17話
私の顔は強張っているだろう。自分でも分かるくらいに......それに気づいた様子のお父さんは私に真剣な眼差しを向ける。
「本当のことを言ってくれ。どうなんだ?」
私は唾を飲み込む。私の口はカラカラに乾いていた。逃げられない、そう感じた私は震える、か細い声で答える。
「私は祐一さんのことが好き、です」
その言葉にお父さんは深くため息をつく。私は全身の震えが止まらない。お父さんの言葉が怖くて耳を塞ぎたくなる気持ちを、我慢した。
「実はお父さんとお母さんでずっと話してた。もしお
前が、祐一君が戻ってきたときまだ生きていたら、
お父さんとお母さんは交際を認める」
「え......」
私は面食らう。絶対に許してくれないとそう思っていた。お父さんを見ると、微笑んでいた。嬉しい、そんな感情よりも疑問の方が大きかった。
「何でって顔してるな。気付いたのは助けに行ったと
き。あの時のお前を見て恋しているとすぐに分かっ
た。許したのは、祐一君が悪い人じゃないから」
どうしてそう思ったのだろう?そんな疑問が浮かび上がる。普通、犯罪者なら悪い人だと思う。にもかかわらず、悪い人じゃないと、確信している。私はお父さんにその疑問をぶつける。
「悪い人じゃないって何で分かったの?」
「彼がお前を病院に運んだとき私たちに連絡してくれ
た。駆けつけた私たちに迷わず謝ったんだ。何度も
何度も謝った。そんな彼を責めることは出来なかっ
た。その時に彼は悪い人じゃないと確信した」
そうだったんだ、と祐一さんに悪かったなと思った。彼が悪い訳じゃないのに何度も謝らせてしまった、と罪悪感が出てくる。今すぐに彼に会いたい。でも、出来なかった。私は安心感により眠ってしまった。