感じ。当然田舎に不満タラタラ、それを隠そうともしなかった。

 そりゃ、苦労したでしょうねぇ。

 駆け落ちは、昔の恋人ってだけじゃなく、お互い育った土地のことで蔑まれる事のない相手ってこともポイントだったんじゃないかしら。

 まったく、甘ちゃん親父がしゃしゃり出たがる訳よ。色んな意味でメロドラマだわ。

 駆け落ちして王都へ来た二人は、慈悲深い(ゲロあま)と評判の国王に泣きついた。

 結果、それぞれの伴侶とは離婚。二人は改めて互いと再婚して、新たな男爵夫妻として再スタートを切った。

 それだけなら、ハッピーエンドと言えなくもないけど。

 成就した恋とやらの陰には、恨みつらみが溜まり込むのが当然。

 具体的に言うと、離縁された元婿と元嫁が、かなりイッちゃったらしいのよ。まぁ、元婿の方は本人より姑が荒れ狂ったそうだけど。

 ある意味自業自得と言えないこともないから、どこへ行っても微妙な同情ばかりされて、それもまたマイナス感情を募らせる一因で。どうしようもないものだから、周囲に当たり散らすしかなかった。

 結果、被害を受けたのは、なんの力も責任もない子供たちだった。

 なんて悲惨なオチ。


「お前さんは知ってたのか?先代男爵夫妻が前夫と前妻の間にできた子供同士を結婚させて後継ぎにしようとしたことを」

「知るわけないじゃない。知ってたら、もうちょっと考えたわよ」

「考えた?」

「あ、いやつまり、あんないきなり領地に突っ込んだりしなかった、ってことよ」

 う、危ない危ない。興奮して変なことをポロっと口にしないようにしなきゃ。

「まさか僻地の男爵家に、国王の勅命が出てたなんて思わなかったのよ。――事情を知ってた役人は、わたしの即位の際にほとんど切っちゃってたし」

 そう、代替わりした際、甘ちゃん王を支えて無理を通すのに手を貸してた連中は、馘首(クビ)にしたり遠方の閑職に追いやったりで、ほとんど王宮には残ってない。

 その辺、処理してくれた宰相(ロートレック)は実に手際が良かったわ。

 でもね。

 バカ親父が出した国王命令が、まだいくらか残ってたのが計算違いだった。

 ほとんどはもう完遂されてるか、わたしの名前で破棄したんだけど、時限式で発揮されるような案件があったのよ。

 《再婚及び男爵位の継続の対価として、前妻の子を後継者とし、例え現妻に子が生まれたとしても爵位の継承は認めない。更に、妻の前夫との間に生まれた子供を、その伴侶とする》

 これが良かれと思っての勅命だって言うんだから、頭おかしいとしか思えない。

 父王(バカオヤジ)の甘さが最悪の方向へと突っ走った結果だわ。

 目の前で泣く悲恋カップルには思いやりを向けれても、見たこともない伴侶や子供はただの駒かなにかとしか認識できなかったのかもしれないわね。

 まぁつまり。

 わたしが救わなきゃならない幼馴染の攻略対象者は、頭のイカれた王の命令で生まれてきたと、そう言う訳だったのよ。

 そりゃあ、こじれるに決まってる。

 なにが意地の張り合いよ。本質からして違ってんでしょうが、あのアホめ。

 事情を知ってしまえば、件のカップルの不幸と言うか、悩ましさで心が痛むのなんのって。

 一番の不幸は、こんなとんでもない巡り合わせでありながら、二人は互いを想い合ってしまったってことよ。

 恋ってのは落ちてしまうものだという。たとえどんなにマズい相手でも、ドボンしちゃった恋心は自分じゃどうしようもない。

 通常そういう感情を抱え込んでしまったら、理性を総動員してでも抑制して、時間が解決してくれるのを待つしかないんだけど、この場合はそういうわけにいかない。

 だって、王命を順守するなら結婚すべきなのよ。結果的に思いを遂げなきゃならないのよ。

 なのに、互いの父を母を哀れんだり恨んだり、でも領民のことや家のことやアレコレ色んな事情が絡みまくって、恋愛成就の末に結ばれた夫婦なんてとても言えたものじゃない。

 結婚できてもできなくても、地獄だわ。

 そんな悶々とした状況の中へ、突然女王陛下が到来して港湾計画の発表という大騒動。

 わたしは父王の勅命なんて欠片も知らなかったから、男爵領でのなんとも居心地の悪い視線や態度に、首を傾げるだけだった。

 一応名目は直轄領への視察だから、タイムアップがある中必死に状況を探ったんだけど、まぁ事情を知れば知るほど、へこむしかなくて…。

 ああ、なんでわたしは王位継承者なんかに生まれなきゃならなかったのよ。

 いやわかってる。攻略対象者(おしメン)たちを救うためよ、そこに迷いはないけど、他人身内関係なく面倒を被らされるのは、本当に頭が痛いのよ。


 

「まぁまったくの他人で見てるしかなかった俺が言うのもなんだが、うまく事を治めてくれたのはありがたかった」

 オルガスの口から意外な言葉が出てきて、思わず彼を見直しちゃったわ。

「そうなの?てっきり余計なことしやがって、って文句付けられるとばかり」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ?」

「お宝と海が大好きな守銭奴」

「…あのな、もうちょっと言い方を考えろ」

 他になんと表現しろと。

 大体、わたしがこんな船に乗り込む羽目になったのだって、元はと言えばコイツやあのナマズ髭の強欲のせいなんだからね。

「じゃあ聞くけど、貴方どうして男爵家のゴタゴタに首突っ込んで、あまつさえご令嬢を誘拐しようなんて思ったのよ?」

「それは…」

「しかもあんな法外な身代金、地方の貧乏男爵家に払えるわけないじゃない」

 地方領地どころか、国家予算クラスの金額を聞いて、さすがのわたしもぶっ飛んだわよ。

「まぁ、結果的に男爵令嬢じゃなく女王の身代金になったわけだから、無茶とも言えなくなったわけだけどねぇ」

 思わずジト目で睨めば、オルガスはグッと喉を鳴らしてしかめっ面になった。

 そりゃ今のこの状況は、彼にとっても想定外なんでしょうね。

 でも、ある意味自業自得よ。大体、誘拐するのに、対象者を間違えるなんてポカをやらかす方がどうかしてるんだから。

 これが身代わりを買って出た侍女とかならまだ許容範囲内なんだろうけど、いくらなんでも逗留していた国主と間違えただなんて、犯罪者としては下の下だわ。

「あのな、言い訳するつもりじゃないが、アレは元々男爵家とアンタのところの代官が申し入れてきた仕事だったんだぞ」

「だから言ってるんじゃない。結局のところ、仕事に失敗したってことでしょう」

 男爵家の後継ぎ娘を浚っていろんな方面で都合の悪い婚約を無しにしよう、なんてバカが持ってきた仕事を受ける段階で、どうかしてるわ。

「俺としては、だ。あのまま男爵家が混乱したままじゃ不味かったんだよ、わかるだろうが」

 わかりますけどね。

 天然の極上良港を海賊が利用し続けるためには、直轄領代官と男爵家、両方との密約が肝心だっていう理屈は、大いに理解できますけどね。

「わたしの国をアンタに不法利用されていたかと思うと、腹立たしいことこの上ないわよ」

「不法って…おい」

「この際過去に遡って、利用料と賠償金と罰金、まとめてお払いなさい。そうね、この位かな」

 ざっと計算してだした金額は、国家予算の十年分相当。いや、ここにわたし個人に対する慰謝料も含めて更に――。

 それをオルガスに告げると、奴は呆れた顔になって首を振った。

「…ルー、お前はアホか。いや、それとも狂ってんのか」

 まぁ、仮にも一国の女王に対してなにを言うのよ。

「いたって正気よ、ついでに本気よ。まぁ、金額の値引きに関しては多少は考慮してもいいけどね、値下げ交渉をするんなら、それなりの覚悟を決めてかかってらっしゃい」

 視線を外すことなく言ってやると、オルガス船長は重ーい溜息を吐いてわたしを睨んだ。

「お前相手に交渉だと…まともな結論が出る気がせんな。値下げどころか、はるかに高い金をぼったくられそうだ。お飾りのお嬢ちゃん女王陛下だって聞いてたが、すっかり騙されたぜ」

 あらまぁ。

「おほめに与り、光栄ですわ」

「ほめてねぇ!おまえ、まさかとは思うが、他国へ侵略とかする腹積もりじゃあるまいな。経済制裁とかやらかしたら、冗談抜きで他国を制圧しそうだぞ」

 それはとても魅力的な案だけど。

「やるにはちょっと資本が足りないわね。海洋開発が成功して、資金が出来たら本気で計画してみたいけど」

「頼むから俺を巻き込まんでくれ。下手に噛んだら全財産どころか、尻の毛までむしり取られそうだ」

「あら、ちょっと違うわ。これでも人材は大事にする方針なのよ。だから、やるなら骨の髄までしゃぶり尽くす方にするわ」

「なお悪いわ!」

 もう、こんな小娘相手にマジで切れないでよ、大人げない。

「あのね、なんだかんだ言っても、今のわたしは貴方の虜なのよ。請求金額にいちいち腹立ててないで、今後のことをちゃんと考えるべきじゃないの」

「…もうちょっと言い方を考えろ。俺はお前みたいなガキは好みじゃねぇ」

 あっそ。

「じゃあ、わたしの躰をいくらでやり取りするか、ちゃんと適正価格をだしてちょうだい。値引額はそれを考慮した上で出すわ」

「お前、わざとやってるんじゃあるまいな」

 ったく、もう。

「いい加減にしてよ、真面目な話をしてるに決まってるでしょう。そっちが呼び出したんだから、ちゃんと話を進めてちょうだい」

 これで当代きっての大海賊団、その頭目だってんだから、呆れるわ。

「でないと、貴方のメンツとやらも地に落ちる――いえ、海の藻屑になるわよ。わかってんの、オルガス・ディーシーズ」

お読みくださり、ありがとうございます。

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