22話
「覚悟は決まったようだね」
「はい、ありがとうございました。私には待っている
人がいます。その人のためにまだ死ぬわけにはいき
ません」
うん、と私の前にいる人はうなずいて向こうを指差す。そこには扉があった。私が以前、戻ったドアだ。私はそこに向かって走る。こんなに思い切り走ったのはいつぶりだろうか。走るっていいな。気持ちがスッキリする。このとき私は、走るのはこれが最後だろうと覚悟した。そして扉の向こうへ出た。
「ん......お母さん」
「ミチカ! あぁ、良かった。本当に良かった。もう
何日も目が覚めないからどうしようかと......」
あの時のようにお母さんは私を思い切り抱き締める。苦しいけど、すごく暖かい。そして、安心する。やっぱりお母さんはいいな、とつくづく思う。それにしても何日もってどれぐらいなんだろうか。疲れているせいで、喋ることが出来なかった。おまけに喉も渇いている。
「意識は戻りましたが、以前申したことには」
「はい、覚悟はできています。先生、もうしばらくこ
の子をよろしくお願いします」
お医者さんはうなずき、病室を後にする。さっきの、何日もについてお母さんに聞くとすぐに答えてくれた。
「あなたが意識を失って、一週間が過ぎたわ」
「一週間......! 祐一さん!」
「えぇ、もうすぐ懲役を終えると思うわ」
私は胸がドキドキし始めた。もうすぐ祐一さんに会える。それが嬉しかった。
「お母さん、お父さんのところで、説明受けてくるわ
ね」
「うん」
そうして私は病室に一人残された。眠ろうと思ってベッドに横になりかけたその時だった。ドアのところに人が立っている。私はその人の正体に気づいたとき、驚きのあまり、叫びそうになった。