19話
私が実家に戻ってきて、はや5年と半年過ぎた。私の体調は安定していて、悪化することはなかった。祐一さんがあと少しで戻ってくると思うだけで、胸が踊る気持ちになる。今日は、数年ぶりに祐一さんの作る漬け物を見に行く日だ。嬉しすぎてどうにかなりそうだったが、そこをグッと抑える。
「よし、そろそろ行こうかな!」
リビングに行くと、お父さんとお母さんがいた。
「行くのか?」
お父さんが心配そうに言う。私はその気持ちに嬉しくなる。こんなにも心配してくれる人がいる、それだけで私は十分幸せだと思った。そんなお父さんに笑顔を向ける。
「いってきます!」
そう言って、私は漬け物の庫を目指す。家からは思いの外近く、驚いた。
漬け物の庫についた私は胸がいっぱいになった。祐一さんと過ごしてきたこの場所は何も変わっていない、そのままなのが嬉しくてしょうがなかった。
「それだけ幸せってことなのかな......」
私が呟いた言葉は自分でも感じるくらい悲しげなものだった。私はすぐに漬け物めがけて駆けていく。そして、手慣れたように、漬け物を見ていく。いくつもある壺を見ていたら、かなりの時間が経っていた。祐一さんが言った通り、漬け物はなんともなっていなかった。それに安心したら、お腹がグウ、となった。とても静かでその音は庫中に鳴り響く。私しかいないのだが、一人で赤面する。無性に恥ずかしかった。
「そういえば、お昼まだだった。漬け物一口食べて帰
ろう......」
そして、漬け物を一口頬張る。やっぱりこの漬け物は美味しい。美味しいけど、
「しょっぱい......」
私は気がつけば涙を流していた。我慢できず、思い切り泣いてしまう。祐一さんに会いたい、そんな気持ちが溢れ出る。ずっと我慢していたのに、後からそんな気持ちが出てきた。
思い切り泣いたあと、自宅へ向かう。私を見たお父さんとお母さんは驚いた顔をしていたが、何も聞かないでくれた。ちゃんと分かっているのかな、と一人でそんなことを考えていた。