6話
「どこへ行くの?」
私は、男の人に問いかける。が、その人は黙ったままだった。そして私に背を向けてどこかへ行ってしまった。
「待って!」
私は勢いよく起き上がった。
「夢......また。何なんだろう、よく見るこの夢」
すると、祐一さんが入ってきた。
「ど、どうした!?」
私を見るなり彼はそう言った。私は涙を流していた。何で涙を流すのか、私は分からなかった。でも、さみしい気持ちだったことはわかっていた。
「すみません。夢を見ただけです」
私は心配かけないように、笑ってそう言った。彼はほっと胸を撫で下ろした。私も同じように、ほっと胸を撫で下ろした。祐一さんに下手に心配をかけたくない、私はそんなことを考えていた。
「漬け物作りのことを教えてくれますか?」
「そうだな。じゃあ、準備して昨日の部屋へ来い」
私は彼に言われた通り身支度を整え、軽く朝食をとり、昨日の部屋へ向かった。
「祐一さん?いますか?」
私は辺りを見回した。近くには祐一さんはいなかった。不安になり、探しに行こうとした時だった。
「悪い。持ってきたぞ」
祐一さんは現れた。しかも壺をもって。
「何ですか、それ」
私は問いかける。彼は笑顔になり、漬け物作り講座の道具、と答えた。私の頭上にはハテナマークでいっぱいだっただろう。そんな私をよそに、彼は続けた。
「今から、漬け物を作ってもらう。言う通りにしろ」
「はい。でも、いきなりですか?」
「何事も実践だ。なっ」
と彼は笑った。私は不安でいっぱいだった。そして、私の初漬け物作りが始まったのだった。