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男だけど性転換してユニコーン騎士になっている件について  作者: どくどく
グテートス奪還 1日目 ~グテートス周辺浄化開始
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五秒の攻防(not battle)

「5」


 テオは口を開き、相手に聞こえるように言う。槍の穂先を相手に向けたまま、背筋を張って、動揺を隠しながら凛々しく。

 自分の部下を守るように立ち、それを害するものを許さない。鐙をしっかり踏みしめ、槍を持たぬ手は手綱を握り。いつでもかけることができるようにしている。

 数字の意図は言うまでもない、とばかりに短く。間延びに言うのではなく、ただ短く。その一言で、こちらの意図をすべて伝えたとばかりに。交渉など許さない。認めない。慈悲の時間の終わりを告げるカウントダウン。


(五秒後に攻撃してくる……そういう事!? 待て待て待て。魔族の僕はよほどの攻撃でないと通じない。LV3の武器スキルに加え、伝説級の武器でなければダメージを受けないはず。今までだってそうだった……けど!)


 魔族ヒデキは冷静になろうと自分を律する。再度魔族の能力を使い、レオの持つ武器と才能を確認した。槍は何の価値のない量産品の武器で、武器スキルなど持っていない。それに従えば傷を受ける道理はない。魔王により強化された肉体は元の世界の頃に比べてはるかに強い。魔王からもらった『完璧触手パーフェクト・テンタクル』がなくとも、単純な肉体差で十分打破できる。


「4」


 テオはカウントを進めて手綱を強く握る。その動作に合わせてユニコーンが嘶いた。大地を蹴るような動作をして、威嚇するように眼前の魔族を睨む。いつでも突撃できるというのをアピールし、角を魔族に向けた。魔族そのものは浄化できないだろうが、先端を突き立てられるという生物的な恐怖を想起させる。


(一番の愚手は、ボクが何も出来ないことを悟られること。理由はわからないけど、相手が動揺しているのならそこを攻めるしかない。こんなことは、いつものことじゃないか。力で勝てないなら、力以外で。頭で勝てないなら、頭以外で。相手の弱いところを突くんだ)


「3」


 槍を鎧の金具に固定し、突撃の態勢をとるテオ。こちらの準備は整った。そう言わんばかりのポーズだ。一声かければこの槍がお前の命を奪う。例え言葉が通じずとも、その意味は十分に伝わる状況。


(そういえばあの女たちは何て言ってた? 『団長』『騎士長』『イリーネ』……このワードで検索をかけてみればあいつの正体が……げ!? 英雄レベルの姫騎士だよ! 槍のLV3持ちって書いてる……! なんだよ、目の前の情報と全然違うじゃないか!?)


「2」


 告げる数字は慈悲の時間。だがそれは容赦なく減っていく。数字が尽きた時、その命が尽きる。それまでに決めるのだ。戦うか、引くか。それは慈悲でもあり、死刑執行の秒読み。迫りくる死神の足音の如く。避けれえぬ死までの距離。


(このカウントがゼロになって魔族が逃げなければ……僕はきっと死ぬ)


 カウントダウンを続けながら、テオの心臓は激しく動いていた。このカウントはテオの物。死神が実際に迫っているのはテオの方なのだ。動揺すれば死ぬ。カウントがなくなれば死ぬ。あるいは自棄になって魔族が攻めてくれば死ぬ。

 故に五秒。

 相手に判断の期間を与え、且つ考える時間を与えないため。少し考えれば、触手でとらえた仲間を人質に取るなどの策も思いついただろう。どうしてこうなったかの情報を知るカギは、仕掛けた魔族側に多くあるのも間違いない。その為の思考期間を与えてはいけない。

 テオフィル・ゲブハルトは弱い。それは覆しようのない事実だ。

 だからこそ、自分より強い存在にあることは慣れている。故にどうすべきかと言う機転が回った。思考し、自分にできることを纏め、そして行動した。

 この機転が、このカウントダウンが、一秒遅れていれば――


「1」


 魔族に手番を奪われ、確実に青螺旋騎士団は全滅していただろう。そうなれば地上の浄化は遥かに遅れ、魔族の蹂躙は加速していた。

 何よりも、ハンナとシャーロットとノエミは魔族に拉致され、二度と日の目を見ることのない人生――否、人生と呼ぶにはあまりにも悲しすぎる末路を迎えただろう。

 

「ゼ――」

「くっ……今日の所は顔見せだ! 覚えてろ、イリーナ・ゲブハルト!」


 カウントダウンを告げるより早く、魔族は空間を渡り消え去った。同時に三人を拘束している触手が消え去った。

 

『魔……魔族の反応消失。索敵範囲内には脅威は存在しません』

 

 ハンナの通信魔法が聞こえる。それを合図にシャーロットとノエミが立ち上がる。

「あの団長……一旦休憩にしません? その……作戦もあらかた終了したみたいですし」

「そ……そうね。魔族の襲撃はもうないみたいだし」

『え、ええ。私も少し……その……』


 消極的に休憩を申し出るノエミとシャーロットとハンナ。何処か顔を赤らめ息荒く、身をよじるようにして、触手に触れられた部分を意識するように手で押さえている。


「え……そうね。私も少し休みたいわ。でもどうしたの、皆? そんなにもじもじして」

『それは……作戦外のことだから報告対象外です!』

「そうね。気の迷いと言うかなんというか……とにかく干渉しないで!」

「この件に関しては騎士長の権限を使われても拒否させていただきます!」

「あ……はい。じゃあ休憩に入りましょう」


 事情を聴くことを強く拒否され、テオはそれ以上は干渉しないことにした。実際の所、休憩したいのはテオも同じなのだ。

 こうして、浄化作戦は一時中断することになった。



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