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男だけど性転換してユニコーン騎士になっている件について  作者: どくどく
グテートス奪還 0日目 ~作戦前夜の姫騎士達
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【選択肢2】 シャーロットと同室

 シャーロットは鉄壁だった。

 その胸が、という意味ではなく拒絶の意志がである。

 半眼になった瞳でこちらを睨み、うっすらと涙すら浮かべている。真一文字に結んだ口は交渉の予知すらないことを示し、互いのベッドの間に敷いたリボンは明確な境界線を表していた。


「ここから、入って来たら、怒るから」

「……えーと……」

「この前みたいなことは、しないでくださいね。騎士長」

(だからなにをしたの? 姉さん……)


 テオは心の中で困った顔をしながら、しかし問いただすこともできずに了承のポーズを出す。元よりシャーロットのベッドに近づくつもりはない。テオの心が女性に興味がある男性とはいえ、この状況でシャーロットのベッドに入って色々する気はなかった。

 湯浴み後、結んでいた赤胴色の髪をおろしたシャーロット。寝巻は鎧と違い体の線をはっきりとさせる。予想よりも細い肩幅。僅かに膨らむ胸と、そこから僅かなカーブを描く腰までのライン。ユニコーンに乗っているときはどこか雄々しいシャーロットだが、こうしてみると女性であることを意識してしまう……。


(揺らぐなボク!? 精神集中!)

「騎士長!? ……あの、どうしたんですか。急に自分を殴って」

「気にしないで。少し気合を入れたかったの」

「……そうですよね。明日は大変なんですから。ふざけてる余裕なんてないですよね」


 急にしおらしくなるシャーロット。

 基本的に個体数が少なく騎乗できる人間も限られるユニコーンは、リスク分散の為に基本的に別地域で活動する。まとまったところを攻められてしまえば、地上を浄化できる者がいなくなってしまう。

 今回の作戦はそのデメリットを考慮したうえでの投入なのだ。それだけグテートスの街が戦略価値が高いかを示している。この街を奪還できれば物資の流通がはかどる。そうなれば国の経済が潤うのだ。

 シャーロットがおとなしくなったのはそのプレッシャーだろう。


「すみませんでした、騎士長」

「ええ、あまり気にしないで。そう思わせる行動をしたのが悪いのですし」


 この場に居ないイリーネ姉さんがだけど、と心の中で付け加えるテオ。


「いえ。あの時は私も慢心していました。それを諫める為と思えば……思えば……」

「……あの?」

「やっぱり駄目! 人として乙女として!」


 顔を真っ赤にして両手を突き出し、拒絶のポーズをとる。あの時のことを思い出すのも嫌だというように。

 当たり前だけど全く身の覚えがないテオとしては姉が何をしたのか非常に興味があるが、かといって問いただす雰囲気ではない。聞いても答えてくれそうにないし、そもそもシャーロットからすればテオは『あの時』の張本人なのだ。

 

「と、とにかく明日に備えて寝ましょう。何もしないから。ね?」

「……本当ですよね? リボン退けて無かったことにするとかしないでくださいね」

「しないしない」

「『空中セーフ!』とか言ってジャンプするのもなしですよ」

「しないしない」


 テオは姉の行動をいつか問いただそうと心に誓った。

 その後、五分ぐらいシャーロットを宥めすかし、ようやく消灯することになる。暗闇のなか、テオは明日の事を思う。魔族との戦い。自分にうまくできるだろうか……。

 不安に震えるテオ。色々ふざけているようだが、姉は実力で騎士長の座を得た強者だ。自分はその影武者でしかない。下手をすれば自分だけではない。ついて来ている三人を危険に晒すことになるのだ。


「ん……」

 

 突然背中に風を感じる。毛布がめくりあがり、そして何か暖かいものがベッドの中に入ってくる。何事と思って振り向けば。


(うえええええ!?)


 そこにはシャーロットの寝姿があった。心地良く吐息を繰り返す唇。少し乱れた寝巻。そしてこちらの寝巻を握りしめ、抱き寄せるように力を込めてくる。

 おそらくトイレに行って、その後間違えてこちらのベッドに入ってきたのだろう。そんなことを心のどこかで冷静に分析しながら、テオは動けずにいた。このまま抱きしめたいという衝動と、それはダメだと惜し留まる理性が必死に綱引きしている。それはテオの精神を激しく摩耗させ――

 

「……あれ? 騎士長、なんで椅子で寝ていたんですか?」

「激しい戦いがあったのよ」


 痛む体を柔軟しながら、少し寝不足のテオはシャーロットから視線をそらしつつ答えた。


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