12話
私はうつむいていた。祐一さんはしばらくして口を開いた。
「お前はこのままここで治療を受けろ。漬け物はもういい」
私はその言葉に反論する。
「私は約束した。漬け物は私が管理するって」
すると、彼は私を抱きしめた。私は彼の腕で包み込まれていた。そして、こう告げた。
「漬け物はちょっとやそっとじゃ死なない。でも、お前は簡単に死んでしまう......」
彼は震えている。私はその言葉に涙していた。彼はそのまま続けた。
「もう、大切な人を失うのは耐えられない。死んだらもう、生き返ることはできない。だから......」
「ごめんなさい。私......自分勝手で祐一さんのこと何
にも分かってなくて」
私は彼に謝り続けた。私の目からは止めどなく涙が流れる。泣きながら私の気持ちを伝える。
「私、死にたくない。祐一さんと離れたくないよ。私
は祐一さんのことが好きです。できることならこの
ままこうしていたい。このまま、時間が止まればい
いってそう思う......」
私は自分で何をいっているのかわからなかったが、胸に溢れてくる気持ちをひたすら彼に伝え続けた。彼はずっとうんうん、と相づちをうってくれる。私は初めてこんな気持ちになった。
しばらく抱き合っていた私たちは、病室の窓から差し込む夕陽に包まれていた。すると祐一さんが話始めた。
「俺は自首する。だから......待っててくれ。必ず迎え
にくる」
「はい。待ちます。ずっと......病気とちゃんと向き合
って」
祐一さんは私に優しく口づける。私の目からは一筋の
涙が流れる。そして、私たちは、お互いにお別れをした。祐一さんは私の病室をあとにした。彼の後ろ姿は悲しそうだった。
翌日、ニュースが流れた。強盗が捕まったと。そして、懲役は6年だと言う。私は彼との約束を守るべく、苦しくて厳しい闘病生活に入った。そして、彼を待ち続けた。