表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

Ep.6/6 いわゆるジビエ肉の話・鳥肉編

 

 さぁ、獣肉についての個人的所感を語ったところで、続けて鳥肉を数種類紹介したいと思う。鳥肉は全体的に筋肉質で、濃い赤みを帯びている事が多い。鶏肉のように綺麗な桃色をした肉は、わりと珍しい部類だろう。


 有名どころの肉はやはり、カモ類だと思う。カモ猟が有名な地域なら、市販ルートでの入手も難しくないはずだ。

 これは私信だが、鳥類の肉や脂は獣よりも食物の風味が反映されやすい気がしている。淡水のカモは魚を食べないので風味がよいが、魚を食べるウミガモ類は肉も脂も、そもそも体臭もちょっと臭い。よって、本書では食用として出回る種を『カモ類』、食用として流通しない体臭のきつい種を『ウミガモ類』と呼称し区別したいと思う。


 まず、食用として流通するカモ類だが、合鴨と大きな風味の違いは感じない。やや臭みがある場合もあるが、マズくて食べられない、という状況には現状出くわした事がない。まあ、検体ではなく、食肉用に捕獲したものを食した経験しかないのもあると思うが。

 ただ、貰い物の肉を食べる時には、特別な注意が必要だ。それは即ち──銃弾を噛んでしまう事。


 網で捕獲されたカモであればそういった心配はないのだが、銃で捕獲したカモの場合、銃で捕獲した場合に肉に入り込む、散弾の破片を思いっきり噛んでダメージを受ける恐れがあるのだ。筆者はこれをやらかしてしまい、しばらく奥歯がしびれて悶絶するはめになったので、肉をいただくと喜びつつもビビる日々を続けることになる。


 カモ類の調理法のおすすめは、焼き肉もしくは炊き込み飯だ。マ〇シマム、わさびしょうゆ、ゆず等が相性のいい調味料だろう。

 鍋ももちろん美味なのだが、人によっては臭みが増すからと焼き料理を好む一派も存在している。カモ類は脂が多く、かつ脂部分が美味な風味を食材に与えてくれる。炊き込み飯の触感が妙に良くなったり、汁物に浮かぶ脂が厚かったりするのがカモ料理の特徴だ。


 ちなみに食べやすい部位は胸やももだ。頭や首も鍋に入れることがあるが、まあそれ自体がおいしいと思った事は少ないかもしれない。とにかく、外れがなく安定した肉質なのがカモ類の特徴だ。


 次に紹介するのは──カラス類にしようと思う。正直、カラスが美味しい食材ならば、世の中のカラスはもう少し数を減らしている事だろう。

 いただいた事があるのはジャーキーだったが、赤身の筋肉質な肉感、香辛料の香ばしさは好ましいと言えるが、後味に残るなんとも言えない複雑な雑味が妙に印象に残り、なかなか積極的に食べにくい代物ではあった。カラスは雑食で、地域によっては生ゴミなども食べているので、味の複雑化も納得するところではある。


 聞くところによるとミートパイのように、刻んで香辛料を使う調理法ほど評判が良いらしい。一度食べても損はないが、まぁ、カラス自体もそれなりに愛嬌のある身近な鳥なので、積極的に食べるかと言われると難しいところかもしれない。


 他に食べた事があるメジャーな鳥というと、キジ、ヤマドリあたりだろうか。残念なことに、筆者はこれらの肉の印象を覚えていない。「羽多くてむしるの大変だろうなぁー」という、下処理の印象しか覚えていない有り様だ。

 というわけで、食材としてはオススメできないが強大インパクトを有する『ウミガモ類』『カワウ』の紹介に移ろうと思う。


 ウミガモ類、カワウ。これらに共通する特徴は『魚を食べる事』なのだが、こいつらの肉は食用に向かないのではと感じている。というのも、まずこいつらは近付くだけで臭い。磯に溜まった潮水と、野ざらしで朽ちかけた魚のような据えた臭いが発生するのだ。


 ウミガモ類──種までは判別できなかったが、それを食べた時には、料理上手な友人が生姜をしっかり効かせた煮込みに仕立ててくれた為、まずいとまでは思わなかった。ただ、下拵えに相当手を入れたはずなのに、それでも鼻腔に磯臭さが入り込む風味は残っていた。


 それでも、だ。ウミガモはまだいい。調理法と個体差はあろうが、筆者が食した肉の中ではまだマシな部類だった。やばかったのはカワウである。まず巣や死体に近寄った時点で鼻に皺が寄る臭いの持ち主なのだが、これの肉がまぁ臭い。


 知り合いがカワウ肉をカレーに入れてウンコ味の阿鼻叫喚地獄を生成したとの事前情報を得ていたため、筆者は前処理をめちゃくちゃ強化してこの肉に挑んだ。

 血抜きの為に酒と水に浸し、紅茶で煮込み、カレー粉や香辛料、コンソメを用いて煮たほろほろの肉の破片を口にしてみたワケだが、それでも突き抜ける磯の腐臭。

 検体の肉だったのもあり、痛んだ肉特有の違和感も一瞬だけ脳裏をよぎる。これは二重の意味でまずいと即座に吐き出したものの、一時間後には腹を壊すハメになった。

 後で聞いたところによると、筆者が食したもも肉は最も臭いがキツく出る部位だったらしい。羽根が触れたので残した胸肉の方が、まだ食べられる臭いなのだとか。ちくしょうがよ。


 まぁそんなワケで、日々いろんな鳥獣の肉に手を出し、時に腹も壊す筆者だが、食器類の汚染、感染症には最大の注意を払っている。

 家畜のように衛生的な環境で育てられた生物ではないので、自身で調理する際は解体の基礎を学び、最大限の注意と加熱を心掛けた調理を行ってほしい。そして生肉を出す店は、絶対に信用しないでほしい。国のジビエ肉取り扱いガイドラインを読んでいない証拠だ。


 そしてこれは私信だが、ジビエ肉というのは、地場ものとして細々と消費されるべきものであって、大々的な商業ベースに乗せるなら『畜産』としての正式な許可を得るべきものだと考えている。

 なぜなら、商業ベースに乗せる為には『安定した大量の肉が必要』であり、鳥獣の被害を抑える為には『肉として良質な時期ではなく、被害が出る時期に個体数を減らして管理する』事が必要なのだ。携わる人間は、本来の趣旨がどちらなのかを見極めた扱いが必要だろう。


 さて、今回はあくまで肉の味のみに着目してみたが、野生の獣を還す為の弔い方、解体の仕方、残さの処理方法、さまざまな技術がジビエ肉にはついて回っている。

 興味のある方は、レストランや狩猟ツアー等を調べてみると楽しめるだろう。皆様には安全な範囲で、己の好奇心を満たしていって欲しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ