第15話
「君はどんなDNAをしている?」
唐突に彼に聞かれる。
「え、DNAですか……」
言われても困るというのが俺の答えだ。
「そう、DNAだ。和名だとデオキシリボ核酸、二重らせんになっている人類の基本コードだ。シトシン、グアニン、アデニン、チミンの4つ、これらが組み合わさって巨大な人間というマクロ的な存在を動かしている」
高校の生物で聞いた記憶がある。
それぐらいの知識しかないわけだが、彼が何が言いたいのだろうか。
困惑を隠せずにいると、彼はフロアのとある場所へと案内しながらも引き続き話す。
「我々は古くから、たった4つのコードで成り立っているといえるだろう。かなりシステマティックなものだ。我々は機械のように正確にそのコードによって操作されているといえる」
「あの……」
俺は何か口を挟もうとするが、彼はそれを許さない。
悦に浸っているように、ただただ話し続ける。
「そう、我々は作られた機械だったんだよ。人類は機械として宇宙人に作られたんだ。この宇宙人こそ、今襲い掛かってきているあの宇宙人ということだ。我々はDNAに印がつけられていなかったからこそ、宇宙人は機械として認識できなかったのだ。あの海外のチャンネルは正しかったのだ」
廊下を歩いていると、あちこちに何かしらの跡がついている。
それが焦げているものもあれば、明らかな刃物の痕、それに血痕もついている。
ただ不思議とその殺されたりけがをしたであろう人たちのあとがない。
「我々はあらかじめ機械として設計され、機械としてこの地球に居住させられていたんだ。そして彼らは我々が知らない間に我々のことをじっと見ていて収穫するタイミングを狙っていたんだ」
何が何だかわからないが、この人はおかしいことになっている。
それもこれもあの宇宙人が悪いのは間違いないだろう。




