第9話
最低限必要だと思っていたものは、棚にまとめていた。
今回のように、宇宙人か何かが来て、こんな大災害が起きるとは思っていなかったが、少なくとも地震や洪水といった、長期間孤立したとき用の装備は整えていた。
今回はこの用意周到さが功を奏したらしい。
「これぐらいか」
この家を拠点とすることも考えてみたが、これからの移動を考えると難しい。
どこに行くにしても、ここから遠く離れていくのは間違いがないだろう。
そうなれば、持っている車を移動式拠点とするべく小規模な改造を行うことにするだけだ。
そういうことで持っているカバンを駆使して、いくつかの物を車へと持っていく。
食糧、水の類は必須として、周辺の地図やソーラー発電で充電できるバッテリーも併せて持っていく。
車はハイブリットにしているから、どこかで電源があれば充電できるはずだ。
最悪、ガソリンで動く。
問題はそのガソリンの調達なわけなのだが、それはどこかで考えるしかなさそうだ。
バッテリーは100Vの家庭用の充電もできるように、大型のものを買っているからこれで車の充電もできる。
昔試したきりだから、今もできるかという一抹の不安はあるものの、まあなんとかなると考えるしか今はできなかった。
車に地図を積んで、次に行こうと考える場所を見る。
広域避難所というものはあるが、この様子だと行ったところでだれもいないか、暗澹たる気持ちになるのが関の山だ。
ともなれば、もっと別で、かつだれかしらがいそうな場所。
「……ここだな」
トントンと指でたたいた場所。
それは市役所だった。




