第17話
「実験場、というのは」
思わず俺は聞き返した。
「実験場は、実験をするための場所、という意味だ」
そんなことわかりきっている。
俺が知りたいのはそんな字句の定義じゃない。
「今空に浮かんでいるのはなんだ」
地球のところをトントンと、ホワイトボード用の黒マーカーの尻でたたく。
「月か」
「正解、その月はもともと地球の周囲に浮かんではいなかった。そう言ったら驚くかい」
今をもっても驚くことの連続ばかりだ。
「……昔なら、驚いたことだろうけども、今となっては違うでしょうね」
「月はもともと宇宙船だった。とはいっても地球にきたのはずいぶんと昔の頃の話だ、竹取物語はその時に訪れた使節の話を伝えているし、それ以前から地球を見るようにして存在をしていた」
結局いたのかいなかったのかをはっきりとしてほしい。
だが、俺はそれを黙って聞く。
「まず火星。今は全くの不毛の地であるがこちらを最初に宇宙人は植民地を置いた。ここでは数多くの人を育てさせ、飼育していた。火星にあった資源を宇宙人は欲していたからだ。金はどこまでも必要なものだからな。そのために火星人には様々な技術を与えた。今の地球では使われないようなとてつもない再洗体、超未来の技術だ。だが、それが裏目に出た」
トントンと同じように黒マーカーの尻で火星のところをたたいて話を続ける。
「火星人は賢くなりすぎた。だから反乱を起こした。各地にある宇宙人らの基地を破壊し、攻撃し、徹底的に追い出そうとした。それが全火星に広がったころ、宇宙人はそれらを一掃した。今、火星には核戦争の痕跡があるっていう都市伝説のような話を聞いたことがあるだろう、あれは事実だ。正確には核戦争よりもさらに深刻な、地表のほぼすべての生命を根絶させるようなとてつもない爆弾だ。それによって、火星の文明は崩壊し、生命は完全に消失してしまった」
黒マーカーを使って火星のところの丸に大きくバツマークを付けた。