2話
私は強盗に連れられどこか知らないところへ行く。目隠しされ、腕も縛られている。身動きがとれず、じっとしていた。そんなことを考えていると、車が止まった。
「降りろ」
強盗は冷たく言いはなった。私は素直に従う。ここで死ぬのはごめんだ。何せまだ、恋なんかしていない。半ばやけになってついていく。底冷えする部屋につくと、強盗は目隠しをといてくれた。視界が開け、そこを見ると、薄暗い部屋にいた。私たちが入ってきた入り口以外は、光の差し込む場所など微塵もなかった。
「ここでじっとしていろ。変な真似するなよ」
強盗は再び冷たく言いはなった。私の心は恐怖で凍りつく。私は強盗の言う通り、じっとしていた。そうしてどれくらい経っただろうか。入り口からは、光が差し込まなくなっていた。すると、その入り口から男が入ってきた。
「食え。お前は人質だ。飢え死にされても困る」
「あ、はい」
私はその男が強盗だとわかり、目を見開いた。私はもっと恐ろしいような、形相が悪いような顔を想像していた。強盗に限らず、犯罪者なら目付きが悪いものだと勝手に決めつけていた。しかしこの男は私の想像とは裏腹にとても優しそうな顔をしていた。しかも、美顔。私はその顔に見とれていた。それに気づいた強盗は、私をチラッと見、その場から出ていった。
「なんか、不思議な人。強盗とは思えない」
私はぶつぶつと独り言を言いながら、彼から渡されたご飯を食べた。
私がご飯を食べ終わると同時に睡魔が襲ってきた。私は誘われるように深い眠りにおちた。その日、夢を見た。私は何かを一生懸命伝えようとしていた。相手は男の人だった。その人は優しく微笑み、どこかへ行ってしまった。
「待って、行かないで!」
目が覚めた私の頬に、何かが流れてきた。私は驚いた。夢で泣くなんて、と自分に呆れた。すると、扉の開く音が聞こえた。入ってきたのは強盗だった。
「起きていたか。おいお前、こっちで手伝え」
「え、あの何を」
「早く来い」
私は軽く身支度を整え、彼のあとについていった。
「あの、これは......」
私は驚いた。彼に連れられた先には、壺がたくさんあった。
「壺だ。見てわからないか?」
「いえ、中身の方です」
「漬け物だよ。壺って言ったら、やっぱり漬け物だろ
うよ」
私は更に驚いた。漬け物が入ってるなんて普通思わない。少なくとも私はそうだ。
「壺の整理を手伝え」
私に告げられた言葉は、驚くべきものだった。