18話
眠りに落ちた私が起きたのは翌日だった。自分でもビックリするくらい良く眠れた。安心したからなのかもしれない、そう思う。昨日、お父さんに交際を認めてもらってから、いっそう私の死にたくない気持ちは高まる。すると誰かが部屋に入ってきた。
「お父さん? ......あ、看護婦さん」
「血圧をはかりに来ました。由岐さん、体調はどうで
すか?」
「はい、大分いいです」
そうですかぁ、と看護婦さんは言って、私の血圧をはかり始める。はかり終わってから、看護婦さんは部屋を出た。看護婦さんと入れ違いにお医者さんが入ってくる。
「体調は良さそうですね。血圧も問題ありませんでし
た。もう、退院できると思いますよ」
私はその言葉に目をキラキラさせる。退院すれば、普通の生活に戻れる。家に帰れる。嬉しさがどんどんわき出てくる。私もいい大人だ。こんな些細なことで嬉しいとは、まだまだ子供だな、と自分でも思う。しかし、とお医者さんは言った。
「制限、ですか?」
私の言葉に、はい、とうなずく。退院できると言っても、病気は治ってはいない。当然だと思っている。お医者さんはその制限について説明し始める。
「まず、運動をしないこと。ウォーキングぐらいなら
構いませんが、キツいと感じたらすぐにやめてくだ
さい。あとは温度差のあるところに行かないこと。
心臓は敏感なので、ビックリさせないように」
私はお医者さんの言うこと、一つ一つに相づちをうちながら頭の中に刻み込む。
それから一週間後、検査の結果からは異常が見つからなかったため退院し、実家で暮らすことになった。実家に帰ると、嬉しさと懐かしさで胸がいっぱいになった。やっぱり、実家が一番だと思う。と同時に、家出したことを思い出す。お父さんとお母さんは気にしてないみたいだったが、私は今になって罪悪感でいっぱいになる。少し、あとに引けるが謝ることにした。
「お父さん、お母さんあのね......」
二人はこちらをじっと見つめる。謝ることがこんなに大変だとは思いもしなかった。腹をくくり、一気に、勢いにまかせて謝る。
「勝手に家出してしまってごめんなさい!」
私は深々と頭を下げる。二人は驚きながらも、優しく抱き締めてくれた。