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ユニコーン騎士団到着

 太陽の日を受けて輝く鎧と槍は銀。

 その兜から除く金の瞳はただ真っ直ぐに前を見ていた。

 微笑みは芸術品の如く無駄のない美しさ。白い肌は新雪を思わせる純粋を思わせる。

 腰かける馬具は夕日を思わせる赤。使いこなされた鐙だが、それが壊れる気配すら感じさせない。

 またがる馬の毛並みは草原の如く。見る者を魅了する優雅さを持ち、強く大地を蹴る野性味を感じさせる。

 そしてその角に生えた螺旋の角。不浄を祓うと言われた神秘の角はそれ自体が騎乗者の純潔の証。

 ユニコーン。それにまたがる女騎士。

 戦闘を進むのは騎士団長のイリーネ。若くして騎士団長に任命された槍の使い手。青の螺旋角の紋章を持つ旗を掲げ、威風堂々と背を伸ばす。

 その脇を固める二体のユニコーンナイト。騎兵槍を掲げ、団長の脇を守るように並走していた。

 魔王コーロラ復活後、このディルストーグ大陸には数多くの幻獣騎士が誕生していた。ペガサスナイトの白翼騎士団、ワイバーンナイトの聖火竜騎士団、ケルピーナイトの海王騎士団……。

 それらは魔王の部下と戦うために結成された、いわば世界を守るための団体。魔に対抗すべく人と幻獣が手を結んで生まれた軍事力。

 彼女たちもその一つ。水を清め、毒を打ち消す幻獣。獰猛な彼らを手なずけることができるのは、純潔な乙女のみ。それ故に稀少な騎士団。

 それが彼女たち、ユニコーンナイト『青螺旋騎士団』。わずか三騎の彼女達は、その稀少さと能力もあって常に戦いの最前線に贈られていた。

 ユニコーンが足を止め、騎士が持つ旗が大きく掲げられる。

「グテートスの町の者よ。魔族との戦いによく耐えた! 我らが王も皆の戦いぶりに感謝している!」

 朗々と響く騎士団長の声。成人したばかりの少女の声だが、それを若造と罵る者はいない。

「だが苦難の日々は終わりを告げた! 我ら青螺旋騎士団、此れより皆とこの街を守る任に就く! デグドラの沼はすぐに浄化され、毒に怯える日々なくなる。朝日を望む日も遠くはないだろう!」

 その声に町中の人間は大声をあげて喜びを示す。魔族の策略により猛毒の沼が広がるこの地方は、常に紫の雲が空を覆っていた。雨は大地を穢し、食物を腐らせる。それと共に人の心も荒んできていた。

 だが如何なる毒であっても浄化するのがユニコーン。街を包む紫の毒雲や沼を生み出した魔族も、幻獣騎士団によっていずれ討ち滅ぼされるだろう。その期待を込めた完成だ。

「青螺旋騎士団バンザーイ!」

「ユニコーンナイトバンザーイ!」

「王国に栄光あれー!」

「沼の魔族を倒してくれー!」

「噂の槍さばき、期待しています!」

 

 そんな民銃を見ながら、旗を持つ団長は心の中で悲鳴を上げていた。


(旗重い! 旗重い! 風が吹くたびに倒れそうになる……!)

(沼の魔物とか……無理だから!)

 

 心の中で悲鳴を上げながら、体面だけは取り繕うと必死になって耐えていた。笑顔を絶やさず、手を振って。だけど悲鳴は場の空気に反比例するように深く沈んでいく。


(そんな期待されても……)


 騎士団長は――純潔をまもった女性の肉体を持つその人は、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。何故なら、


(……『ボク』にはそんなこと無理だから!)


 彼は――そう。テオフィル・ゲブハルトは。

 戦いと無縁のひ弱な少年なのだから。

 なぜ彼が女騎士となって一角獣に跨っているのか。

 事の起こりは二週間前まで遡る。



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