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13話

私は闘病生活を続けていた。祐一さんと別れてから半年が過ぎた。病気の進行を遅らせることはしている。でも、症状は酷くなるばかりだった。私自身、諦めるつもりはさらさらないのだが、近頃は体力の限界と言うものを感じている。

「由岐さん、血圧をはかりに来ました」

私は返事することができなかった。不審に思ったのだろう。看護婦さんは駆け寄ってきた。

「由岐さん、大丈夫ですか!?」

看護婦さんは医者を急いで呼んだ。医者はすぐに来てくれた。一生懸命声をかけているが、私はその声が遠くなっていくのを感じながら意識を失った。


「ミチカ、大丈夫か?」

「祐一さん?」

彼は私の声を聞いて微笑む。そして回れ右をし、どこかへ行ってしまった。

「祐一さん、待って! 置いていかないで!」

私は頭のどこかに違和感を感じた。

「置いていかないで? 違う。何かが違う。私は置い

ていかれてなんか......置いていかれているのは、祐

一さん?私は彼を残してどこへ行くの?」

自分自身に何度も問いかける。しかし、答えは出ない。ふと、どこからか声が聞こえた。必死に私を呼ぶ声。まぶたが重くて開かない。それに気だるい。

「まぶしい! 何?」

私の目の前に突如扉が現れた。扉の向こうは真っ白な世界が広がっていた。

「こっちへおいで、苦しみなどない世界へ」

「苦しみがない?そんな世界あるわけ」

「あるさ。こっちには快楽しかない。病気の苦しみ

からも解放される。さあ、おいで」

扉のところに立っている人は私に手を差しのべる。私はその手に向かって自分の手を伸ばした。扉のところに立っている人は伸びてくる私の手を掴まえるべく自らの手を伸ばしてきた。

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