転校生
高校への通い道、海岸の近くに住む僕は毎日海を眺めて登校する。
その日も自転車を走らせながら海を眺めていた。
「ちょっと失礼。 この辺りに海陽高校があると思うのだけれども、分からないかしら ?」
見たことない子だった。
腰元まである髪の毛は綺麗で、顔は顔も可愛いというより綺麗な作 りをしている。
ぽーっと見とれていると、
「知らないのね。 突然呼び止めて申し訳なかったわ」
スタスタと歩き去ろうとして、
「あぁ、海陽高校ね。 そこ毎日通ってるから知ってるよ」
だから送るよ、といって自転車の後ろを指差す。
「乗って」
「いいわ、悪いし」
「でもこの時間で徒歩は確実に遅刻だよ」
一瞬躊躇ったものの、しぶしぶといった感じで自転車の後ろに腰か ける。
「それじゃ、しっかり捕まっててね。 少し遅刻しそうだから飛ばすよ」
「ちょっと待っ…」
言い終わる前には、全力でペダルをこぎ高校へと全速力。
そして…。
僕は今、教室の前に立たされている。
遅刻した罰だそうだ。
正直これまで何度も遅刻して、立たされ慣れている。
自慢にはならないが…。
そして、後ろに乗った彼女はというと、
「立花 双葉です。 よろしく…お願いします」
教室で転校生として自己紹介していた。
「立花だって遅刻したのに…」
つい独りごちてしまう。
休み時間の度に、立花は生徒たちに囲まれていた。
果てはよそのクラスの連中も見に来ていた。
それだけ立花は綺麗だったし、何も言わなければそこらのモデルに も退けをとらないだろう。
そして放課後。
立花の回りから人が消えた。
物理的に消えたのではなく、ただ皆が立花を避け始めただけなのだ が…。
理由は至って簡単。
立花の口の悪さが原因だった。
曰く、
「私は見世物の猿やパンダではないの。 あまり低俗な視線で見るのはやめてくれないかしら」
曰く、
「私は犬畜生のように群れる習性は持ち合わせてないの。 悪いけれど、お仲間をお探しなら他を当たってくれないかしら?」
そして、休み時間の度に、群がる生徒たちに淡々と言葉をぶつけ、 立花は今1人である。
ガタッと椅子を下げ、立花が立ち上がるとクラスの視線が集中し、 そして何事もなかったように振る舞うクラスメイト。
彼らの、クラスメイトの方針は立花を無視する方向に決まったよう だった。
立花もまたそれを望んでいたような節がある。
「まっ、僕には関係ないか♪」
僕も傍観者の1人に徹するつもりだった。
そして、そんな夢は次の瞬間に霞のように消え去った。
「あの…」
後ろから声が届き振り向くと、そこには転校生の姿があった。
「呼んだ?」
「いえ、あの…」
「そっか」
気のせいかと、帰ろうと自転車に股がると、
「待って、その…えっと…」
その後を言い淀む。
場所は校門前。
帰る生徒たちが好奇の視線は、この身に痛い。
「とりあえず…歩きながら聞こうか」
立花はこくりと首を振り、自転車を押す僕の後ろに付いてきた。
「それで、何のようだったの?」
振り返って、後ろを付いてくる彼女に問う。
「…ぃぇ…」
「ん?」
「いえの…りみち…らないの」
声が小さすぎて、途切れ途切れにしか聞こえない。
「ごめん、もう少し大きな声で」
言うと、彼女はスカートを強く握り締め、そして、意を決したように顔をあげ、そして口を開いた。
「家への帰り道が分からないの!
あなたと出会った所まででいいから、送ってくれないかしら!?」
言い終わるや、荒い息を落ち着けるように息を吐き出す。
「…つまり…、帰り道が分からない?」
「そう言ってるでしょ!」
余程恥ずかしいのか、プルプル体が震えている。
「いいよ、後ろ乗って」
さすがにこんな彼女を置き去りに帰る気にはなれない。
「ありがと…」
小さく呟いた立花の声は確かに聞こえ、クラスでの人を寄せ付けない彼女よりは幾分も可愛らしく感じた。
後ろに乗った彼女は何も喋ること無く、だからといって、こちらから話し掛けることもなく静かに海辺を帰った。
「今日はありがと。
行きも帰りも送ってもらって」
そういえはそういうことになるのか。
「それじゃ」
「えぇ、また明日」
それだけ言って、立花とは海の見える投稿途中の道で別れた。
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この作品はこれで終わりですm(__)m
なんとはなしに書いた作品なので、ここでダウンです
読んで頂きまして、ありがとうです(*^ー^)ノ♪