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男だけど性転換してユニコーン騎士になっている件について  作者: どくどく
グテートス奪還 2日目 ~リベル湖浄化作戦
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目覚めのテオ

 テオぼん……テオぼん……起きぃや!


 脳内に直接響くテレパスに意識を取り戻すテオ。泥水を飲んだのか、口の中に土の味が混ざる。それを吐き出し、起き上がる。

 混濁する記憶。ハンナの魔族転移の報を聞いた後に襲って来た洪水。それに巻き込まれたという事か。

 痛む体に治癒魔法をかける。完全な治癒には程遠いが、動くことはできるだろう。兎に角状況の確認だ。怪我は動くのに支障はない。『アイン』は無事のようだし、通信魔法も無事だ。だが……。


「……ハンナは!?」

『ワシもわからん。とっさのことやったから、そこまで気が回らなかったわ』


 ハンナがいない。そのことに気づいて、テオはまず『アイン』に尋ねる。帰ってきた答えは、予想していたとはいえ気落ちしそうになる答えだった。そしてその『声』を聞いたシャーロットとノエミの声が通信魔法の『部屋』から返ってくる。


『団長、御無事で!』

『どういうこと!? ハンナは一緒じゃないの!?』

「少なくとも、私の周りにはいません……!」

『レーナルト騎士は少し前の通信以降、返事がありません。そちらで何があったのですか?』


 焦るノエミの声と、感情的になっているシャーロット。どうやら向こうも情報が正確に伝わっていないらしい。テオは自分の知りうる限りの情報を伝えた。魔族転移の情報。そして突然の洪水。気が付けば、ハンナと離れてしまったこと……。

 帰ってきたのは、湖の向こう側から二人が見聞きした情報だ。轟音と、そして小山と。


「おそらく、その轟音は洪水を作るための工事だったみたいですね。湖の水を溜めるための池を作っていた……という事でしょう」

『は!? ……騎士長、その、そんなことが、あるんですか……?』

『信じられませんが……状況から判断すればそうなりますわね……』


 テオの推測に、とても信じられないというシャーロットとノエミの声が返ってくる。当然だ。言っているテオだって信じられない。一分に満たない時間の間に目の前にため池が作られた、だなんて。

 

「先ずはレーナルト騎士を探しましょう。通信魔法の『部屋』が継続している以上、生きているはずです。発見後、、彼女を連れて撤収です」

『了解しました。合流ポイントに帰還しています』

『あともう少しで、こちらのポイントは浄化終了でしたのに。口惜しいですわ』

「残りのポイントは別の機会に。魔族の襲撃に気を付けて帰還してください」

『……騎士長も、お気をつけて』

『洪水が魔族の手によるモノなら、魔族の襲撃があるはずです』


 わかっている、と告げてテオはユニコーンに跨る。手綱を握り、ユニコーンの腹を軽く叩いた。それに応じるように『アイン』は走り出す。

 シャーロットやノエミに言われるまでもない。この洪水が魔族の戦略なら、これで終わりという事はないだろう。向こうはこちらの位置を察知できるのだ。今この瞬間に魔族が背後に現れてもおかしくない。


(…………あれ?)


 そこまで考えて、テオは違和感を感じた。最初は小さな違和感だが、考えればそれは少しずつ大きくなる。その違和感を基点にある仮説を立てて組み立てる。

 だが、今は二の次だ。ハンナを先に見つけ、助けなければ。ユニコーンがない状態での放置は、命にかかわる。


「水が流れてきて来た方向を考えると……こっちか」


 テオは推測で方向を決める。自分より流されているのなら、水が流れた方向に居るのだという理由だ。

 勿論、間違っている可能性もある。ハンナが自分より流されたというのは、なんの根拠もない。そうであってほしいという理由だ。じっとしているわけにもいかず、ただ動くことで気をまぎらせたかったのかもしれない。もしかしたら、じっくり考えれば何かの根拠が得られたのかもしれない。

 だが、時間は確実に毒霧の中にいるハンナの命を追いやっていく。それを思えば、冷静にはなれなかった。


「ふひ、ふひひひひひ! 見つけた、見つけたよ……! イリーネ・ゲブハルト!」


 そんなテオの耳に声が聞こえる。あの魔族の声だ。

 姿はない。声の聞こえる方向もわからない。だけど確実に声は聞こえてきた。


(こんな時に……!)


 テオは焦燥にかられながら、耳と目を凝らす。魔族の場所が分からない。自分の居場所を特定されないように、何かしらの術を使っているのだろう。ある程度魔術の知識がある(学生レベルだが)テオが分からないということは、かなり高位の術という事になる。

 通信魔法の『部屋』との交信をオフにして、アインに小声で尋ねてみる。


「『アイン』……相手の位置はわかる?」

『無理や。おそらく『ヌィルバウフ空間』に身を隠してるんやろうなぁ、という事はわかるけど、それ以上は流石に』

「そのなんとか空間も僕にはわからないけど……」

『あれや。召喚されるときに通ってくる道っていうか。時間の流れとかが止まってる空間で、召喚者が呼ばれたモンを吟味する場所や。要するにパドックやな。ぶっちゃけると、ステータス確認する場所や』

「ぱどっく? すてーたす? ますますもってよくわからないけど……とにかく隠れていることはわかったわ」


『アイン』の説明を聞いてもわからないが、それだけ分かれば十分だ。というか、聞いても時間の無駄な事だけはわかった。


(……と、なると……)


 テオは一つの結論にたどり着く。



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