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宇宙探索者のゴミ漁り  作者: ランドリ
相棒はお高い装備の試供品
4/4

人類は多種多様

 行きの時よりも空きのある宇宙船の中、少し焦げ付いた鎧姿の存在が壁に寄りかかり片膝を立てて座っている。その存在はバイザーを上げたまま船の天井をぼーっと見つめながらつぶやいた。


「まさかあんな化け物が出るとはな」

 □ドラゴンと戦うのはロマンじゃなかった?□

「もうお腹いっぱいだ。当分は創作の中だけで良いよ」


 焦げ付いた鎧を着たアルは手のひらで顔を覆いながら、茶化すクーリアにしみじみとした声で答えた。


 彼らは漂流船内で遺伝子改造された生物の中でも、特に面倒な相手であるドラゴンと呼ばれる存在から逃げ帰ってきたのだ。


 ドラゴンとは遺伝子改造で作り出された空想上の生物の総称。


 遺伝子改造で作られたドラゴンは星系によって偏りはあるが、大体の場合でデカくて硬くて火やらなんやらを噴くしおまけに賢いので、漂流船内で出会った場合は恐ろしい相手になる。


 なんでそんな存在が漂流船の中に残っているのかといえば、恐らくはロマンだったのだろう。


 何ともはた迷惑なロマンの残骸である。


 何とか逃げ帰ってきて思い思いに過ごしている宇宙探索者達へ、宇宙船のアナウンスが鳴り響きスライド式のドアが開いた。



 =当機はコロニー05に着陸しました。他のコロニーへ行きたい方は、別の宇宙船に乗り換えをお願いします。この宇宙船は十分後に離脱しますので、忘れ物に気を付けて下さいね。


 外には似たような船が並んでおり、人を吸い込んだり吐き出したりしている。


 アナウンスを聞いてゾロゾロと外へ出ていく宇宙探索者達。アルと同じくちょっと焦げたり、不幸にも重症の仲間を背負ったりしている。


 ドラゴンにじっくり焼かれてウェルダンで食されてしまった連中よりはマシだが。


 □アル、私達も早く帰って修理しないと□

「そうだなクーリア。幸い良い物を拾ってある」


 そんな彼らを見届けたアルも手に握っていた大きな赤い鱗を光にかざすと腰のポーチにしまいこみ、宇宙船の外であるコロニー内の宇宙港へ駆け足で飛び出して行く。


 #####


 人々が行き交う宇宙港の連絡通路は巨大で、様々な星系から来た人類を見ることが出来る。


 先日の仕事で一緒になったワニ顔と同じ人類がパリッとノリの効いたスーツに窮屈そうな様子で収まっていたり。


 木が歩いているような人類がプラボードを掲げてシュプレヒコールをしながら、通路の真ん中を練り歩いていたりする。木人類曰く、二酸化酸素を吸収して酸素を排出している俺達から、空気税を徴収するのを止めろ。いやむしろ払えなどと書いてある。


 □ちょっとアル! ぶつかるわよ!□その一団に気を取られていたアルは、クーリアの警告もむなしく巨大な人類にぶつかり尻餅をついた。


「大丈夫かい? 小さな親類と小さな人よ」

「ありがとう。申し訳ない。……親類というのはクーリアの事ですか?」


 四メートルほどの巨大な人類は直立する二足歩行の岩で、心配そうな声を岩の空洞から漏らすと巨大な腕を器用に使い丁寧にアルの事を立たせてくれた。


 そんな相手の不思議な言動に首を傾けるアル。


 クーリアの姿はバイザーのモニターぐらいにしか映らないので、岩人類に見つかったことを不思議に思ったのだ。


 通路の真ん中で邪魔にならないように、小さくなりながらアルを立たせていた岩人類は答えた。小さくなっていても巨大な横幅のある岩人類は木人類のデモ隊を完全にせき止めてしまっていたが、周囲の雑多な人類も止められている木人類もあまり気にしないで、面白がって自撮りをしてみたりしている。


「そうだよ。僕らは岩を纏っているけれど、本当は意識だけの存在なんだ。だから意識の姿が見えるのさ。岩の中にいる僕らと金属の中にいるその子は親類みたいなものだろう? おっと……邪魔になってしまっているね。気を付けて行くと良い小さな人よ。君たちに小粒でも宝石の様な幸せが降り注がんことを祈る」


 再び動き出した岩人類は自撮りに対してカメラ目線で対応してみたり、アル達に対して手を振ったりと色々しながら去って行く。


 その様子をアルは立たされた場所に立ち尽くしながら見送った。


「さて……どうやって降りようかな?」

 □悪意は無いけど、ちょっとタチが悪いわね□


 アルが立たされた場所は巨大な案内板の上だったのだ!


 とりあえず腰かけて座ったアルの眼下で、たくさんの人々が物珍しそうにアルの事を見つめている。


 巨大な岩人類は近くにあった丁度いい場所にアルの事を置いて行ってしまった。


 普段ならすぐに飛び降りるところだが、足元にはさっきまでの騒ぎで人が集まってしまっている。こんな状態で飛び降りればケガ人が出てしまうだろう。


 理不尽で妙なトラブルにアルは嘆息した。


 ホイッスルを鳴らして人垣を割きながら宇宙港職員が走ってきているのが見える。


「これって……怒られるよな……?」

 □……案内板は乗る場所じゃないわ。見る場所よ□

このお話は、これでおしまいです。

今後も彼と彼女の二人組は宇宙探索者として漂流船を探索したり、依頼を受けたりして暮らしていくことでしょう。

少しでも楽しんでもらえましたら、嬉しいです。

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