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隣国で愛されますからお気になさらず  作者: ノーネアユミ


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5/10

5 別れ

 戦端が開かれて一ヶ月。

 戦いは公爵家の圧勝だった。


 王軍を率いたのは騒ぎの元凶オーディナル。

 彼の指揮した近衛隊が、まったく役に立たなかったのだ。



 戦いは始め、教本通りに進んだ。

 それはよくある展開だが、そこから乱戦になった途端に王軍はドンドン崩れだしたのだ。

 王軍はお手本通りの戦法しかとれなかった。


 実戦を知らない王族が軍を率いる時は、必ずお目付け役の老将がつけられ実際の指揮をとる。

 しかしオーディナルはベテランの意見を無視した。

 そして作戦をデューカスやサーベルトと()()()()()決める。



 あきれた老将軍は本陣の防御に徹したそうだ。王子たちが逃げても全滅を避けられたのはそのおかげだとか。


 そう、雲行きが怪しくなったオーディナルは戦線から逃亡した。わずかな供を連れて。



 公爵家の追撃により王子は深手を負い、サーベルトは行方不明に。


 あわてた王家は公爵家の要求を全て飲んだ。

 独立を認め、正式に謝罪を入れ、賠償金を払う。

 鉱山と隣接する都市1つが公爵家の物になった。



 そして新生ベネット公国とヴァルール王国は国交を結ぶ。


「我が国からも支援が行きましたから」


 アルベールから聞いていたので負けるとは思わなかったレジーナだけど、戦勝の報告には涙を流した。


「家族も知り合いも全員無事ですわ」



 領地に平和が訪れた。

 しかしそれは同時に別れももたらす。



「アルベール様‥わたくしは領都に帰りますわ」

「ああ、名残惜しいがあなたを引き留める理由がなくなってしまいました」


 東屋での2人きりのお茶。

 それも今日で最後だろう。


「その、気がついているかも知れないですが‥私はあなたのことを、愛しています」


 レジーナの頬がバラ色に染まる。


「わたくしも、ですわ」


 アルベールは椅子から立ち上がってレジーナを抱きしめた。


「本当に? うれしくておかしくなりそうです」

「でも、わたくしたちは‥」


 レジーナだって嬉しいのだが、素直に喜ぶことはできない。


 貴族の婚姻は家同士の結びつきが第一。

 独立を果たした実家にとって、一人娘の婚約は慎重に決定する必要があった。



「それでも待っていて下さい。せめて1年、私に与えてくれませんか」


 さし出されたエメラルドの指輪を、レジーナは断らなかった。




 数日後、公爵家の馬車が迎えに来た。この国に来た時の粗末な馬車とは比べもつかない豪華さだ。


「アルベール様、みなさん、大変お世話になりました。この御恩は一生忘れません」


 レジーナの手をアルベールは握る。

 別れのあいさつにただの握手は味気ない。

 しかし彼はレジーナの夫でも婚約者でもないのだ。


 ただ助けた人と助けられただけの関係。


(この方のことはあきらめて、笑顔でお別れしませんと)


 アルベールをまっすぐ見つめるレジーナの頬へ、彼はそっと口づけた。


 戦術は話し合って決めちゃダメ。


 「異世界でヤバい妹になった私は生きるためにあがく」もよろしくお願いいたします。

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