魔族の脅威
「ふひひひひ、君達だな。この空気を払おうとしているのは」
現れた魔族はどこかずんぐりした体形だった。頭に二本の腕、そして二本の足。人間に近い体形であることには変わりないが、突き出たお腹と膝より下に空間ができる立ち方――O脚をしていた。顔には黒く目を隠す板をつけており、来ている服も魔族の文字なのだろう『おお、ゆうしゃよ。しんでしまうとはなにごとだ』と言う紋様が見えた。
空間から現れた魔族は首とお腹を掻きながら、青螺旋騎士団の三人を見た。一人一人指さして、笑みを浮かべる。
「ふひひひひ。ユニコーン騎士だ。という事は処女キター! ラッキーだね。で、ステータスはどんな感じなんだろうなぁ」
魔族は簡素な魔力を展開し、三人のユニコーン騎士と少し離れた場所に居るハンナをサーチする。『メニュー画面→ステータス→能力値』……とわけのわからないことを言っている。
「先ずはそこの鎧貴族。ふひひー。武勇B-、魔力C+、知性B+の白魔法姫騎士ー。名前はノエミたん。上からB88W56H90のEカップ! ガチの貴族っ娘ー。防御力は硬そうだけど、お堅いところがいいねー。スキルは『盾LV2』『鎧LV1』『白魔法LV1』『礼儀作法LV1』……雑魚にしてはいいもの持ってるー」
「次はそこのランスっ娘。こっちは武勇Bの知性B-で……ぷぷぷ。魔力Dだって。胸と一緒に貧相ですねー、シャーロットたん。上からB73W53H80のBカップ……ロリ枠ですらないから超無残ー。『槍LV2』『乗馬LV2』とか、スキルはそこそこいける? 乗馬の腰使いを見てみたいなー。僕の上で。ふひひー」
「おおっと、そっちの通信兵はユニコーンに乗れないのか。知性A-、魔力C+、武勇C……頭いい眼鏡っ娘が堕ちるって萌えるよね。ふひひー。上からB84W59H84のDカップ。理想体型理想体型。ハンナたんは秘書として可愛がってあげるのが面白そうだねー。スキルも『探査魔法LV1』『戦術LV1』といいの持ってるし」
一人ずつ指さしながら歪んだ笑みを浮かべて確認する魔族。その悍ましさに青螺旋騎士団とハンナは一歩も動けずにいた。戦場の恐怖とは別の、生理的な嫌悪感。
「何よこいつ! 魔族って相変わらずわけわかんない!」
「毎度のことですが、魔族の言動と行動は理解不能ですね」
『気を付けてください。勘ですがとても失礼なことをされている気がします』
シャーロット、ノエミ、そしてハンナの通信。それぞれが一歩引いた目で魔族を見ていた。カエルとかヘビとかそういう動物を見る目で。
そしてテオはと言うと、初めて見る『護り手』レベルの魔族に唖然としていた。まあなんというか、わけわからない。
「わけわかんない? 理解不能? じゃあその体に教えてあげるよ。この転生したヒデキ様のチート能力をね! さあ、そこの女達を捕まえろ!」
言うなり魔族ヒデキは両手をあげる。その動作と同時にユニコーンの足元から数本の触手のようなものが生えてユニコーン騎士たちに絡みつく。足元から太ももに、そのまま力強く引っ張られ、ユニコーンから地面に落とされてしまう。
そして触手は体に絡みついて自由を奪っていく。四肢を拘束して、体中を舐めまわすように這う触手。ぬるぬるとした触感と生暖かい肉の感覚。それが全身に襲い掛かってくる。
「なにこれ……っ! こら、そこは、ぁ!」
「くっ、このような屈辱……許せませんわ!」
『皆さん大丈夫ですか……きゃあああ!』
通信魔法から聞こえるハンナの声から、そちらにも触手が現れたようだ。必死にもがくがその拘束を解くことはできそうになかった。
「ふひひー。このヒデキ様の恐ろしさを教えると言ったよねー? じっくり教えてあげる。手取り足取り腰取りね。奥の奥まで丹念に指導してあげる。誰からがいいかなー」
「待ちなさい!」
「お?」
声を揚げて静止をかけたのは、テオだ。
テオは触手に拘束されることなく、槍を掲げ真っ直ぐに魔族ヒデキに向けていた。




