hr_07(狼を喰った鬼)
*
ぼくはずっと鬼に狙われる。
鬼がぼくの血を取りに来る。
鬼がぼくの首に歯を立てる。
ああ、最高だ。
もっともっと噛んでくれ。
もっと強く。もっと激しく。
ポイ捨てされた。
ぼくは、彼らの(安物)嗜好品。
*
いつもの保護観察官は?
「彼は担当から外れた」
どうして?
「規則だ」
嘘ばっかり/タバコが吸いたい。
*
ノック−ノック−ノック。
こちらホーマー保護観察官のお宅ですか?
「きみか」
そうだ、ぼくだ。
入っても?
「きみか」
そうだよ。
イエスか、ノーか。
「ダメだ」
ぼくは路地でのたれ死ぬ。
鬼に、狙われているんだ。
「そうか」
タバコ、貰えませんか。
「──入りなさい」
*
ねえ、ホーマー保護観察官。
もし、頼んだら、ぼくを狼にしてくれた?
する気はあった?
──ない。
少しも?
──ただの一度も。
あんたは、ぼくにやさしかった。
どうして?
──仕事だからだ。
なら、なんであんたは、自宅にぼくを招き入れた?
仕事だからだ。
そう。分かった。
ありがとう。
ぼくも/仕事/するよ。
──嗚呼。神さま。
祈りは届かない。
(きみは、今に問題になる)
そうかい。すでに問題さ。
ここはヒトの土地だ。
狼は出ていけ。鬼も消えろ。
──そうだ。
きみも/今は/鬼だ。
叫び。祈り。
緊急出動/捕まった。
*
「葉っぱの所持。かっぱらい?(強盗だろう)、万引き?(窃盗だ)。売春、売血」彼はぼくを見て、「他に余罪があるな」
さあ。分かりません。
保安官助手を呼んでください。
「誰だ?」
背の高い女の人。狼の血が少しはいってる。
あと、お乳が大きい。
「ジェーンか」
有名ですね、彼女。
乳首が六つある。
「本当に?」
冗談です。彼女と知り合い?
「まあね」
うらやましいですね。
「そうか?」
ええ、本当に。
ぼくには誰もいない。
誰も、ぼくを気にかけちゃくれない。
「きみは、誰かを気にかけているか?」
無言。
「誰かに愛されたいのなら、他人を信じることからだ」
素敵な助言、ありがとう。
涙が出そう。
「そんな簡単なことが分からないのか」
誰も教えてくれなかったから。
親父もお袋も。
友達? ひとりもいない。
彼氏は、ことが済むまでやさしい。甘やかしてくれる。
ぼくは甘える。寝床を借りる。ご飯を貰う。
「そうだろうな」
そうですよ。
「でも、学ぶことはできたはずだ」
どうやって?
「努力が実を結ぶとは限らない。だからと云って、逃げ廻ればツケが貯まる」
まったくどうも、としか。
「どうしたい?」
分からないから、訊いているんです。
分かるでしょう?
「──行くぞ」
何処へ?
「留置所」
は−は−は。
タバコが、吸いたい。
*
よう、ケヴィン。
面白いものがあるぜ。
狼を喰った鬼だってよ。
見ていくかい?