第3話
「ああ〜。頭がガンガンする〜」
俺は、二日酔い状態で目を覚ます。
昨日はエリーナと分かれた後、色んな店を梯子して回った。街の酒を飲んで吐いて飲んで吐いて。
おかげで猛烈に死にそうな気分。
ていうか死ねる。起き上がるのが超億劫。
「……ていうか、ここは何処だ?」
俺は、辺りを見渡す。
見覚えのない部屋だ。おそらく、何処かの宿屋なのだろうが、前まで泊まっていた宿屋ではない。完全に別の場所である。
まあ、いいか。
取り敢えず頭がヤバイし、二度寝しよう。
俺は、仰向けになろうとベッドの上を寝転がる。
すると、右手に『むにゅんっ』としたやわらかい感触があった。
「えっ」
思わず、膠着する俺。
試しにもう一度、触ってみる。
むにゅんっ。むにゅんっ。
ふむ。弾力があって、ハリがあって、これはまさか……。
俺は、右手側の方に視線を送る。
「くか〜くか〜」
「せ、セリス!?」
そう。そこに居たのは勇者パーティーの一員、女神官セリスだった。
彼女は、俺と同じベッドで寝ていた。
しかも『全裸』で。
布切れ一枚無い剥き出しの格好だ。たわわな実りも溢れ出しているぞ。
そしてセリスは、俺の声に反応したのか、パチリと目を開き出す。
「あっ、おはようございます。……朝から早々パイタッチとは、お盛んですね〜。ちゃんと発散してるんですか?」
「セリス、お前。なんで俺と同じベッドで寝てるんだよ」
「何となく?」
「貞操観念薄過ぎだ。もっと自分を大事にしろ」
「私だって、相手が見知らぬ他人だったらこんなことしませんよ。カインだから許したんです」
「勝手に許されても困る」
俺は頭をかきながら、ベッドを出る。
「で、何でお前は俺のところにきたんだ?」
「何言ってるんですか。カインが昨夜、私を飲みに誘ったんでしょう? 貴方凄く酔っ払ってて大変だったんですから」
「……全く覚えてないな。まあでも、なんだ。悪かったな」
「別にいいですよ。貴方に無理矢理されるのは、初めてのことではありませんし。……あ、今の言い方、ちょっとエッチじゃなかったですか?」
「寝てろ」
エリーナに布団をかぶせてやる。
さて。寝巻きから着替えたいところだが、この宿屋はシャワー室があるのか? 無くても、せめて顔くらいは洗っておきたい。
「カイン。そこに私の服があるので取ってくれませんか?」
「ああ、これか? ……って、何だこの際どい下着は」
「気に入りません?」
「気に入らねえな。俺の趣味じゃない。何せ俺は、少女趣味だからな」
「堂々と言うことじゃあないですね」
「それと、どちらかというと清楚系のが好みだ。そんでもって礼儀正しく、献身的な子。セリス、お前は聖職者というポジションをもっと大事にするべきだと俺は思うぞ」
「前も言ってましたねー、その台詞。……そして私の答えも前と同じです。「本当に清楚な女なんて居る訳ないからすぐにその夢を諦めなさい」、と。あと、ロリコンは犯罪です」
「お前とは、一生分かり合える気がしない」
人の夢を潰すような心無い言葉を躊躇いもなく……。マジで聖職者なのか疑問で疑問で仕方がないよ。
「大体、少女趣味って言いますけど。カイン、いつも繁華街に行っては大人の女性と会って楽しんでるじゃないですか」
「セリスは、俺に公園で遊んでいる童女に声掛けをしてほしいのか?」
「欲望には忠実であるべきだと思います」
「そうか。じゃあ、もし俺が捕まったら責任はお前が取ってくれよな」
「生憎、私達は既に赤の他人同士なので」
「赤の他人が泊まっている部屋に全裸で寝てるんじゃねえよ」
「カイン」
「何だ?」
「エリーナから話を聞きました。まだしばらくは、冒険者を続けるんですね」
「まあな。他に稼ぎ方も知らねえし」
「では、勇者パーティーの神官である私から、迷える貴方に授け物を与えましょう」
そう言ってセリスは、自分の服のポケットからある物を取り出した。
それは、宝石の付いたペンダントだった。
俺も魔法使いであるから分かるが、これには魔法が込められているようだ。
いわば、『マジックアイテム』。魔物討伐やダンジョン攻略でも重宝されるし、売れば結構な金になるだろう。
「回復の魔法が込められています。装備しているだけで傷が治る一級品。私のお手製ですよ」
「それは値打ち物だな。タダでくれるとは、気前が良いな」
「餞別代わりです。……貴方とは、長い付き合いでしたからね。こんな物しかあげられなくてすみません」
セリスが軽く俯いた格好でそんなことを口にした。心なしか、声の張りも先程より少ない。
そんな彼女らしからぬ態度に、俺は奴の額にデコピンを喰らわせてやる。
「いたっ!」
「なに今生の別れみたいな雰囲気醸し出してるんだよ。辛気くせえな、オイ」
「…………」
「わざわざこの俺を追放してまで新しい仲間を入れたんだ。だったら当然、無事に生きて帰って、俺に土産話の一つでもしてくれるんだよな?」
俺は、セリスの頭に手を当てて、その髪をワシャワシャと掻き分けてやる。
「正直まだ納得は出来てないけど、過ぎたことをいつもまで考えてても仕方ねえんだ。俺は俺で好きにやるから、お前らもお前らで好きにやってろ。そしてこの街にまた戻ってこい。いいな?」
「……はい!」
返事をした時のセリスの表情は、さっきより幾分かマシになっていた。
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