hr_01(公衆電話を探して)
outsider: borderless_13
またはじまった。
暗い部屋で目が覚める。
彼の腕が暑苦しい。
押しのけた。
タバコが吸いたい。
*
野良から葉っぱを買って、レシート紙で捲く。
マッチを擦って、火をつける。
煙を深く、吸い込んで。
ケムトレイル/吐き出した。
肺を痛める白い息。
頭が少し、くらっとした。
禁煙の終わりはいつもそう。
今度は長くなかったな。
けっこう好きだったのに。
うるさくないし/やさしいし。
いじわるしないし/やさしいし。
持ち出した財布の中身。
あまりおカネは持ってなかった。
ポケットにマッチを戻して、指先でコインを探る。
タバコはすぐに短くなる。
*
ここに残るか? 外へ出るか。
鬼も狼も知るもんか。
明けの明星/ルシファー。
堕天使。
朝が来る。
空が開けようとしている。
ぼくはすっかり堕落した。
喫煙・禁煙/繰り返す。
寝床があれば禁煙中。
別れのたびに、誓いは破られる。
朝もやの中、荷物を担いで歩き出す。
そろそろ春が終わりになる。
タバコを揉み消し/ポイ捨てた。
*
トイレの落書き。
辿って/辿って/辿り着く。
番号を記憶して。
公衆電話を探して歩く。
タバコが吸いたい。
*
うるさい小男/毛深い大男。
ふたり相手なんて聞いてない。
ぼくは、ひとり専門だ。
「初仕事だ」
一度に、ひとりしか相手にできない。
「初仕事だ」
ひとりの値段しかない。
「ふたりなら?」
四倍。
「ひとりなら?」
いつもどおり。
小男と大男が顔を見合わす。
目と目で見えない会話を交わす。
前払い。ぼくの要求。
譲れない。イエスか、ノーか。
「幾らだ?」
二倍。
「欲をかくな」大男。
握らせたのがひとり分。
「これで満足しろ」
ぼくは一度にふたりを相手。
後払いをすっぽかされた。
「時間はひとり分だったからな」
ひどい云い分/間抜けなぼく。
スキンを頼むくらいはできたはず。
尻が痛い/タバコが吸いたい。