第6話
「凄いですね、カイン様! オークの群れを一撃で倒してしまいました!!」
「あ、うん」
「やはりカイン様は、真の勇者! 英雄です! 天才です!」
自分でもびっくりしてる。俺のオリジナル魔法が、予想外の高火力でオークの群れを一掃してしまったのだ。
いや、でもちょっとおかしい。だってこの魔法、前に発動した時は樹木を倒すのが関の山だったのに、さっき発動したのは地形が変わってしまう程の威力だったぞ。まるで勇者ケイオスの上級魔法『メテオバーン』を彷彿とさせる効果を発揮したのである。
改めて目の前の光景を見る。すっかり、森の一部が吹き飛んでしまっていた。
俺は、自分が起こした現象を眺めていると、何者かの気配を感じ取る。
「カイン様、危ない! ライトニングサンダー!!」
凄まじい稲妻が放たれて、不意打ちをしてこようとしていた生き残りのオークは消し済みとなった。
上級魔法『ライトニングサンダー』。名のある魔法使いでも覚えるのが難しい大魔法だ。これを扱えるということは、かなりの実力者であるのは間違いない。……女神様なら、これくらい出来ても当然なのだろうけどさ。
「ご無事でしたか、カイン様!? お怪我はありませんか、すぐに治療致します!!」
「いや、全然全然。見ての通りピンピンしてるから安心してくれ」
「ああ、良かったです」
「ところでさ。俺の魔法が滅茶苦茶パワーアップしている件について、レアムは心当たりないか?」
「それは、私の加護です。勇者であるカイン様にとっては微々たるものでしょうが、私の力の一部をお貸ししました。これで、少しでもお役に立てればいいのですが」
少しお役に立つ、なんてレベルではないと思うんだが。
勇者パーティー時代に幾つものオリジナル魔法を開発したが、これだけの魔法を唱えられたことはなかった。
これが、女神の加護。
俺は、魔王軍との最前線でずっと死闘を繰り広げていた。
それを遥かに上回る急成長だ。まさに『チート』。反則級の力である。
「改めて君は、本当に女神なんだな。いや〜ビックリだよ。『お荷物』なんて言われた俺の魔法がここまでパワーアップするなんてさ」
「お荷物だなんて、そんなことはありません! カイン様、もっと胸を張ってください! 貴方は、勇者! 世界最強なのですから!」
「お、おおっ」
やっぱり、レアムは過剰なくらい俺を煽ててくれるな。
まあ、悪い気はしない。しかも、こんなに可愛い子に褒められるなんて男冥利に尽きる。
そう、男はカッコつけてナンボなのだ!
「じゃあ、せっかくだしもう一回自分の魔法力を確認していいか? 何か、良さそうな的は……」
「あ、私が用意致します!」
そう言うとレアムは、召喚魔法を唱えると、とてつもなく大きな岩を呼び出したのだ。
「全長10メートルの耐魔力石です! 熟練の魔法使いでも破壊は不可能な魔力耐性を備えていますが、カイン様なら余裕でしょう!」
おい、お嬢ちゃん。あんまりハードルを上げるなよ。俺、この間まで大した魔法は使えなかったんだからな。それに、耐魔力石って、大きければ大きいほど効果も上がるんだよな。このサイズだと、破壊どころかヒビも入らないんじゃねえの?
「それでは、お願いします!」
「やるしかねえか」
男はカッコつけてナンボ。逃げも隠れもしない。
俺が使える最強の魔法で試してみるか。
オリジナル魔法『ダイ・デジル』。中級魔法程度の威力がある雷系の攻撃技だ。無詠唱で発動出来るところが強みである。
「ダイ・デジル!!」
青白い光線が一直線に放たれた。あれだけの大きさがあった耐魔力石が、いとも簡単に粉々に砕かれた。まるで、風化したタダの岩石のようだ。魔力耐性など皆無と言っていい。
「壊れちまった」
自分でやったくせに、信じられない気分だ。
女神レアムの加護のおかげで、俺は本当に、勇者級の力を手に入れてしまったらしい。
「カイン様、凄いです! あの耐魔力石を破壊出来る人間は、世界でも10人くらいしかいないんですよ!」
「はぁ?」
「つまりカイン様は正真正銘、世界トップクラスの魔法使いという訳です!」
「マジか」
「信じられなくても、ここに結果が形として残っています。さあ、これで証明できましたね。カイン様こそが、世界を救う勇者なのだということが!」
レアムは、上機嫌に笑みを浮かべた。
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