4 愛情
誤字脱字報告ありがとうございます。^_^
「今まで、ありがとうございました。御恩は一生忘れませんわ」
別れの言葉に、アルベールはテーブルに手をついて身をのりだしてくる。
「待ってくれ、こちらにもあなたの国の情報は届いている。今公爵家に返すわけにはいかない。お父上には私から文を届ける。だから‥しばらくは我が家に留まってくれないだろうか」
泣きそうな顔で懇願された。レジーナも断りたくない。
「お言葉に甘えてしまって、よろしいのかしら」
心苦しいが、彼ともっといられるのだと思うと幸福に包まれる。
アルベールの提案は実家からの手紙も推奨してきた。
『レジーナはしばらくそちらで休むと良い。ポンコツ王子は父に任せて』
「こんなに幸せで許されるのかしら」
「問題などないさ。ところでせっかく都にいるのだから、色々見物して回りませんか?」
アルベールの勧めで、王立劇場へ足を運ぶ。
絢爛豪華な装飾の建造物に、レジーナはクラクラしてしまった。
「こんな豪華な劇場はトーン国にはありませんわ」
貴賓席で聴く音楽も一級品だ。
弦楽器からはとろけるような調べがつむぎ出される。
「何て素晴らしいの」
うっとりするレジーナの手を、アルベールが包みこんだ。
「良かった。あなたに喜んでもらいたかったのです」
レジーナは顔を赤らめて何も返せなくなってしまう。ストレートな好意に慣れていないのだ。
それからアルベールは数日おきに、ショッピングや服の仕立て、有名なギャラリーの案内とレジーナを連れ出してくれる。
(なぜ、この方はここまで良くして下さるのかしら)
ただの親切心だけとは思えない。
ある日の新聞にレジーナは目を見張った。
『トーン国で内乱 ベネット公爵家、独立か』
公爵家が王家に反旗を翻したのだ。
「まさか、わたくしをこの国へ置いたままだったのはこのため?」
震えるレジーナの肩をアルベールは引き寄せる。
「お父上は君を争いに巻きこみたくなかったのですよ」
「でも、わたくしのために」
涙がこぼれ落ちてしまう。
小さい頃はとてもかわいがってくれた父だが、レジーナが学園に入ってすぐ仕事で忙しくなる。
母親は病気がちで領地へ静養におもむいているし、1人っ子のレジーナにとって心の支えだった父と会えなくなるのは苦しかった。
レジーナが寮から帰宅してもほとんど顔を合わせないほどで、しだいに彼女は父との距離に慣れてしまった。
(わたくしは愛されていたのね)
アルベールがハンカチで彼女の涙をぬぐう。手つきがいつもよりぎこちない。
レジーナは優しい彼に笑いかけた。
誰かに愛されている、それは何より心を強くするようだ。
新聞には他にも色々書いてある。
『我が社が入手した情報では、第三王子のオーディナルが公爵家の令嬢との婚約を独断で破棄し、トーン国王に激怒されたらしい』
(やっぱり独断でしたのね)
レジーナは王子の性格からして誰にも相談せず勢いで決めたのだろうと推測していた。
『名誉を傷つけられたベネット公は先日、王国からの独立を宣言した。領地の境界には続々と兵が押し寄せている』
レジーナは新聞を握りしめた。
尊敬する父が、領地の民が、戦いにくり出されるのだ。
「ベネット公は真っ先に戦況を伝えてくれる手はずだ。なに、戦闘はすぐ終わるよ」
アルベールは優しくレジーナの頬をなでる。
正月にテレビで視聴したウィーンフィルハーモニーがすごかったので、ちょこっと取り入れてみました。




