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言いたいこと

言いたいことがある。

作者: 柊水仙

 俺は鉛筆だ。ついでに言うとHBだ。持ち主は高校生だ。

 持ち主に初めて会ったのは奴が小六の時。卒業式が近かったな。俺は鉛筆として働ける時が来た、と喜んだ。奴は俺と先輩達(俺の他に二本いた)を毎日使った。が、奴は中学生になって、シャープペンシルを使いだした。

 それでもまだ俺達の方をよく使った。

 先輩の一本が役目を果たし終え、俺に後輩ができて一週間くらいたった頃。俺は最初の三分の二くらいになっていたな。突然奴はシャープペンシルばかり使うようになった。

 どうやら奴は同級生がみんなシャープペンシルを使っているのを見て、自分だけ鉛筆を使っているのはおかしいと思ったようだった。

 こうして俺はまだ生きている。奴が中学生のうちに鉛筆としての役目を果たし、短くも有意義な一生を終えるはずだったのに!

 こんな惨めな俺だが、怒ったり悲しんだりしているばかりではいられない。何故かたまに持ち主は俺達鉛筆を使うからだ。だから俺も今では半分くらいになった。先輩はかなり短くなった。後輩はまだかなり長いが、今あいつは一ヶ月ぶりに使われている。そろそろ俺の出番が来るかな。

 お! 出番だ! 俺は筆箱の外に出された。今は数学の授業中だ。だいぶ丸くなった後輩が筆箱に戻されていく。俺は持ち主に持たれる。相変わらず間違った持ち方だ。俺の相棒のキャップ(持ち主が小四の頃から使われているらしい)も、「高校生にもなってまだ直らないのか」と呆れている。ん? 持ち直したぞ。たまには正しく持とうとしているようだ。

 しばらくして正しい持ち方が嫌になったようだ。いつもの間違った持ち方に戻った。キャップは「今回はこの子にしては長くもったんじゃないか」と少し褒めた。シャープペンシルが言うことには、奴は持ち方を直そうとして正しく持ってからだいたい三十秒で間違った持ち方に戻るらしい。ちなみに、俺が毎日使われていた頃は直そうともしていなかった。

 それから五分ほどで授業は終わった。俺は後輩ほど丸くならなかった。 持ち主は家に帰っておやつを食べた後、宿題をするようだ。宿題は家のシャープペンシルの仕事だ。奴が小学生の時は、家用も学校用もなかった。ん!? おお! なんだか知らないが奴は宿題でも俺達鉛筆を使うようだ。俺は外に出された。

 五分経った。俺は体がおかしいことに気付いた。奴は俺の異変に気付いていない。あっ、ちょっと待て、これ以上は、ぐあああああああああぁぁぁぁぁ……


『あ、折れた』


 持ち主ののんきな声が聞こえる。奴のいろんな文房具から心配される。ああ、痛い。先輩の出番になったようだ。先輩、後は頼みます。


ガリガリ……


 宿題を終え、持ち主は俺達を削った。折れた俺を最初に削ってくれた。俺達は削られてすっきりした。削られるのは痛くない。人間が髪や爪を切っても痛くないようにな。だけど折れるのは痛い。あー、痛かった。


 俺はきっと、奴が高校生の間は死なず、大学まで行くことになるだろう。先輩は行かないかもな。後輩は大学卒業まで残るかな。こいつは「使われないで机の中で待機してるのよりはいいです」と言っている。

 おい、持ち主、これからも俺達鉛筆を使えよ。あ、なるべく折らないようにな!

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、こんばんは。のっこといいます。 お話の着眼点がユニークで、とっても面白かったです! 七色色鉛筆くんのお話から読み始めて、止まらなくて、鉛筆さんまで来ちゃいました。シャーペンちゃ…
[良い点] 読ませていただきました とてもユニークな題材で終始ニヤニヤしながら読んでしまいました これからも更新頑張って下さい
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