14話
伸びてくる手に私はドキッとした。そして今度は違和感などではなく頭の中にはっきりとあるものが現れる。
(この人じゃない。私がとるべき手は......祐一さん!)
そう思った瞬間、私の手を掴みかけているその手を振り払った。そして思ったことを素直に述べる。
「私は、まだそっちへは行けない! 約束があるの。
だから、その手をとることはできない!」
「あえて苦しい道を選ぶと言うのか?お前の進む道に
は苦しみしかないというのに......」
そう言う人は悲しそうな顔をしていた。私は付け加えて言う。
「それでも、私には待っている人がいるの。それこそ
苦しみも忘れられるほど、大切な人が......」
扉の前のにいる人はうつむいていたがすぐに顔をあげる。そして何か言おうとし、諦めたような、力のないため息をつく。そして一言私に耳打ちして消えてしまった。
ー全てが嫌になったらここへ来るといい。歓迎するー
その言葉にありがとう、と呟きそこで私の意識が途切れたー
「ミチカ! ミチカ!」
何度も何度も私を呼ぶ声。重たいまぶたをうっすらと開けるとそこには見慣れた顔の人がいた。
「お母さん?とお父さん?」
目の前には私の生みの親がいた。
「ミチカ!」
「!」
いきなり抱き締められたため、驚いた。しかも泣きながら。心臓病である私にとっては驚かせるのは良くないのに、と内心思っていたが心配かけたと思い、しばらくはされるがままに私はなっていた。そして無事に私は大事を乗り越えた。