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革命の日

序章です。


――――――かつて一つの国が滅びた。


その国の名はセルフェイス王国。

滅ぼしたのは人類の天敵である強大な獣『世壊獣(ファリス)』でも、圧倒的な数で蹂躙する万の大軍でもない。


――――――それは、たった一つの『災厄』だった。


「待ってください!俺は……!!」


薄暗い宵の空の下、男の断末魔が響く。

嗚呼、ここはどこだ。

建物が崩れ去り灰燼と化した街に、天井の無い城。

阿鼻叫喚の悲鳴はもう耳を傾けることすらしない。


「……あれ、俺は――――――」


吹き抜けになった城の中、紅く染まった道を一人の銀髪の少年が歩いていく。

逃げる兵士を刺し殺し、武器を捨てた兵士を切り殺し、命乞いをする兵士の首を飛ばす。


もう何千人殺したのだろう、革命は失敗(・・)した……仲間の裏切りと、少年の家族の死を持って。


「悪い、遅れた……リュフィア……アリア……ルノ……ユディス……」


やがて大きく開けた広間に出た少年は、血に濡れた絢爛な椅子の手前、床に倒れ伏す四人の少女達の元へ歩み寄ると、ゆっくりと腰掛ける。


赤く染まった胸元と冷たくなった肌は、彼女達が既に事切れている証。

指元に当たった雫は果たして誰の涙だったか。


ただ、いつまで経っても立ち上がる気力は湧かなかった。


少年には、家族だけが全てだったから。


少年の物語には……家族しか記されていなかったから。


「ごめん、守れなくて……助けられなくて……」


少年が少女たちの身体を翻す。

裏切られて殺されたというのに、どうして彼女達の表情はこんなにも安らかに見えるのだろう。


なんで殺してくれなかった。


なんで死なせてくれなかった。


彼女達と一緒に死ねていたら、こんなにも苦しむこともなかったのに。


「ああ、綺麗だな……」


吹き抜けになった天上から、無数の星々が顔を出す。


降り注ぐ月光は、彼女たちの魂をどこか安息の地へと運んでゆくのだろう。


今目を閉じたなら、少年も同じ場所に行けるだろうか。

否、きっと家族を守るというたった一つの約束すら守れなかった自分にはその資格はない。


ただ、願わくば彼女達の仇を討った後は……


「……お休み、リュフィア、アリア、ルノ、ユディス」


少年の言葉が夜の闇へ溶けていく。


徐々に閉じられていく視界の中、夜空を過った一筋の流れ星は最後まで少年の瞳に焼き付いて離れなかった。

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