goodbyemorning
シャッ、
わざと音を立たせてカーテンを引く。
差し込む太陽、見渡せる表の太い道路、行き交う人々、空を行く鳥たち。
そこにあるのは、とても明るい世界。
深く息を吸って、大きく深呼吸して。
じっと眺めたその風景は、何度も何度も泣きながら眺めたもののはずなのにまるで初めて見るような感覚だった。
「おはよう」
誰に対してでもなく、パジャマの袖に向かってそっと声をかける。
今日は私がこの家を去る日。
5年も住んだ小さな1Kは、楽しい住処ではなくて引きこもるための穴ぐらで。
そんな私が、今日、ここを去る。
明るい世界を生きるために。
「……なんて。世界はなんにも変わらないのにね」
そう呟いて、一人で笑った。
変わったのは、私。変われたのは、私。
こんなにも違って見える世界に、これからは堂々と胸を張って生きていくのだ。
顔を上げて、生きていくのだ。
だけどそれは、あなたのおかげだよ、
ふと湧き上がってきたその言葉と同時に、5年分の想いが心を埋めつくしていく。
白、ピンク、赤、青、緑……そしてたくさんのグレー。
「悔しいくらい、あなたのおかげ」
今度は声に出さないままそう呟く。
笑っているはずなのに流れた涙が誇らしくて、拭うこともせずにただ、引くことのないたくさんの色を噛み締めた。