第3話
日誌を指でなぞりながら何が起こったかを把握する。
その日の朝はなにもなくて普通の日、といったものだ。
時系列順に書かれているおかげで理解がしやすくて助かった。
午前10時前、ラジオに謎の電波が入るようになった。
どの周波数でも内容は同じ、12時に臨時放送があるから必ずテレビやラジオ、携帯やスマホを用意しておいてほしいということだ。
政府広報のような体裁であったらしいが、そのものを観ていないからよくわからない。
ここの警備詰所には、テレビはないようなので、どうやらラジオで聞いていたらしい。
ほかの人たちも、警備詰所に来ては何事があったのかと聞いていたようだ。
そして12時になると放送が始まった。
内容は書かれていないが、どうやら衝撃的な内容だったらしく、12時10分ごろに放送が終わるや否や、どうすればいいかわからないといったことがたくさん書かれていた。
13時までに本部から連絡が入り、この場を放棄し、いったん本部へ帰還するようにという命令だった。
どうやらさらに上位組織からの連絡があったらしい。
そして14時に最後の文章が書かれていた。
「我々は知らなかった。我々の存在意義を、我々がなぜ生まれ、なぜ育てられていたかを。我々の歴史はここで終わる。これを見た者は我々がいたことを覚えていてほしい、そして彼らが現れ、彼らに従わざるを得なかったこの運命を呪う」
彼ら、とは誰か。
我々の意味とは何か。
それがどうやら分かったようだ。
だがその答えは、ここには書かれなかった。
それだけだ。