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隣国で愛されますからお気になさらず  作者: ノーネアユミ


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2 暗闇での出会い

 国外追放になったレジーナ。


「おい、起きろ」

 体が乱暴に揺り動かされる。


「さっさと出ろよ」

 髪をつかまれる。


「痛い!」

 レジーナは思わず悲鳴を上げた。


「ここはもう王国の外だ。俺はこの町で泊まってから帰る。お前は好きにしろ」



 出発したのは昼間だったがもう夜中になっている。明かりがちらほら見えた。


 そう言われても知らない町でたった1人きり。


「あの、わたくしはどうしたら」

「知らねえな。とにかくこっちは町まで送ってやったんだ。感謝して欲しいくらいだよ」


 実際は泊まる宿を確保するためだろうが、えらそうな衛兵はその場をさっさと立ち去った。




 レジーナは心細さに震えが止まらない。


「誰か、助けて‥」


 願ったところで助けなど現れはしない。


 オーディナル殿下の婚約者としてふさわしくあるよう睡眠時間をけずってまで努力した時。

 離れ続ける殿下の心をつなぎとめようとするも、努力が全くの無駄に終わった時。

 そしてピンク髪の少女から悪意を受け続けた時。


 何度願ったことだろう。

 しかし助けなど来なかった。



 季節は夏だ。凍え死にすることはないだろうが、暗闇で1人なのは不安すぎる。


 レジーナは手のひらから火花を出した。明かりがあるとないとでは安心感が違う。


「お腹空いたわ」


 魔法学園で色々習ったのに、食べ物を出す魔法は教わらなかった。

 それ以外にも、貴族ばかりが通う学園では生きるための技など教えてはくれない。



(これからどうやって生きて行けば良いの?)


 火花は一瞬レジーナの手を光らせるが、こぼれ落ちて魔力が切れるとすぐ消えてしまう。


 暗闇で光る火花は美しかった。思わずクルッと振りまいてしまうほど。

 ドレスの端が、シュッとこげて我に返る。


(ああ炎の魔法は危ないのよね、気をつけなくちゃ)


 レジーナはそんな当たり前のことさえ思い至らないほど弱っていた。




「どうされました?」


 ふと優し気な声が聞こえた気がした。


「失礼、トーン国の方とお見受けします。こんな真夜中にご令嬢が1人きりなど‥お付きの者はどちらに?」


 瞳を開くと立派な身なりをした男性がいた。

 質問に答えようとすると途端にはずかしくなる。



「あの、わたくし1人ですの」

「宿はどちらで? お送りしますよ」


 レジーナは不安げに目を泳がせる。

 親切な人だろうが、事情を話しても良いのか分からない。


「決まっていないのですか? 私の宿で良ければご一緒しましょう」


 気がつくとそっと手をそえられている。



「あ、あの‥あなたは」

「怖がらないで、と言っても無理でしょうね。私の名はアルベール。商売でこちらに参っております」


(美しい方)


 きらめく銀髪に褐色の肌。レジーナを見つめるエメラルドの瞳。

 宵闇も彼の容姿を隠しきれないのだろう。


(オーディナル様より立派‥絵本に出てくる王子様だわ。でも、いけない)


 レジーナはうっとりしかける自分をいさめた。


「わたくし、こちらに置いて行かれただけで、お金を持っておりませんの」


 公爵令嬢ではあるが、宿に泊まる時は料金を払わなければいけないことくらい知っている。


「‥訳がおありのようですね。構いません、宿は余分に取ってあります。私は護衛の部屋で休むので、どうか私の部屋をお使い下さい」


 今のレジーナに断る選択肢はなかった。

 心の中は恐ろしさでいっぱいだが、このきれいな人について行く。




 暗くて見えていなかったが、彼の数歩先には護衛らしき人間が3人いる。

 レジーナは手を取られながら宿屋に入った。


「お客さん1人追加ですか、はい了解です」


 明るい女将さんが切り盛りしているようで、恐ろしくはない。


「夕飯はこちらの食堂で」


 食堂ではアルベールがイスを引いて座りやすくしてくれる。

 元婚約者からは1度もされなかったから、それだけでレジーナは彼に好感を持った。

 


 温かい食事をふるまわれる。先ほどの絶望を思えば奇跡のような待遇だ。

 スープを飲み干すとリラックスできた。


「お名前をうかがってもよろしいでしょうかレディ?」

「レジーナ・ベネットです。あの、ここはどこの国なのでしょうか? トーン国から連れて来られた御者に、置いて行かれてしまって」


 レジーナが今いる国さえ知らなかったことにアルベールたちは驚いている。


「そんなひどい目にあったとは‥ここはヴァルール国。国境付近の町です」


 その国ならレジーナも知っていた。



 食後は清潔な部屋に通される。


「彼らの部屋がちょうど4人部屋だったのでお気になさらず」


 何か裏があるのかもしれなかったが、レジーナは疲労で考えられなくなっていた。


「ありがとうございます」


 素直に善意を受け取る。

 簡素な寝台に横になると、レジーナはすぐ意識を手放した。


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