1話
「ありがとうございました」
私、由岐ミチカはいつものようにレジをしていた。私の仕事はちょっとばかし有名なスーパーでのアルバイト。大学を卒業したのだが就職先が見つからなかった。就職難とは誰が言ったのか、まったくその通りだ。仕方なく私はスーパーでのアルバイトを始めようとした。面接で見事に合格した私は、そこでの仕事が始まった。
私はごく普通の社会人だ。朝から夕方までは仕事、そこからは家で仕事探し。今のアルバイトの給料が他より良いとは言え、今住むアパートの家賃が払えなくなるのは、時間の問題だ。大学で貯めていたお金も底をつきかけている。
「はぁ」
私はひとつ、ため息をつく。すると、お店のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
私は元気にあいさつをした。そのお客さんを見て目をみはった。ポケットに手を入れ、顔を隠している様子だった。これは怪しい、と思ったその時だった。
「手をあげろ! 誰も動くなよ。変なことしたらこい
つを殺す」
怪しい人の一番近くにいた私は、人質にされてしまった。私はパニックになる。
「いや! はなして!」
「うるせぇ! 死にたいのか!?」
私は、ぶんぶん首を横に振る。と同時に黙りこんだ。恐怖のあまり、声が出なくなってしまった。
「金をこいつに入れろ。いいな、余計なことはするなよ」
強盗はそう言い、私のこめかみに拳銃を突きつけてきた。他の店員さんは急いでお金を用意した。私は体の自由がきかず、硬直していた。
しばらくすると、お金の用意ができたらしく、店長が重たそうな鞄を持ってきた。よかった、と私が安心したときだった。強盗は私を連れて外へ出た。しかも、車に放り込まれた。このまま、人質から解放されるだろうとたかをくくっていた私は再びパニックになった。