上履きの能力
グスコーは軍人である。
その主要な仕事場はもちろん戦地ではあるのだが、勤め場所が王都である以上、国の端の方で起こる他国との小競り合いに参加しに行くわけにもいかない。
そのため今回のように門番をしたり衛兵をしたりで仕事をこなしていた。
しかし、それだけでは功績は上がらず、出世もできない。出世ができなければ十分な金は手に入らない。
故にグスコーは、王都に店を構える業商人に頼み込み、あるスキルを習得した。
魔法具が持つ能力を瞬時に見極めることができる《鑑定眼》というスキルである。
もちろんグスコーはその道のプロではないため見極めが効くのは低位の魔法具に限るが、それでも無いよりはマシである。
豊かな王都には行商人がかなりの頻度でやってきては物を売る。その中には、古くなった魔法具をそれと認識せずに売りに来る、素人や民間人上がりの商人が数多く紛れていたのだ。
今回も例に洩れず、易々と魔法具の「クツ」を手に入れることができた。
白の布らしき物と赤の皮だと思う何かで作られたそのクツを見た瞬間、グスコーの鑑定眼がビビっと反応した。
古くはなっているものの、そこらの布より圧倒的に頑丈な素材でできており、軽さとそれなりの防御力を兼ね備えた一品となっている。しかも何故か靴底の赤い部分のみ、「雷無効」の特殊能力が付いているときた。
そしてなにより甲の部分にテープ状の布的な何かが通してある摩訶不思議な構造。
これが魔法具でないはずがない。
そうと気づいた瞬間、グスコーは自然とそのクツを買い取っていた。
雷無効の能力が付いているという時点で、かなりの高級品であることに疑いは無い。おそらく100万Gは下らないだろう。
「さて、では転売しに行くとするか…」
グスコーは上履きを布に包み、大金を手にすることを夢見て、王都に一歩を踏み出した。